当期純損失は何を意味するの?
当期純損失を一言で表すと、当期純利益がマイナスの状態のことです。
…といっても、イメージがわきにくいですね^^; 当期純利益の意味から、当期純損失の正体を明かしていきましょう!
まず、当期純利益の意味を確認!
まず、利益とは…
利益=収益-費用
このようなシンプルな構造になっています。
利益には段階に応じて5種類ありますが、このうち企業が1年間で得た全ての収益から全ての費用を除いた利益を表すのが当期純利益です。
言い換えると、1年間の活動を通して企業の中に最終的に残った利益のことです。
このように、当期純利益とは企業の手元に最後に残った利益であり、企業が獲得するキャッシュの源泉になります。
当期純利益のもっと詳しい解説はこちら(↓)
マイナスの当期純利益が意味すること
ということは…
当期純利益がマイナスになる状態とは、1年間で得た収益を費用が上回ってしまった状態と言えますね。1年間の活動の成果を得るどころか損をしてしまった状態です。
利益がマイナスになったからといって、その年に得られるキャッシュが必ずしもマイナスになるとは限りません。しかし、キャッシュの源泉である利益がマイナスになる状態が続くと、やがて手元のキャッシュも減っていき経営が苦しくなっていくのは確かです。
ちなみに、利益がマイナスとなった業績のことを一般的には赤字と呼びます😊最終利益(当期純利益)が赤字になるので、ニュースでは「最終赤字」と表されることも多いですね。
では、どんな時に費用が収益を上回る状態になるのか、次のパートで解説していきます!
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どんな時に当期純損失になるの?
企業は商売以外にも投資や借入れ・貸付けなど様々な活動をし、それぞれの活動から収益と費用が発生しています。ですが、当期純損失となっている企業は、やはり商売が不振に陥っているケースがほとんどです。
商売が低迷した結果、近年当期純損失を出した企業の例にはマクドナルドやシャープがありますね。
● マクドナルド(2014/12~2015/12)
:鶏肉の賞味期限切れ問題の発覚によりブランドイメージが悪化し販売不振に。
● シャープ (2012/3~2013/3・2015/3~2017/3)
:主力の液晶事業が価格競争に巻き込まれ、採算悪化。
これらの企業は、本業が深刻に悪化したために、営業利益以下の5つの利益すべてが赤字となってしまいました。このように業績不振に陥った企業は、不振の脱却を目指して構造改革に多くの費用を使うゆえに、赤字幅が拡大しやすい傾向にあります。
また、商売の利益(営業利益)は赤字に陥るほどではなくても、商売を立て直すための改革費用や税制の改正に対応する費用など、一時的な損失(特別損失)が大きいあまり当期純損失に転落する企業もあります。この場合、翌期以降は黒字に回復する企業も多いです。
たとえば、2013年12月期のサマンサタバサジャパンリミテッドは、不採算ブランドや事業から撤退するために多くの特別損失を計上し、最終赤字になりました。しかし、この時の改革をてこに、翌期の業績はV字回復しています!
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決算書にはどんな影響があるの?
当期純損失が出た年の決算書には、どのような変化があるのでしょうか?
まず損益計算書では、当期純利益と同じく一番下の行に当期純損失の金額が表示されます。この時、マイナスを示す△が数字の前に付されます。
また、貸借対照表では純資産が減ります。
純資産の内訳の1つである利益剰余金は、毎年の当期純利益が足し込まれていくことで増えていきます。つまり、マイナスの当期純利益である当期純損失が出た年は、これとは反対に利益剰余金が減ってしまうのです。
このような当期純損益と貸借対照表のつながりについては、東芝を例にこちら(↓)で詳しく解説しています。
当期純損失が続くと純資産がどんどん少なくなっていき、しまいには純資産自体がマイナスの金額になってしまいます。この状態を、債務超過と呼びます。
債務超過になったからといって、すぐに倒産するわけではありません。しかし、債務超過に陥った企業は、資金繰りに余裕がない上に新たに資金を集めることも難しくなります。そのため、倒産に近い危険な場所にいると言えるのです。
債務超過の詳しい解説は、こちら(↓)をご覧ください!
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まとめ
1.当期純損失とは、マイナスの当期純利益のことである。1年間で得た収益を費用が上回ってしまった状態を表す。
2.当期純損失を出す企業は、本業である商売自体が不振に陥っていることが多い。この他、一時的に大きな損失を出してしまったがゆえに当期純損失が出るケースもあり、この場合は翌期に回復することも多い。
3.当期純損失が出ると、貸借対照表の純資産が減る。そのため、当期純損失が続くと、やがて純資産自体がマイナスの金額になる債務超過に陥ってしまう。