営業利益率は、売上高から利益を稼ぎ出すパワーを測るアイテムです🗝
営業利益率が上がる理由は実に様々。
営業利益率が上がる理由を知っておけば、営業利益率への理解も一層深まり、企業の業績もつかみやすくなります。
今回は、営業利益率を上げる4つの方法(上がる理由)について、実例を見ながらご紹介していきますね✨
「営業利益率とは何か?」については、こちらをご覧ください(↓)
営業利益率が上がる理由【基礎編】
営業利益率の求め方をおさらいしてみましょう😊
営業利益率
= 営業利益 ÷ 売上高
=(売上高-商売活動にかかるコスト)÷ 売上高
営業利益率とは、売上高のうち、そこからコストを取り除いた残額の割合を表しています。
つまり、営業利益率を上げるには、売上高を変えずともコストを小さくしたり、もしくはコストはそのままに売上高を高める等の方法を取ればよいわけです。
では、実際に企業で実践されている方法をご紹介していきますね。
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理由1 単価アップ
コストを増やさず売上高だけを高めるために取れる最もシンプルな方法は、商品の価格を上げることです。
売れる商品数が減らなければ、商品の価格を上げた分だけ営業利益に反映されます。
この方法を取る場合は、値上げによって売れ行きが悪化しすぎないようにすることに注意が必要です🗝販売量が一定ラインを超えて減ってしまうと、値上げの効果をすべて打ち消してしまうからです。
そのため、値上げをする際には工夫が必要なんですね。
値上げに成功したリンガーハット
値上げによって営業利益率を高めることに成功したのがリンガーハットです。
度々価格改定を行い、失敗も経験しているリンガーハットですが、2009年度の値上げは現在の成長の礎を築いたと言ってもいいでしょう。
2009年度の値上げによって、営業利益率はこのように変化しています。
2008年度 … 0.5%
↓
2009年度 … 3.0%
コスト削減の取り組みが進んだこともあり、大幅な赤字だった2008年度から、1年で黒字に転換することに成功しました。
リンガーハットは、値上げと同時に、使用するすべての野菜を国産のものに切り替えました。さらに、野菜を大幅に増量した高価格帯のメニューも加え、「健康」「安心」のイメージを打ち出したのです。
このような工夫が功を奏しお客さんが値上げに見合う商品価値の存在に納得したことで、値上げ後の客離れを防ぐことに成功しました。この結果、単価アップが効果的に営業利益率の上昇に結び付いたのです。
反対に、商品価格が下がったために利益率が低下した例もあります。
ABCマートは、セール期間中の値引きが引き起こす利益率の低さに悩んだ時期がありました。
→1からはじめる在庫回転期間!経営状態の変化を見抜くコツとは?(※「ABCマートの戦略を在庫回転期間を使って追ってみよう」の項目に実例を紹介しています)
値上げは諸刃の剣
2009年度のリンガーハットのように、値上げがお客さんに受け入れられればよいですが、そうでないケースも多々あります。
たとえば、現在業績急回復中のマクドナルドも、値上げの苦汁をなめたことがありました。
マクドナルドは長い時間をかけて幾度も値下げを行っていたために、すっかり「マクドナルド=安い」というイメージが定着してしまいました。その中で実施した、ハンバーガー80円への値上げが客離れを招いたのです。
また、ユニクロも2014年~2015年にわたって値上げを実施した結果、客足が遠のいてしまいました。さらに、売れ残り処分のために実施したセールがかえって利益率の悪化をもたらしたのです。その後、再び低価格戦略に転換しましたね。
→ 🔹ご参考🔹 国内ユニクロの”今”~はたして客足と売上は戻ったのでしょうか?
