前2回、経営不振に陥ったシダックスをテーマに、おもに利益面を見てきました。
今回は、財務状況を考察してみます!財務分析を交えつつ、大量閉店後の変化についてもご紹介します。
大量閉店時の財務状況とは?~①短期の支払い能力~
シダックスの短期の支払い能力
まずは、1年以内の支払い能力を測る流動比率を使って、シダックスの財務状況を見てみます。
流動比率とは…
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
100%を割ると危険と言われる流動比率ですが、大量閉店後2017年3月末のシダックスは83%。
有利子負債が幅をきかせる流動負債を、流動資産が下回ってしまいました。
100%を下回っている流動比率が表すこと
カラオケ事業の不振で悪化したのかと思いきや、業績がピークであった10年ほど前も流動比率は100%を下回っていたのです。
むしろ一時と比べれば、流動比率は改善してきています(2011年3月末の流動比率は70%)。
もともと有利子負債が重めであったシダックスは、毎年100億円規模の借金を返済している状態でした。
返しながらも、投資をする時にまた大きく借りて…という繰り返しで借金残高が保たれてきたのです。
こうして、流動負債の規模が大きくなってしまっているんですね。
事業が順調でキャッシュが滞りなく回っているうちは、たとえ流動比率が100%を割っていたり少々借金が重めであったりしても、支払や返済を乗り切っていくことができます。
しかし、一度事業が不調になり、キャッシュが入ってこなくなると、たちまち危険な状態におちいってしまうのです。
その意味で、近年、主力のカラオケ事業が不調に陥っているシダックスは、危うい立場にいると言えます。
それを表す指標を次に見てみましょう。
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大量閉店時の財務状況とは?~②借金への依存度~
シダックスの借金依存度
事業を回すための資金を有利子負債に頼っているほど、有利子負債依存度は高くなります。
有利子負債依存度とは…
有利子負債依存度(%)= 有利子負債 ÷ 総資産 × 100
大量閉店した2017年3月期にかけて、5年間の有利子負債依存度の変化を見てみましょう。
2013年3月期 … 33%
↓
2015年3月期 … 35%
↓
2017年3月期 … 51%
(※)有利子負債は、借入金、社債を対象として計算しています。
2017年3月期にかけて急激に上がり、50%を上回ってしまいました。これは、経営に使っている資金の半分以上を有利子負債に頼っていることを表します。
有利子負債依存度が悪化した理由
最も大きな理由は、2年連続で赤字が続き、自己資本が大幅に減ってしまったことです。
つまり、赤字(事業にかかったコストが収益を上回る)を出したことで、将来返済する必要の無い自前の資金が減ってしまったのですね。
また、本業の収益力が悪くなり借金が増えてきたことも理由の1つです。
50%を超えている有利負債依存度は、経営に使う資金の半分以上が返済や利払いの必要があることを示します。そのため、今後の資金繰りが不安定な状態と言えます。
このように、カラオケ事業の不調がシダックス全体の財務体質を変えてしまっているのです。
2017年3月期のシダックスは、赤字が続き企業体力が下がっている一方で、借金返済や利払いによる圧力が高まった状態と言えます。
その後9ヶ月間で起きた変化とは?
赤字なのに財務状態が改善?
大量閉店を行った2017年3月期の後、2017年4月~12月の間にある変化が起こっていました。
先ほど見た2つの指標の変化を見てみましょう!
シダックスの流動比率の変化
2017年3月末 … 83%
↓
2017年12月末 … 88%
シダックスの有利子負債依存度の変化
2017年3月末 … 51%
↓
2017年12月末 … 42%
いずれの指標も改善しています。
2017年4月~12月の業績は、最終赤字でした。それでも、財務状況が改善した理由とは何でしょうか?
財務体質が改善した理由
実は、この期間にシダックスは渋谷の土地・建物を売却しました。そのため、有形固定資産の売却による収入が100億円を超えていたのです。
シダックスは、ここで得たキャッシュを借金の返済に充てました。
こうして、流動負債が減ったことで流動比率が高まり、同時に借金全体の残高が縮小したことで有利子負債依存度が低下したのです。
恒常的に高額の借金に頼っていた財務体質を改善し、利払いを減らすことで、次なる成長事業の投資にも対応しやすくなりますね。
数値レベルとしてはまだまだ安全ゾーンに入ったとは言えませんが、現在力を入れているトータルアウトソーシング事業が伸び、利益を積み重ねていけば、もっと良くなる…つまり、資金が尽きて倒産するリスクが減るはずです😊
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