損益計算書の5つの利益の1つ、税引前当期純利益✨
企業の利益を表す指標であるにも関わらず、営業利益や当期純利益と比べてスポットが当たりにくい存在であります。
今回は、そんな税引前当期純利益を理解するための5つのポイントをを伝えします😊
目次
1.「呼び方」がバラエティに富んでいる
税金等調整前当期純利益、税引前利益、税前利益、税前…
これらはすべて、税引前当期純利益と同じ意味を表します💫
このように、税引前当期純利益にはいくつもの呼び方があるんですね。呼称の豊富さにおいては、他の4つの利益は税引前利益に及びません。
税引前当期純利益の正式名称は「税金等調整前当期純利益」(読み方:ぜいきんとうちょうせいまえとうきじゅんりえき)であり、決算書にはこの名称で表示されます。
(IFRS(国際会計基準)を適用している企業は税引前利益と表示していますね)
噛んでしまいそうなほど長い名前であるため、省略して呼ばれることが多いのです😊ここからは「税引前利益」と呼んでいきますね。
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2.税引前利益とは?「求め方」から押さえよう
損益計算書では、一番上の行に売上高を据えています。
そこから下に行くにしたがって、順々に各費用を差し引き、または各収益を足し合わせ、5つある中継地点ごとに利益を計算しているんですね。
利益 = 収益 - 費用
税引前利益は損益計算書の中でも、だいぶ下の方に記載のある利益です。
なぜなら、
売上高にその他のすべての収益を足し合わせ、かつ、税金を除くすべての費用を差し引いた後の利益
だからです。
税引前利益 = すべての収益 - 法人税等を除くずべての費用
つまり税引前利益とは、1年間の企業活動全体(法人税や住民税といった税金に関わること以外)の結果を表した利益と言えます。
商売とは直接関係ないところで得た収益、被った損失なども含め、企業の活動の結果をまとめ上げているのです。
3.税引前利益と当期純利益の違いとは?
税引前利益まで求めたら、あとは「法人税等」を差し引けば最終利益(当期純利益)にたどり着きます。
「税引前~」と呼ばれている通り、税引前利益とは当期純利益から「法人税等」を差し引く前の金額なんですね。
実は「法人税等」は2つに分けられ、
法人税等 = 法人税、住民税及び事業税 + 法人税等調整額
と表すことができます。
「法人税、住民税及び事業税」は、企業が1年間で稼いだ利益に対してかけられた税金です。
一方、「法人税等調整額」とは、決算書を表示する上で、利益と「法人税、住民税及び事業税」の関係が歪まないように、「法人税、住民税及び事業税」の金額を調整する役割を持っています。
「法人税等調整額」については、こちら(↓)詳しく解説しています。
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4.当期純利益は減っても税引前利益は増えてる!?そのワケとは?
4-1 当期純利益の動きは税引前利益に連動しないことがある
業績が発表されるとき、ほとんどの場合は前年と比較して説明されます。新聞に載っている記事も、「売上高8%増」「営業利益15%増」といった記述が多いですが、これらも前年と比較した際の増減率を表しているんですね。
このように比較をしてみると、税引前利益は前年から増えているのに、当期純利益は前年から減っている、ということがあります。
「3.税引前利益と当期純利益の違いとは?」でお話したように、税引前利益と当期純利益の差を作っているのは税金関係の費用である「法人税等」です。
この「法人税等」が税引前利益の金額だけには基づかない独自の動きをすることがあるため、このような現象が起こるのですね。
4-2 将来の利益予想が変わると「法人税等調整額」にも影響が
「法人税等調整額」は、利益と「法人税、住民税及び事業税」の関係を整える役割を担っています。
しかし実は、その年特有の出来事によってかえって「法人税等調整額」が利益と「法人税、住民税及び事業税」の関係をゆがめてしまうことがあるのです😳
これは、「法人税等調整額」と繰延税金資産が表裏一体の関係であることが大きなゆえんです。
繰延税金資産は、将来の利益が見込めない企業では計上できない、もしくは限定した金額しか計上できません。
そのため、将来の利益の見込みが急に悪い方向に見直されたり、はたまた、赤字予想が一転黒字予想に変わったりすると、繰延税金資産の金額もそれに合わせて修正されるのです。
すると、歩調を合わせるように「法人税等調整額」も増えたり、または費用を減らす方向に動いたりするんですね。
詳しくはこちらでお話しています(↓)
このように繰延税金資産の金額が修正されると、「法人税等調整額」が利益と「法人税、住民税及び事業税」の関係を大きくゆがめてしまうことがあります!
「企業の将来予想の変更」というその年の利益とは関係のない事象によって、「法人税等調整額」が増えたり減ったりしてしまうと、「法人税等」の金額が企業の1年間の活動結果である税引前利益と連動しない金額になりかねません。
その結果、「前年より事業は好調なのに、当期純利益は減ってしまう…😨」ということが起こりえるんですね。
実はこれ、業績が変動する企業では決してめずらしくはない現象です。実際に、このような事象が起こった企業の事例を見てみましょう🌟
4-3 パナソニックの事例を見てみよう
2017年上期(4~9月)のパナソニックの業績は、売上高9%増加、税引前利益7.5%増加、そして…当期純利益である四半期純利益は11%減少という結果でした💨
「法人税等(※)」を挟んで、見事、利益の逆転現象が起きています。(※IFRSを適用するパナソニックは法人所得税費用と表記しています)
原因はやはり、繰延税金資産の金額修正です。
前期(2016年上期)において、パナソニックは子会社(パナソニックプラズマディスプレイ)を解散させました。この影響により、繰延税金資産の金額を182億円増やす方向で見直したのです。
結果、同じ金額だけの「法人税等調整額」が「法人税等」を減らす方向に生じ、前期の「法人税等」は異様に少なくなってしまいました。そのため、前期と比べると、通常通り生じたはずの当期の「法人税等」が多く見えてしまっているんですね。
これが、税引前利益と当期純利益の間で逆転現象が起きた理由です。
ニュースでは、前期と比べた際の最終利益(当期純利益、四半期純利益)の増減がピックアップされがちです。
このように当期の業績とは関係のないところで利益の増減が引き起こされていることがあるので、最終利益以外の利益の動きもよく見てみるとよいですね✨
5.税引前利益が増えても営業利益が減っている場合は要注意!
税引前利益は1年間の企業の全活動(税金以外)が生み出した利益であるため、純粋な商売活動の成果だけを知ることはできません。
そのため、商売活動がうまくいっていなくても、その年特有の利益が多く生じていれば結果として増益となることもあります。
売上が伸び悩んでいるため、キャッシュを確保するべく有価証券や土地等の資産を売却しているケース(過去には東芝やワタミがこのような行動をしていますね)。
商売活動の成果を表す営業利益は減っていても、有価証券や土地の売却益(特別利益)が生じているために税引前利益は前期から増えていることがあります。
この例で注意したいのは、その年特有の利益によって税引前利益が増えたという点です。
その年特有の利益は、応急処置の結果手にした利益であり、翌年度以降もずっと得られるものではありません。そのため、商売活動を立て直さないと、やがては事業に行き詰まってしまいます。
1年間のすべての事業活動の結果として税引前利益を見るとともに、企業の核である商売活動の状態を営業利益でおさえるようにしましょう✨
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まとめ
1.税引前利益は、税金以外の1年間のすべての活動の結果を表した利益。
2.事業活動と関係のない事象により法人税等は変動するため、最終利益だけで企業の業績を判断しない。
3.税引前利益が増えていても、営業利益で商売活動の状態をチェックすることも大切。