【東芝の不正会計に見る!】引当金を計上するタイミングについて理解しよう

 

2015年に発覚した東芝の不正会計問題😢連日テレビや新聞でも取り上げられ、多くの人に衝撃を与えました。

東芝が関わった不正にはいくつか種類があります。

今回は、その中でも工事損失引当金(受注損失引当金)に関する不正問題を取り上げることで、引当金を計上するタイミングについて理解を深めていきたいと思います😊

 

どんな不正をしたの?

数々の不正取引の中でも利益へのインパクトが大きかったのが、工事損失引当金に関わる不正です。

工事契約全体で赤字が見込まれる場合、工事損失引当金を計上しなくてはなりません(詳しくは、次のパートでご説明します)。

しかし、東芝は複数の工事案件について、本来であれば計上すべきであった工事損失引当金を計上していなかったのです。

 

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工事損失引当金(受注損失引当金)とは?

工事損失引当金の概要

システムの開発、機械やプラントの製造など…

このような工事契約を結んだとき、受注した企業はこのプロジェクトから得られる収益と発生する費用を見積もることになります。

もしプロジェクトから発生する費用が収益を上回っているならば、そのプロジェクトは赤字ということになります。この場合、赤字となった金額(プロジェクトから見込まれる費用合計から収益を除いた金額)を工事損失引当金として負債に計上しなくてはなりません。

工事損失引当金 = プロジェクトから発生する費用合計-プロジェクトから得られる収益合計

(※受注時に工事損失引当金を計上する場合)

 

なお、システム開発を行っている企業では、このような引当金を受注損失引当金と呼ぶことが多いです。呼び方が変わるだけで、基本の考え方は工事損失引当金と同じです😊

 

受注損失引当金(工事損失引当金)については、こちら(↓)で詳しく解説しています!

【初心者向け】受注損失引当金とは何?その意味を1からわかりやすく解説します

2018年2月23日

 

東芝の不正による利益への影響

工事損失引当金を計上すると、同時に費用(売上原価)が増えます。

工事損失引当金を計上しなかった東芝の貸借対照表は、負債が過少になっていたと言えます。また、損益計算書では費用が過少になっていたため、結果として「収益-費用」である利益が過大になっていたのです。

 

不正が起こりやすいポイント

プロジェクトから見込まれる収益は契約により決定(契約売価)しているため、客観的にも明らかです。

一方で、プロジェクト全体で発生する費用は、多くの材料や工程から作り上げられるものです。さらに専門的な作業も入り組んでいるため、費用の見積もり結果が正しいかどうかを客観的に判断するのはとても難しいんですね。

そのため、工事契約から発生する費用の見積もりは、不正が発生しやすいポイントと言えます。

 

 

東芝が引当金を計上しなかった理由を4要件に当てはめると…?

東芝の不正は引当金の4要件を満たしていた?

東芝は、通信システム開発や発電所の建設などの赤字プロジェクトで工事損失引当金を計上していませんでした。

しかし、この中の多くのプロジェクトは、受注時点で赤字であることが分かっていたようです。採算度外視で低い受注価格を提示し、契約を取りにいったんですね。

 

これを、引当金を計上するための4要件に沿って見てみると…

引当金を計上するための4要件

1.将来、とある費用又は損失が発生すること

→将来、プロジェクトから赤字(損失)が発生します。

 

2.その費用又は損失が発生する原因がすでに生じていること

→プロジェクトを受注し、作業を遂行することが決定した時点で、赤字が発生する原因が存在しています。

 

3.その費用又は損失が発生する可能性が高いこと

4.その費用又は損失の金額を合理的に見積もることができること

→プロジェクトから得られる収益(売価)と発生する費用を一定の精度をもって見積もることができていれば、赤字の発生可能性、赤字の金額も把握できるため、この2つの要件を満たしています。

 

3つ目、4つ目の要件は、「得られる収益と発生する費用を一定の精度で見積もることができていれば」という条件付きですが、東芝のケースではこの点は把握できていたようです。

つまり、引当金の4要件はすべて満たしていたんですね。

 

なぜ、東芝は引当金を計上しなかったの?

東芝側は、工事損失引当金を計上する必要性はわかっていたのです。

一方で、工事損失引当金を計上するということは、費用(損失)が増え、利益が押し下げられることを意味します。

当時の東芝の内部では、予算達成に向けて上からの強いプレッシャーがあったと言われています。利益押し下げの原因となる工事損失引当金の計上を避けるために、上長らがあえて目をつぶったものと考えられていますね。

 

表向きは、根拠のないコスト削減策を盛り込むことで、プロジェクトが赤字とはならないように(つまり、プロジェクトから発生する費用が収益を上回らないように)見せかけたものが多かったようです。

つまり、東芝は、引当金の1つ目の要件である「将来、とある費用又は損失が発生すること」を(表向きは)認めていなかったのです。これが、工事損失引当金を計上しなかった根拠になっているんですね。

(※一部のプロジェクトについては、引当金の3つ目、4つ目の要件が満たされていないことを理由にしていました)

 

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東芝はどのタイミングで工事損失引当金を計上すべきだったの?

引当金は、4要件を満たした時点で計上しなくてはなりません。計上したとしても、それが4要件を満たした時点よりも後であれば、やはり不正とみなされてしまいます。

東芝の場合、赤字が判明していたプロジェクトを受注した時点で4要件をすべて満たしていました。つまり、これらのプロジェクトを受注した時に、工事損失引当金を計上すべきだったのです。

 

この他、受注時にはプロジェクトの赤字が見込まれていなかったものの、その後の材料価格の高騰や為替レートの変動によって、赤字の見通しに変わったものもあるようです。

このようなケースでは、プロジェクトが赤字となる可能性が高くなった時点で工事損失引当金を計上しなくてはなりません(もちろん、赤字の金額を合理的に見積もることができることが前提です)。

そのため、工事契約の収益や費用はこまめに見積もり金額を見直し、その都度、工事損失引当金を計上すべきか判定しなくてはならないんですね。

 

 

東芝の不正は損失の先延ばしだった

工事損失引当金の計上をしなければ、確かにその年は費用(損失)の計上を免れます。

しかし、プロジェクトが完成する頃には、遅かれ早かれ、プロジェクトにかかった全ての費用が明らかになり計上されます

つまり、費用(損失)の計上は時間の問題なのです。

東芝は、工事損失引当金による費用(損失)を隠したのではなく、先延ばしにしていたんですね。

 

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まとめ

1.引当金は、4要件をすべて満たした時点で計上しなくてはならない。

2.東芝は、4要件のうち「将来、とある費用又は損失が発生すること」という要件に目をつぶったために、工事損失引当金を計上していなかった(つまり、プロジェクトが赤字となることを認めていなかった)。

3.本来であれば、赤字が判明していたプロジェクトを受注した時点、もしくは、プロジェクトにかかる費用見積もりが収益見積もりを上回った時点で工事損失引当金を計上すべきであった。

 

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