有利子負債依存度の意味、計算式、目安とは?
有利子負債が多いとどうなる?
有利子負債とは、いわゆる借金のことです。借入金や社債といった資金を調達する手段の1つですね。
ポイントは、他の負債とは異なり、利子を支払わなくてはならないことです。
有利子負債のより詳しい解説はこちら(↓)
有利子負債の多い状態は、それだけ将来流出(返済)する資金が多いことを意味します。
また、毎年の利子の支払いも負担になります。本来なら商売に回せたはずのお金が利払いに取られ、事業の成長に結び付けることができないのです。
このような理由から、事業の調子が悪いときは、積み上がった有利子負債が資金繰り悪化の原因になります。場合によっては、倒産へのレールを敷いてしまうことすらあるのです。
有利子負債依存度の計算式と目安
有利子負債依存度とは、企業がどの程度有利子負債に頼って経営をしているかを測る指標です。
有利子負債依存度(%)= 有利子負債 ÷ 総資産 ×100
総資産は、事業に使っている資金の総額です。
事業を回すための資金を有利子負債に頼っているほど、有利子負債依存度が高くなります。
一般的には有利子負債依存度が50%付近になると、借金の返済や利払いによる圧迫が強まり、危険ゾーンに入ってくると言えます。
ただし、業種が異なれば投資規模も変わるため、業界ごとに有利子負債依存度の水準も変わってきます。
不動産事業や鉄道事業を営む企業は、有利子負債依存度が高くなる傾向にありますね。
スポンサーリンク
スカイツリーが影響!東武鉄道の有利子負債依存度
ここで、東武鉄道の実例を見てさらに理解を深めていきましょう。
スカイツリーの建設が、いかに有利子負債依存度に影響を及ぼしたかに注目です!
東京スカイツリーへの投資拡大期
東武鉄道といえば、2012年に開業した東京スカイツリーの建設に携わり、東部スカイツリーラインを運行している会社です。
あれだけ大きな建造物、そして周辺の開発に携わったことで、関連する投資額も1000億円を超えていました。
建設がピークに差し掛かった時期の有利子負債依存度を見てみましょう。
2009年3月期 … 57.2%
↓
2010年3月期 … 57.3%
↓
2011年3月期 … 59.2%(開業2年前)
↓
2012年3月期 … 58.2%(開業前年)
2011年3月期から2012年3月期にかけてはスカイツリーへの投資もピークを迎え、その資金調達手段としての有利子負債も増えています。
もともと投資規模の大きい業種である上に、スカイツリーという特別プロジェクトが重なって、有利子負債依存度もかなり高くなっています。
東京スカイツリー開業後の変化
では、そのスカイツリーが開業した後、有利子負債依存度はどのような変化を見せたのでしょうか?
2012年3月期 … 58.2%(開業前年)
↓
2013年3月期 … 55.0%(開業した年)
↓
2014年3月期 … 52.4%(開業2年目)
東京スカイツリーがオープンしたことで、レジャー事業はもちろんのこと、その他の事業への波及効果もあり、東武鉄道は増収増益を果たしました。
これによって総資産は膨らみ(利益は純資産を増大させるため)、獲得したキャッシュで有利負債を返済することができました。
これらの事象を反映して、年を追うごとに有利子負債依存度が低くなっています。
有利子負債依存度は低いほどいいの?
本業の調子が悪くなり借金に頼った経営をするようになると、有利子負債依存度は上がってしまいます。
しかしその一方で、東武鉄道の例のように、大型投資に必要な資金を集めるために一時的に有利子負債依存度が上がることもあります。
有利子負債から得た資金をうまく生かせば、事業を拡大しさらに利益を高めることもできるのです。
東武鉄道の場合は東京スカイツリーへの投資効果によって、結果的に以前よりも有利子負債依存度が低くなりました。
「有利子負債依存度が高くなる=悪いこと」と一概に捉えるのではなく、「有利子負債依存度が高くなった理由は何か?」「その投資の採算はどうか?」といったことと合わせて見ると、企業への理解も深まりますね😊
スポンサーリンク
まとめ
有利子負債依存度とは…
1.有利子負債依存度(%)= 有利子負債 ÷ 総資産 ×100
2.有利子負債依存度が高いほど、借金の返済や利子の支払いといった経営への圧迫が強まり、資金繰りに影響するようになる。
3.ただし、利益を増やすための手段として有利子負債が必要な時もある。そのため、有利子負債依存度が高まったときは、その背景や投資の内容も合わせて検討する。