数々の引当金の中でも、とりわけ多くの企業が計上しているのが貸倒引当金です✨
今回は、貸倒引当金の基本知識について、わかりやすく解説していきます!また、アシックスの実例で理解を深めていきましょう😊
貸倒引当金の意味を押さえよう!なぜ必要?計算方法は?
「将来の貸し倒れ」に備えるための引当金
貸倒引当金は引当金の1つです✨
つまり、引当金の要件である「将来損失(費用)が出ることが分かっており、かつ、すでにその原因が生じている」を満たすために計上されるのです。
引当金全般については、こちらで詳しく解説しています(↓)
先ほど出てきた引当金の要件、
「将来損失(費用)が出ることが分かっており、かつ、すでにその原因が生じている」
これを貸倒引当金に当てはめると…
🔸 将来の損失とは
→ 「売掛金が入金されない」「貸付金が返済されない」など、将来において債権が入金されないこと。つまり、貸し倒れ。
🔸 その原因(すでに生じている)とは
→ 取引先や貸付先の経営状態悪化などの理由から、現時点で貸し倒れの可能性が高いこと。
と、言えます!
たとえば、貸付先の経営状態が悪化すると、「期限までに貸付金を返済してくれるのか?」という心配が出てきますよね😓
返済や入金の期限が過ぎ、再三催促したにも関わらず返済してくれない場合も同じです。
このような状況下で、一部でも債権が入金されない可能性が高いと判断した時は、返済されないであろうと判断した金額を貸倒引当金として計上します。
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貸倒引当金の計算方法とは?
相手先が倒産するなどして、明らかに債権の全額が入金されないと判断されれば、その全額を貸倒引当金に含めます😨
そこまでに至らずとも、貸し倒れの可能性が高い債権があれば、
● 相手先の経営状態・資金繰り状態などの程度によって、債権額のうち将来貸倒れるであろう金額を計算する
● 対象となる債権について将来生ずるキャッシュフローを見積もり、そこから入金(返済)されないであろう金額を計算する
などの方法を用いて貸倒引当金を求めます✍
また、上記のような返済・入金が危ぶまれている債権でなくても、貸倒引当金は設定されます😲
この場合は、問題の生じていない一般債権の合計額に対して、過去に貸し倒れた実積の割合(貸倒実績率)をかけ、これを今後貸し倒れが予想される金額として貸倒引当金に計上します。
「貸倒引当金繰入額」もセットで発生する
他の引当金と同じように、貸倒引当金も計上されると同時に費用が発生します。
この費用が「貸倒引当金繰入額」です😊
将来入金されないであろう債権額のうち、すでに原因が生じているものを費用として表すんですね。
損益計算書では、対象とする債権の内容などによって、販売費及び一般管理費に含められたり、営業外費用や特別損失に表示されたりします。
貸倒引当金戻入益とは何?
貸倒引当金を計上した翌年度以降に、相手先の経営状態が改善したり、貸倒引当金を設定していた債権が入金されることがあります😊✨
このような場合は、貸倒れの可能性が低くなった、もしくは無くなったと判断され、計上していた貸倒引当金が減らされます!
この貸倒引当金を減らすタイミングで、損益計算書に「貸倒引当金戻入益」が収益として上されます。
貸倒引当金を計上すると同時に「貸倒引当金繰入額」が費用に計上されるケースとは反対ですね😊
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負債なのに、資産の部でマイナス表示される理由とは?
貸借対照表の資産の部に表示される
貸倒引当金の特徴、それは貸借対照表の資産の部に表示されることです!
引当金は負債の1つであるため、通常は負債の部に表示されます。この点で、貸倒引当金は他の引当金と一線を画していますね😲
とはいっても、貸倒引当金が資産の役割をするというわけではありません。
資産の部にマイナス表示されることで負債の性質を保っているのです。
この理由は、次のパートでお話しますね😊
貸倒引当金がマイナス表示される理由
多くの引当金は、「将来お金が出て行くこと」を示すために計上されます。
たとえば、賞与引当金は「従業員に対して、将来賞与を支給すること」を表しています。
しかし、貸倒引当金が表しているのは、「将来お金が出ていくこと」ではありません!
「本来であればその企業のお金であるはずなのに、入金(返済)されない」こと、簡単に言うと「将来入ってくるはずのお金が、入ってこない」ことを表しているのです。
「本来であればその企業のお金であるはず」の金額とは、資産の部に載っている売掛金や貸付金といった債権のことですね💰
売掛金は、すでに販売が完了し代金を入金してもらう権利のことです。貸付金は、元々その企業が所有しているお金を貸し付けたものであり、返済してもらう権利があります。
このような債権から貸倒引当金(=将来、貸し倒れると考えられる金額)を差し引くことで、売掛金や貸付金を「実際に入金されるであろう金額」に修正しているのです😊
これが、貸倒引当金が資産の部でマイナス表示されている理由です✨
【事例】アシックス、貸倒引当金が増えたワケ
スポーツ用品を販売するアシックスでは、2016年度1~6月期(第2四半期)において貸倒引当金が13億円増えています👟
その理由は、取引先であるアメリカのスポーツ用品販売会社が経営破たんしたことです。
アシックスはこのスポーツ用品販売会社に製品を販売しているため、それに伴う売掛金(まだ入金されていない販売代金)を持っていたと思われます。
しかし、そのスポーツ用品販売会社が経営破たんしたことにより、売掛金が入金されない可能性がグッと高まりました💦
この「将来、売掛金が入金されない」可能性が高いことを表すために、貸倒引当金が計上されたのです。
アシックスは、貸倒引当金13億円を資産の部にマイナス表示することで、そのスポーツ用品販売会社に対する売掛金の価値を13億円分減らしているんですね。
貸倒引当金が計上されると、同じ金額だけ費用(貸倒引当金繰入額)も発生します。
これが、この期間のアシックスの営業利益を押し下げる一つの要因となりました😨
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まとめ
1.貸倒引当金は、将来の貸倒れ(=入ってくるはずのお金が入金されない)に備え、その原因(取引先の経営破たん等)が生じたときに計上する。
2.貸倒引当金は、資産の部にマイナス表示することで、対象となる債権の価値(=将来入金される金額)を減額している。
3.貸倒引当金が計上されると、同時に同じ金額だけ費用(貸倒引当金繰入額)が発生する。