両社とも、円安などによるコスト高に苦しんだ結果、値上げを選択しています。
お客さんが値上げに見合う価値を感じられなければ、かえって業績が傾くこともありえるのです。
理由2 コストが減った
売上高を変えずとも、コストを減らすことで営業利益を増やすことができますね。結果として、営業利益率も高まります。
単価アップの方法で成果を得るには、お客さんに値上げを受け入れてもらわなくはなりませんでした。こちらの方法では、商品の内容に変更がない限り直接お客さんの購買判断に影響することはありません。
営業利益率を高めるためには、たとえば以下のようなコストカットの方法があります。
・賞与カット、リストラなど(人件費)
・使用する材料を変える、材料の調達先を変える(材料費)
・複数の工場や本社を1つにまとめる(賃借料や減価償却費等)
・より安く借りられる又は買える場所で出店する、本社を構える(賃借料や減価償却費)
・管理系の事務作業を外注する(人件費)
コストカットを徹底したリンガーハット
先ほどに続き、ここでもリンガーハットを例に見てみます😊
リンガーハットは、何年にもわたり徹底してコストカットを追求している企業です。
それがよく表れているのが、「商品やサービスの販売活動や、会社全体の管理活動に必要なコスト」を表す販管費及び一般管理費の金額です。
リンガーハットの売上高に対する販管費及び一般管理費の割合(売上高販管費比率)が、どのように変化してきたかを見てみましょう。
2009年度 … 69.3%
↓
2012年度 … 66.9%
↓
2016年度 → 62.7%
コストダウンには既に取り組んでいたものの、値上げに成功した2009年度時点の売上高販管費比率はまだ70%程度でした。そこから着実に引き下げていき、2016年度には60%のラインも見えてきました。
その結果、営業利益率はこのように改善していきました。
2009年度 … 3.0%
↓
2012年度 … 4.0%
↓
2016年度 … 7.7%
同じ金額の売上高を生み出すにしても、そこにかかるコストを引き下げることで、より効率的に売上高から営業利益をしぼり出せるようになったのです。
リンガーハットは、あらゆる方面からコストの無駄を洗い出し効率化を図っています。
・作業が効率的になるように工夫をし一店舗あたりの人員を減らす
・複数あった本社をや工場を集約する
・製造機械の内製化
・投資コストの低いフードコートへ出店
などなど…
2つ目の取り組みは、本社ビルの賃借料や工場の減価償却費を減らせるばかりでなく、作業の効率化にもつながります。
売上高販管費比率が大きく下がった現在においても、コストダウンへの取り組みに対し手を緩めることはありません。
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理由3 商品ミックスが変わった
商品ミックス、つまりは売上高に占める商品の構成割合が変わったということです。
たとえば、利益率が10%のA商品と30%のB商品を扱っている企業であれば、
🔹売上高に占める割合が2つの商品で半々であれば、全体の利益率は15%
🔹売上高のうちA商品が3割、B商品が7割を占めていれば、全体の利益率は24%
となります。より利益率の高いB商品の販売割合が高いほど、企業全体としての利益率も上がるんですね。
PB商品を充実させたセブンイレブン
いまやあらゆる小売店でPB商品を見かけるようになりましたが、その中でもセブンイレブンは先駆者的な存在でした。
PB(プライベートブランド)商品は、小売店自らが企画し独自のブランドで売り出す商品です。メーカー側の広告宣伝費などがかからないことから、仕入額も低く抑えることができ、商品そのものの利益率が高くなる傾向にあります。
2013年度のセブンイレブンは、PB商品の「セブンプレミアム」のリニューアルと品揃えの強化を推し進めた結果、PB商品の売上高を大きく増やすことに成功しました。また、セルフ式でコーヒーが飲める「セブンカフェ」が全店舗に導入されたのもこの年です。
PB商品の販売が拡大したことで、セブンイレブンの商品1個辺りの平均利益率が向上しました。
国内のセブンイレブンを展開するセブン-イレブン・ジャパンの営業利益率を見てみると、
2012年度 … 30.2%
↓
2013年度 … 31.3%
PB商品の販売増加が営業利益率の上昇に結び付いていますね。
セブンイレブンのように、PB商品を拡充させることで利益率を高めている企業は多く見られます。
一方で、利益率を下げる方向に商品ミックスが変わってしまった例もあります。
宅配便大手のヤマトでは、単価の低い商品の割合が増えた結果、営業利益率が大きく低下してしまいました。
→ヤマトの利益を引き下げた人手不足以外の原因とは?ヤマト2017上期の業績を読む
理由4 販売量が増えた
営業利益率が上がる最後の理由は、「販売量が増える」ことです。
販売量が増えることで、売上高が伸びる以外にこのようなメリットを受けられます。
🔹材料を大量に仕入れることによる割引を受けられる(=1つの製品にかかる材料仕入額が減る)
🔹工場の人件費、減価償却費、リース料といった生産量の増減に関係なく一定額発生するコスト(固定費といいます)の存在により、商品をたくさん作れば作るほど1個当たりのコストが小さくなる。
(商品を販売するための人件費や広告費も同じように考えられますね)
このような理由から、売上高が伸びると同時に営業利益率も向上している企業は多く見られます😊
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まとめ
営業利益率を上げるための主な方法は4つあります。
1.値上げ→失敗する実例も多い。商品の内容をバージョンアップするなど、値上げをお客さんに納得してもらうことが成功のポイント。
2.コストカット→あらゆる手段が取れ、企業の工夫の見せどころ。値上げのように、お客さんの購買判断に及ぼす影響が少ないことが多い。
3.商品ミックスを変える→PB商品を拡充するなど、利益率の高い商品の割合を高める。
4.販売量を増やす→販売、生産量を増やすことで、商品1個あたりのコストが小さくなる。
注目している企業がどんな方法で営業利益率を向上させたのかに着目して見ると、よりその企業への理解が深まり、将来の業績予測に役立ちます✨