今回のテーマは、ニュースでも取り上げられやすいワード「当期純利益」です✨
決算発表の時期になると、新聞の企業関連のページにはズラッとこの言葉が並びます(見出しにこの言葉が入るときは、「純利益」と短縮されることが多いですね)。
そんな「当期純利益」について、基本の内容から決算書での読み方まで解説していきます😊
目次
当期純利益とは?基本の意味をおさえよう
ニュースで当期純利益の話題が取り上げられるときは、「今期最高益 最終」や「赤字 今期最終」といった見出しを付けられることが多いですね。
この文言が意味する通り、当期純利益とは…
事業活動を通して最終的に残った利益のこと
を表します💫
言いかえると、企業が1年間に得たすべての収益からすべての費用を除いたものが当期純利益なのです。
ちなみに、赤字となった場合の最終損益は「当期純損失」、四半期決算における最終損益は「四半期純利益(四半期純損失)」と呼びます😊
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当期純利益の「求め方」をサクッと理解しよう
損益計算書は、一番上の行に記載される売上高に対し、その下の行以降に書いてある収益や費用を順々に足し引きして利益を計算する構成です✍
その足し引きの過程で、企業の活動段階ごとに5つの利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益)を計算して表示しているんですね。
このように上から順々に収益と費用を足し引きしていくため、損益計算書の一番下の行にたどり着くときには1年間のすべての収益から税金も含めたすべての費用が差し引かれていることになります✨
この一番下の行に表示されているのが当期純利益なのです😊
当期純利益
= すべての収益(売上高+営業外収益+特別利益)
- すべての費用(売上原価+販売費及び一般管理費+営業外費用+特別損失+法人税等)
「親会社株主に帰属する当期純利益」とは何を意味するの?
実は、損益計算書では当期純利益を2つのグループに分けて表示しています💡
その2つとは、「被支配株主に帰属する当期純利益」と「親会社株主に帰属する当期純利益」です✨
子会社を持つ企業の場合、損益計算書には親会社の損益に子会社の損益を足し合わせた数字が表されます。
しかし、もしこの子会社が他の企業や個人投資家にも株式を保有されていたら(つまり100%子会社ではなかったら)、子会社の当期純利益すべてが親会社に帰属するわけではないのです!
つまり、子会社の株式が親会社以外の株主にも保有されている場合、
親会社と親会社以外の株主それぞれが子会社株式を保有する割合に応じて、子会社の損益を「親会社株主に帰属する当期純利益」と「被支配株主に帰属する当期純利益」に振り分けるのです✂✨
今のお話を、簡単な例で理解してみましょう😊
親会社A社が子会社B社の株式を70%保有しているケース
子会社B社が稼いだ利益1000万円のうち…
① 親会社A社に帰属する分 →700万円(=1000万円×70%)
② 親会社A社以外の株主に帰属する分 →300万円(=1000万円×30%)
です✍
この時、
「親会社株主に帰属する当期純利益」=①700万円+親会社A社の損益
「被支配株主に帰属する当期純利益」=②300万円
となります🌟
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当期純利益が利益剰余金を増やす!そのワケとは?
実は、当期純利益は、貸借対照表(BS)の数字にも影響します!
貸借対照表には純資産というグループがありますが、この純資産の内訳の1つ「利益剰余金」は主に当期純利益から構成されているのです。
「利益剰余金」には、企業が今まで稼いだ利益が蓄積されています。
言いかえると、毎期の「親会社株主に帰属する当期純利益」が「利益剰余金」に足し込まれているのです✨
そのため、当期純損失(マイナスの当期純利益)が出てしまうと「利益剰余金」は減ってしまいます😥
💫当期純損失と債務超過の関係💫
業績が悪化し当期純損失が続くと、それが足し込まれた「利益剰余金」はやがてマイナスの金額になる。
↓ ↓ この状況を改善できないでいると…
さらに「利益剰余金」のマイナス幅が広がり、今度は「純資産の部」全体がマイナスの金額になってしまう。
↓ ↓
この状態が債務超過です!
東芝やシャープも、このようにして債務超過に陥ってしまいましたね💦
また、「利益剰余金」は自己資本の構成要素の1つです。
そのため、毎期の当期純利益の金額が自己資本を使った指標(自己資本比率やROEなど)の数値を左右することになりますね。
【事例】当期純利益を見る際の注意点!必ずしも真の実力を表さない理由とは?
新聞などのメディアでは、企業の業績を表す指標として当期純利益を取り上げることも多いですね。
しかし、当期純利益は必ずしも企業の実力値を表すわけではありません💡
当期純利益は、企業の営業活動による利益のほか、使わなくなった土地の売却益や災害で被った損失のような一時的な損益(特別利益と特別損失)からも構成されます。
このような一時的な損益は毎年発生するものではなく、企業本来の実力を表すとは言えませんね。
事業が不調でも当期純利益が増えた例~日清紡~
2017年度第1四半期(4月~6月)の日清紡の業績は、主力のエレクトロニクス事業の不調などにより営業損失(マイナスの営業利益)が拡大してしまいました😥
しかし、「親会社株主に帰属する四半期純利益」を見ると、前年の同じ時期の9.5倍に増えています!
日清紡は事業の絞り込みをかける中で、2017年度に紙事業を切り離すことにしました。
2017年度第1四半期は、紙製品事業を営む子会社の株式が売却されたために、それによる売却益(特別利益)が大きく出たのです。
このように一時的な利益が大きかったために、営業活動自体が芳しくなくても最終増益という結果になったのですね😲
注意したいのは、この子会社株式の売却益は2017年度特有のものであり、翌年以降は発生しないということです。
つまり、もし営業活動自体が上向かなければ、翌年の2018年度の当期純利益は2017年度との比較で大きく減少する可能性もあるのです💦
事業が好調でも当期純利益が減った例~SUBARU~
日清紡とは正反対の事例を示しているのがスバルです。
2017年度上半期(4月~9月)のスバルは、自動車の販売台数が増加したこと等により営業利益が増えました。
ところが、タカタ製のエアバッグ関連の損失(特別損失)が多額に出たことにより一転、「親会社株主に帰属する四半期純利益」は前年同時期の半分程度になってしまったのです😭
このケースで四半期純利益の動向だけを見てしまうと、2017年度上半期に全世界ベースで過去最高の販売台数を達成したことなどは見落としてしまいますね。
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まとめ
当期純利益は、あくまでその年に最終的に残った利益です。一時的な要因で大きく増減するため、「当期純利益が前年から増えたか?減ったか?」だけで企業が好調かどうかを判断することができません。
特に特別利益や特別損失といった一時的な損益は、金額が巨額になるのが特徴です。営業活動の成果を簡単にひっくり返してしまうのです。
一時的な利益(特別利益)により当期純利益が大きく増えた場合、翌年はその反動で大きく減る可能性が高いことも念頭に置いておくとよいですね✨