今回のテーマは自己資本比率です✨
「事業を安定して継続させる力」を測るために使う経営指標の1つです。意味、計算式、使い方まで基本的なことを総ざらいしていきます!
ワタミが自己資本比率を急回復させた理由についても見てみますよ😊
目次
そもそも「自己資本」ってどんなもの?
まず、自己資本の意味を確認!
企業が事業を起こし、続けていくために、なくてはならないものが資金です💰この資金のことを、資本といいます。
資金の集め方にはいくつかの方法があります。株主から出資を募る方法、銀行から借りる方法、自ら稼いでいく方法…などなど。
このうち、株主からの出資金や自ら稼いだお金のように、返済する必要のない資本のことを自己資本と呼びます😊
自己資本の求め方
貸借対照表があれば、自己資本を求めることができます✍
自己資本
= 純資産の合計 - 新株予約権 - 被支配株主持分
= 株主からの出資金 + 今までの利益の蓄積 + α(有価証券の価値増加分 など)
こちらの計算式から分かる通り、自己資本は、主に株主からの出資金とその企業自身が稼いできた利益の蓄積により構成されています✨
そのため、返済する必要がないのです。
ちなみに、純資産のうち、「資本金」「資本剰余金」が株主からの出資金、「利益剰余金」が今までの利益の蓄積を表します。
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自己資本の反対語、他人資本とは?
自己資本と反対の性質を持つものとして、他人資本があります。
これは、借入金や社債のような、他者から調達した資金のことです。そのため、後々返済しなくてはなりませんし、利息の支払いも必要です👛
貸借対照表では、負債の部の合計金額が他人資本にあたります。
自己資本と他人資本を合わせて、総資本と呼びます。企業が事業を回す上で使っているすべての資金のことですね😊
自己資本比率の意味とは?計算方法をチェック!
自己資本比率はこのように計算します✍
自己資本比率(%)
= 自己資本 ÷ 総資本 × 100
= 自己資本 ÷( 負債の合計 + 純資産の合計 )× 100
「企業が事業に使っている資金のうち、自己資本がどの位の割合を占めているのか?」を示す指標なんですね🗝
つまり、自己資本比率が高いほど、返済期限に追われることなく使える資金(=自己資本)の割合が大きいのです。
設備や企業買収などの投資にはたくさんのお金を投じる必要がありますが、元が取れるほどのリターンをすぐ手に入れられるわけではありません😓
もし、投資資金のために借金(他人資本)をしていたとしたら、投資によるリターンが思うように得られないと、期限までにその借金の返済ができなくなることもあるのです。そうすると、倒産への距離が一気に縮まってしまいます💦
返済の必要のない資金が多いことは、事業を続ける上での安定性が高いことを表すんですね。
自己資本比率に目安はあるの?
自己資本比率の目安
一般的に、安定して事業を続けるには40%の自己資本比率が必要であり、60%以上だと優良企業であると言われています。
ただ、この目安は、大型の設備投資が不可欠な業種であるかどうか等の条件によっても変わってきます!
そのため、同業種同士で比較することで、その企業のポジションを見定めるのが良いですね😊
自己資本比率はお金を借りる時にも重要
銀行が融資の可否を判定するときは、その企業の自己資本比率を参考にすることも多いです。
自己資本比率が高ければ、その企業に資金力がある、つまりは貸したお金が返済される可能性が高いと判断できるからです💴
また、お金を貸した後に、自己資本比率が一定の水準を下回ると強制的に返済しなくてはならないという条件を付けることもあります(このような条件を財務制限条項といいます)。
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自己資本比率が高くなる時・低くなる時とは?
自己資本比率が高める方法とは?
自己資本比率の計算式を見てみると、自己資本比率を高めるには、
1.自己資本を増やす
2.他人資本を減らす
という2つの方法があることが分かります✨
1.自己資本を増やす方法はこちらです。
🔹株主から出資を募る(増資)
🔹利益をあげる(最終損益を黒字にする)
毎年黒字の企業は自然と自己資本も増えていきます。
また、2.他人資本を減らす方法は
🔹借入金を返済する
🔹社債を償還する
というものが代表的ですね。
業績が良くなってくると、利益が増え、借金も返せるようになるので、自己資本比率もどんどん上昇していきます😊
自己資本比率が低くなるのは、上記と逆のケースが起きた時と言えます。
たとえば、赤字が続くと自己資本がどんどん減り、自己資本比率も低くなってしまいます😢
また、大型の投資(M&Aや物流センター建設など)をするために巨額の借金をすると、他人資本が一気に増え、自己資本比率を押し下げる原因となります。
自己資本比率の低下は「悪いこと」とは限らない!?
