繰延税金資産とは何?なぜ必要?桃太郎のストーリーでサクッと理解!

 

「なぜ法人税等調整額は必要?」(↓)の続編です!桃太郎のストーリーにのせて、わかりやすく繰延税金資産の正体を明かしていきます。

なぜ法人税等調整額は必要?マイナス表示の意味は?桃太郎のストーリーでサクッと理解!

2018年5月24日

 

 

ここまでのあらすじ

~これは、きびだんごの製造・販売を生業とするおじいさん・おばあさん、そして、鬼退治以外はもっぱらきびだんごの売り手として活躍する桃太郎が織りなすストーリーです~

 

1年間の決算書を作り始めたおじいさんとおばあさんは、決算書の利益と税金計算に使う利益が異なることを発見する。

なぜなら、来年度に支給予定の桃太郎への賞与(賞与自体は今年度の桃太郎の働きに対して支払われるもの)は、決算書では費用として扱われるが、税金計算上は費用には含めないからだ。

 

(前回の詳しいストーリーはこちら→ 法人税等調整額の役割も解説しています!)

 

 

 

きびだんご屋、来年度の税金計算をイメトレ

来年度の決算書を作ってみる

1年間の決算書を作り終え、ホッと一息つくと思いきや、真面目なおじいさんとおばあさんはさっそく来年度のシミュレーションに取り掛かっています。

どうやら、来年も今年と同じくらいきびだんごが売れるという想定のようです。

 

来年度の損益計算書(シミュレーション)

   売上高100万円…きびだんごの売上
 - 費用(売上原価)30万円…きびだんごの製造費用
 - 費用(販管費)20万円…桃太郎への給与
 = 税引前利益50万円…売上高-費用

売上も給与も今年度と同じ金額にしていますが、1つだけ異なるのは今年度20万円あった桃太郎への賞与が来年度は無いということです。

 

(参考)今年度の損益計算書

   売上高100万円…きびだんごの売上
 - 費用(売上原価)30万円…きびだんごの製造費用
 - 費用(販管費)20万円…桃太郎への給与
 - 費用(販管費)20万円…桃太郎への賞与
 = 税引前利益30万円…売上高-費用

その分、税引前利益が20万円増えています

 

おじいさん「再来年はきびだんご屋20周年記念イベントでお金もかかるし…桃太郎も鬼退治で稼いでおるから許してくれるじゃろう(^^;」

 

来年は税金が増えてしまう?

来年度のシミュレーションができてきたところで、おじいさんとおばあさんはお茶を飲みつつ小休憩に入ったようです。

 

おじいさん「来年は利益が増えそうだから、税金も増えるんじゃろか」

 

税金は利益をもとに計算されるので、基本的に利益が増えれば税金も増えるんですね。

 税金 = 利益 × 税率

※この他細かい調整がありますが、基本的にはこの流れで税金を求めます。

 

おばあさん「あれまぁ、おじいさん!来年桃太郎に払う賞与のことを忘れてますよ!あれは今年の桃太郎の働きに報いる賞与ですけど、税金を計算する上では実際に賞与を支給する年の費用に含めるとかじゃなかったですか」

おじいさん「…おぉ、そうであった!ということは…」

 

決算書上と税金計算上では収益と費用の認識時期がズレる~おさらい~

ここで、前回のおさらいです^^

まず、重要なポイントは

決算書の利益と税金計算に使う利益は異なる

ということです。

 

なぜなら、決算書を作る上での考え方と税金計算の考え方では、一部の収益や費用において認識する時期にズレがあるからです。

 

たとえば、このきびだんご屋のケースでは、「桃太郎への賞与をいつの費用にするか?」という点でズレが生じています。

● 決算書を作る上では…

賞与を支給する可能性が高く、支給額も精度高く見積もられ、さらにその支給額に対応する労働サービスをすでに受けている時に、賞与額を費用とする

● 税金計算上は…

→基本的に賞与を支給する時に、賞与額を費用に含める

 

きびだんご屋が桃太郎に渡そうとしている賞与は、今年度の桃太郎の働きに報いるものであるものの、実際に支給するのは来年度です。

つまり、決算書では今年度の費用に、税金計算上は来年度の費用になるのです。

 

 

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きびだんご屋、繰延税金資産を使いこなす!?

来年度の税金計算をシミュレーション

来年度の桃太郎の働きに対して賞与を支給するつもりはないものの、来年度は今年度分の賞与が支給される予定なのです。

そのため、来年度の税金を計算する時は、今年度分の賞与額だけ費用が積み増された利益を使います

そこで、来年度の決算書の利益を、税金計算用の利益に直してみましょう。

 

来年度の税金計算用の利益

  税引前利益50万円…来年度の決算書の利益
 - 費用(販管費)20万円…桃太郎へ今年度分の賞与を支給
 = 税金計算用の利益30万円

税引前利益から、追加で費用となる(今年度分の)賞与支給額20万円を差し引いたことで、利益が20万円減っていますね。

 

今年度の賞与には、来年度の税金を減らす効果が…!?

決算書の税引前利益をそのまま使えば来年度の税金は、

 税引前利益50万円 × 税率30% = 15万円

となるはずだったのが、実際は今年度分の賞与支給額が費用に加えられるために

 税金計算用の利益30万円 × 税率30% = 9万円

と、6万円(15万円-9万円)も税金が減ってしまうのです!

(※税率は30%とします)

 

つまり、このきびだんご屋の場合、

今年度分の賞与は来年度の税金を減らす効果がある

と、言えるのですね^^

(その代わり、今年度の費用には含まれないので、その分今年度の税金を押し上げています。)

 

ここで、繰延税金資産の登場です!

来年度の税金が減るということは、来年度のキャッシュアウトが少なくなるということです。

つまり、今年度分の賞与には、間接的にきびだんご屋の来年度のキャッシュを増やす力があると言えるんですね。

「キャッシュを増やす力」には、資産としての価値があります^^

 

この効果を、資産として表したものが繰延税金資産です。

 

来年度に税金を減らすことができる6万円分を、繰延税金資産として今年度の資産の中に含めてしまうのです。

 

おばあさん「あら、おじいさん!今年の決算書を直さなくちゃあいけませんね!」

おじいさん「おぉそうじゃな、繰延税金資産とやらを付け加える必要があるんじゃな」

 

こうして、きびだんご屋の貸借対照表には、現預金や棚卸資産と並んで、繰延税金資産6万円が付け加えられたのでした。

めでたしめでたし。

 

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まとめ

1.決算書の利益と税金計算に使う利益は異なる

2.決算書では今年度の費用に含まれているのに、税金計算の上では来年度以降の費用に含まれるものがある。

3.この場合、来年度以降の税金を減らす効果があるため(来年度以降の税金計算上の利益を減らすから)、その効果を表すために繰延税金資産を資産の部に含める。

 

こちら(↓)には、繰延税金資産のことがもう少し詳しく書いてあります!

らくちん理解!繰延税金資産がすっきり分かる完全マニュアル【事例付き】

2017年11月22日

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