今回取り上げるのは、インタレスト(利息)・カバレッジ・レシオ(負担する能力)です!
意味、計算式、目安を見ていくとともに、シダックスの実例で理解を深めていきましょう。
まずは計算式をチェック!
インタレストカバレッジレシオ =( 営業利益 + 受取利息 + 受取配当金)÷ 支払利息
単位は、倍です。
( 営業利益 + 受取利息 + 受取配当金 )は、平常時の活動から得られる収益を表します。
つまり、平常時の活動から得られる収益が支払利息の何倍あるかということを計算しているのです。
営業利益の詳しい解説はこちら(↓)
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インタレスト・カバレッジ・レシオの意味、目安は?
インタレストカバレッジレシオが教えてくれること
企業の安全性を測る方法の1つとして、有利子負債(利息の支払いが必要な負債)に着目する方法があります。
「有利子負債とは?」についてはこちら(↓)
有利子負債とは借入金や社債など、いわゆる借金のことですね。
借金が積み上がるほど、返済期限までに流出してしまう資金が多くなりますし、利息という支出も増えます。
しかし、一概に借金が多いと言っても、企業の利益規模が異なればその金額が意味することも変わります!
そんな時、「企業の利益規模に照らして利息の支払い額が多くないか?」を測定できるのが、インタレストカバレッジレシオなのです。
一言でいうと、金利の支払い能力を測る指標です。
企業の規模に関係なく、有利子負債が収益の水準に見合っているかどうかを教えてくれるのです。
目安はどのくらい?
同業種でくらべてみる
理想は10倍以上とされています…これは、平常時の活動から得られる収益が支払利息の10倍以上ある状態、ということですね。
ですが、インタレストカバレッジレシオの水準は、業界によって差が出ます。事業を続けるために必要な投資規模は業種によって異なるため、借金の必要度も変わってくるのです。
そのため、同じ業界内で比べてみるのがオススメです。
企業のステージに合わせて判断する
また、企業が投資をし、事業を拡大させている時は、有利子負債と共に支払利息も増える傾向にあります。
「インタレストカバレッジレシオが低い=悪い」と一概に判断するのではなく、「今、企業がどのようなステージにいるか?」と照らし合わせて考えるとよいですね😊
こうしたステージの変化に関わらず、数値がだんだん下がってきている場合は、企業の体力低下を意味する場合があります。
企業がどのようなステージにいるか、数値が過去からどのような変化をたどっているのか、といった要素と合わせて判断しましょう!
「この状態はキケン!」な数値とは?
インタレストカバレッジレシオが1倍を下回っている場合は、利息を支払えるほどの利益も稼いでいないことを表します。
どんなに事業を頑張っても、稼いだ利益がすべて利息の支払いに持っていかれている状態です。これは、事業を続けるうえでとてもキケンな状態です。
一時的なものか、それとも恒常的に1倍を下回る(もしくはそれに近い水準)体質になってしまっているのか、よく見極めましょう!
変動するシダックスのインタレスト・カバレッジ・レシオ
ここで1つ、企業の実例を見て理解を深めていきましょう😊
2016年のカラオケ店大量閉鎖でも話題になったシダックスでは、インタレスト・カバレッジ・レシオがどのような動きを見せているでしょうか?
利益が落ち込み赤字に転落したころ…
本格的な経営難に陥る前から比較的有利子負債の多かったシダックス。
事業が順調に回っていた頃は問題なかったのですが、2013年あたりからカラオケ事業の調子が悪くなり始めます‥
シダックスのインタレスト・カバレッジ・レシオ推移
2013年3月期 … 5.9倍
↓
2015年3月期 … 0.8倍
↓
2017年3月期 … 2.0倍
この間、有利子負債の水準に大きな変動はありませんでしたが、事業の傾きを写し取るようにみるみるうちに営業利益が縮小してゆきました。
インタレスト・カバレッジ・レシオの変化は、その事情を反映しています。
2015年3月期にいたっては、企業の活動から得た利益をすべて注ぎ込んでも、利息の支払いには足りない状況です。
2017年3月期には少し持ち直したものの、依然として危険ゾーンからは脱せてはいません。
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2017年に入ってからの変化
では、2017年度に入ったここ最近のインタレスト・カバレッジ・レシオを見てみましょう。
シダックスのインタレスト・カバレッジ・レシオ(2017年4月~12月)
2016年4月~12月 … -1.3倍
↓
2017年4月~12月 … 1.5倍
2016年4月~12月は営業赤字であったために、インタレスト・カバレッジ・レシオもマイナスの値に沈んでしまっていますね。
2017年4月~12月は1.5倍と、まだまだ低水準ではありますが、実はここ4年間の同時期の中では最も良い数字なのです。
数値が上向いた理由とは?
この理由の1つは、営業利益が増えてきたことです。近年は、学童保育事業など、カラオケ以外の事業が拡大し利益を支えるようになってきました。
そして、もう1つの理由は、支払利息を削減できていることです。
2017年、シダックスは渋谷に保有する土地・建物を売却することで、多くのキャッシュを得ました。これを借金の返済に充てたのです。
この結果、2017年12月末の有利子負債の金額は、1年前と比べて3割以上削減されました。
それでもまだまだ低い水準
とはいえ、シダックスのインタレスト・カバレッジ・レシオはまだまだ(×2)改善の余地があります。
2017年4月~12月の1.5倍という数字は、この4年間の同時期では一番良いとは言っても、事業活動で得た利益の多くが支払利息に吸収されてしまっている状態です。
結果、最終赤字(四半期純損失)になってしまっていますね。
今注力している地方自治体向けの受託サービスがさらに成長し、そこから得たキャッシュで借金を減らせば、徐々に数値も上向いてくるはずです。
まだまだ気が抜けない状態ですが、今後のシダックスの奮闘に期待しましょう!
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まとめ
インタレスト・カバレッジ・レシオとは…
1.(営業利益+受取利息+受取配当金)÷支払利息の計算式で求める。
2.平常時の活動から得られる収益が支払利息の何倍あるか、つまり、企業の利益規模に照らして利息の支払い額が妥当かどうかを測る指標である。
3.1倍を下回っていると、事業を続ける上で危険な状態である。また、だんだんと数値が下がっている場合も注意が必要。