その企業が利益の飛躍を狙って大きい投資を行う時、一時的に自己資本比率が下がることがあります。
これは、その企業の稼ぎだけでは間に合わないほどの投資資金が必要となり、銀行などから借り入れを行うことで負債が増えるためです。
もし投資が失敗すれば、借金の返済に追われ、業績が傾く恐れがあります。
しかし、投資額が巨額な分、成功した際のリターンも大きく見込め、その後の利益が格段に増える可能性もあるのです🚀
自己資本比率が下がった理由をしっかりとつかみ、それが将来の成長につながるかどうかを見極めることも大事です💡
マイナスの自己資本比率が意味すること
自己資本比率がマイナスの数値に落ち込む場合もあります😲
これは、自己資本自体がマイナスの金額になっている時、つまり債務超過に陥っている時に起こる現象です。
債務超過の多くは、赤字(マイナスの利益)が続いた結果引き起こされます。そのため、マイナスの自己資本比率は、経営に赤信号が灯っている状態を表します💦
自己資本比率がマイナスに沈んだ東芝
たとえば、巨額の赤字が続いた東芝は、2017年3月期に債務超過となったために自己資本比率が-13%まで下落してしまいました。
そこで増資を行い、さらには収益源であった事業を切り売りして売却益を稼ぐ作戦を立てました✍「株主からの出資金」と「今までの利益の蓄積」の両方を押し上げることで、何とか自己資本を回復させようとしたんですね。
【事例】ワタミが自己資本比率を急回復させた方法とは?
ここで、近年自己資本比率が大きく変動した例を見てみましょう。その企業はワタミです。
2017年3月期以前5年間の自己資本比率の推移を見てみると…
2013年3月期 … 25.4%
↓ ↓
2015年3月期 … 7.3%
↓ ↓
2017年3月期 … 40.3%
と、急降下した後、息つく暇なく急上昇しています。
このように、ワタミの自己資本比率がジェットコースターのような動きを見せた理由について迫ってみましょう😊
客足が遠のいた「和民」
自己資本比率が大きく落ち込んだ2015年3月期は、客数が伸び悩み、既存店の売上高が前年割れしてしまっている状況でした。
採算の取れないお店について大々的に閉店を進めていきましたが、それでも2期連続で赤字を記録してしまったのです😨
ワタミ自身で稼ぎ出すキャッシュだけでは事業に必要な資金をまかないきれず、1年間で短期借入金が3倍近くにまで膨れ上がりました。借入れによる利息の支払いも膨れ上がり、これが利益を圧迫している状態だったのです。
こうして、赤字による自己資本の減少(=今までの利益の蓄積の減少)、借入れによる他人資本の増加によって、自己資本比率は一気に低下してしまいました💦
介護事業売却で急浮上を狙う
自己資本比率を一気に浮上させるために、ワタミが出した切り札が介護事業でした。
ワタミが自己資本を増やした方法とは?
自己資本比率が7.3%にまで落ち込んだ翌年度、まずワタミは介護事業を損保ジャパンに売却しました。これにより、この年の最終損益は一気に黒字転換したのです。
本業からはいまだ赤字が出ている状態でしたが、特別利益として介護事業の売却益がどどーんと計上された結果、大幅な黒字に引き上げることができたのです🚀
これにより、自己資本が2倍近くにまで増えました。
次のミッションは他人資本を減らすこと
そして、介護事業の売却で得た資金を使って、膨らんでいた借金を返済しました。さらには、介護事業で必要だったリースにまつわる債務、介護施設入居者からの預り金といった負債もグッと減りました。
これにより、他人資本である負債の金額は4分の1にまで減ったのです。
このとっておきの秘策により、ワタミは、たった1年間で自己資本比率を7.3%から36.9%にまで引っ張り上げたのです💫
ワタミの今後はどうなる?
とはいっても、本業が赤字のままでは、再び自己資本は減っていき自己資本比率も落ち込んでしまいます。
ワタミは、主力の居酒屋の業態転換を進め、黒字化へ取り組んでいるところです。最近よく見かけるようになった「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」は、「和民」や「わたみん家」から転換したお店ですね。
その効果により、2017年3月期は営業利益(=本業から稼ぎ出した利益)が2年ぶりに黒字になりました。
ですが、まだまだ改革は道半ば。本業の力によって自己資本比率を高い水準に保てるようになるまでは、気が抜けない状況が続きます。
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まとめ
1.自己資本比率とは、企業が事業を回す上で使っているすべての資金のうち、返済する必要のない資金の割合を表す。
2.自己資本比率が高いほど、返済期限に追われることなく使える資金の比率が大きく、事業を続ける上で安定性があると言える。
3.株主から出資を募る、利益を上げる(自己資本が増える)、借金を返済する(他人資本が減る)ことによって、自己資本比率は高まる。