繰延税金資産とは、「将来の税金を減らす」効果を表す資産です。
今回は、この繰延税金資産を取り崩すことが持つ意味と、影響について見ていきましょう😊
繰延税金資産のもっと詳しい解説はこちら(↓)
繰延税金資産を取り崩す意味とそのタイミングとは?
なぜ、繰延税金資産を取り崩すの?
繰延税金資産が資産であるのは、「将来の税金を減らす効果」を持っているからです。
逆に、「将来の税金を減らす効果」を持たなくなったら、その分だけ残高を減らさなくてはなりません。
これが、繰延税金資産を取り崩すということです。
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どんな時に「将来の税金を減らす効果」がなくなるの?
「将来の税金を減らす効果」が発揮される大前提、それは将来税金が支払われる(見込み)ということです。
そもそも税金を支払わずに済むのであれば、税金を減らしようがないからです。
税金は、
税金 = 利益(※) × 税率
という計算式によって算定されます。(※利益は、損益計算書の利益を調整した金額です)
利益が増えれば税金も増えますし、反対に利益が減れば税金も減ります。
何らかの理由で将来見込まれていた利益が下方修正されると、それに合わせて将来支払いが見込まれていた税金も減ることになります。
このような場合、「将来の税金を減らす効果」が発揮できなくなることがあるのです。
たとえば…
将来500万円の税金を支払うと見込んでいる企業のケースを考えてみます。
そのうち300万円の税金を減らす効果を持っていることから、300万円分の繰延税金資産を計上しています。
ところが、不況にみまわれ、将来予想していた利益を下方修正しました。
それに合わせて、将来の支払いが見込まれていた税金も500万円から100万円に修正しました。
すると、将来支払われる税金が100万円しかないので、300万円分あった税金を減らす効果も100万円分しか発揮できません。
残りの200万円は税金の支払いを減らす効果を持たなくなるので、繰延税金資産から取り崩すことになります。
繰延税金資産を取り崩すパターン
将来の利益を下方修正する時とは、やはり事業環境が悪化したときですね。
他社との競争や不況に巻き込まれたり、企業イメージが崩れたときは、売上も低迷し、将来の利益予測も引き下げられます。この引き下げ幅が大きいほど、繰延税金資産を取り崩す可能性も高くなります。
過去に繰延税金資産を取り崩した企業としては、こんな例があります。
● ベネッセ
…会員流出が止まらず利益を下方修正
● カッパ・クリエイト(かっぱ寿司)
…赤字が頻繁に出るようになり利益を下方修正
その他、税率が変わったときも、繰延税金資産の一部が取り崩されることがあります。
繰延税金資産を取り崩すとどんな影響があるの?
繰延税金資産を取り崩すとどんな影響があるのでしょうか?ここでは、業績に与える影響を見てみたいと思います。
まず、繰延税金資産が取り崩されると、貸借対照表(BS)では繰延税金資産が減らされます。
同時に、損益計算書(PL)では「法人税等調整額」という費用が増えるのです。
「法人税等調整額」は、損益計算書の「法人税等」というグループに含まれます。
「法人税等調整額」が増えても、その年に支払う税金が増えるワケではありません。あくまで、将来の税金支払い効果が減ったことを表す費用なのです。
業績が悪化した企業では、巨額の繰延税金資産を取り崩すケースも珍しくありません。
それによって、その年の利益が大きく引き下げられ、場合によっては赤字になることもあります。
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赤字なのに法人税等が大きくなることも~シダックスの事例に見る~
ここで、繰延税金資産を取り崩した企業の事例を見てみましょう😊取り上げるのは、カラオケチェーン店で有名なシダックスです。
シダックスの2016年3月期の損益計算書から、税引前当期純利益(損失)以下の項目を抜き出してみると…
税引前当期純損失 -33億円
法人税等合計 -37億円
当期純損失 -71億円
このように、税引き前利益の段階で赤字であったにも関わらず、そこに37億円の税金がかかり、結果として71億円もの当期純損失を出してしまっています。
ここまで税金(法人税等合計)が膨らんだ最も大きな理由は、繰延税金資産を取り崩したことにあります。
主力のカラオケ事業が、低迷から抜け出せず赤字に陥ったのがこの年でした。
これを機に、シダックスは将来の利益予想を下方修正したものと思われます。
こうして将来支払いが見込まれる税金が減ったことで、繰延税金資産が持つ「将来の税金を減らす効果」が少なくなってしまったのです。
この結果、繰延税金資産が取り崩され、法人税等調整額が膨らんでしまいました。
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まとめ
1.繰延税金資産は、「将来の税金を減らす効果」が少なくなった時にその残高を取り崩す。多くの場合、業績が悪化したケースに行われる。
2.繰延税金資産を取り崩すと、損益計算書上では費用(法人税等調整額)が増える。