このように、引当金に取っつきづらさを感じている方も多いのではないでしょうか?
今回はスバルの事例を交えながら、簡単な説明で引当金のキホンを解説していきます😊✨
一発理解!まずは引当金の意味をおさえよう
引当金ってどんな負債?
そうなんです😊
まず、引当金の大きな特徴は2つあります!
① 負債であること
② 負債の中でも、とりわけ推定の要素が入っていること
負債とは、「将来、何らかの形でお金が出て行く予定を金額で表したもの」のことです(一部例外あり)💰
決算書に載っている引当金も「将来出て行く予定の金額」を表しています。
しかし、他の負債(借入金や未払金など)のように、必ずしも契約書で請求書によって支払時期や金額が取り決められているわけではありません😲
引当金の場合、そもそも「本当に支払いが行われるのか?」「いつ、いくらのお金が支払われるのか?」といった内容がハッキリと確定していないため、これらの要素を推測することで金額を見積もり計算しているのです✍
これが、「負債の中でも、とりわけ推定の要素が入っている」ことの意味なんですね。
引当金のこの特徴について、スバルの事例を見ながら理解を深めていきましょう😊
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スバルの事例で理解を深めよう!リコールでどんな引当金を計上したの?
2017年のスバルは、とある大きなリコール問題に悩まされていました😢
それは、タカタ製エアバッグに関するリコール問題です。
不具合のあるタカタ製エアバッグをスバル車に搭載していたために、リコールが実施されることになったのです(本来、リコール費用はタカタが負担すべきですが、タカタの経営破たんによりスバルが負担することが決定的になってしまいました💦)。
この問題を受けたスバルは、「将来支払われる予定のリコール費用」を何百億円単位もの引当金として計上しました😲
ところが、この引当金を計上した時点では「将来支払われる予定のリコール費用」の計算に必要な要素、つまり…
● 何人がリコール対象車の修理を依頼してくるのか
● いつ修理が行われるのか
といった内容は分かっていませんでした。
それでも、リコールすべき不具合が露見したことを受けて、
①「すでにリコールする旨を届け出た」ために、
②「将来リコールに関する支出(修理代など)がある」ことは
③「ほぼ確定的な状況」
です。
さらに将来支払うリコール費用額をピタリと計算するまでにはいかなくとも、過去のリコール実施の経験などから、
④「それなりの精度をもってリコール費用を算定することは可能」
でしょう✍
このように、リコール実施の確度やその時にかかる費用についてある程度推測の余地がありましたが、スバルはその時点で集められうる情報を使って「将来支払われる予定のリコール費用」を計算し、引当金に計上したのです。
実は会計のルールでは、ここに挙げた①から④の条件がそろったときに「引当金」を計上しなければならないことになっています!
これら4つの要件の内容については、後ほど詳しく解説していきますね😊
引当金は決算書のどこに表れる?
引当金は、貸借対照表(BS)の負債の欄に登場します✨
1年以内の支払いを表す引当金は流動負債に、支払いまで1年超かかる引当金は固定負債に含まれます。
「引当金」という名称だけで登場することはなく、「何に関する支払いを表すか?」を示す言葉を頭につけて「○○引当金」と記載されます😊
今回のスバルの事例では、「エアバッグ関連損失引当金」と記載されていますね。エアバッグの不具合に関連して支払われるリコール費用が、この「エアバッグ関連損失引当金」の金額となっているためです💰
〈事例で学ぶ〉引当金の「4つの要件」がみるみる分かる!
引当金は、こちらの4つの要件を満たすと計上されます✍
① 支出の原因となる事象がすでに生じていること
② その支出は将来のものであること
③ 支出が生ずる可能性が高いこと
④ その支出の金額を合理的に見積もることができること
※厳密には、支出を伴わない将来の費用(損失)が引当金として計上されることもあります。が、多くの場合は支出を伴うため、ここでは分かりやすく支出と表記しています。
④の「合理的に見積もることができる」とは、1円もズレずに見積もることはできなくでも、「今収集できる情報を使って実際の支出額と大きなズレなく見積もることができる」という意味です😊
見積もり後に新たに生じた事象(たとえば新たにリコールすべき原因が発覚した、など)によって、見積もり値と実際にリコールにかかった支出額がズレるのは許容されます。
一方、情報収集を怠ったり計算ミスによって実際の支出額とズレてしまうと、会計処理の誤りとみなされてしまいます😨
また、③「支出が生ずる可能性が高いこと」とあるように、不具合の原因がはっきりしておらず、リコールすべきかどうかがまだ不明な状況では「引当金」を計上することはできません!
先ほどご紹介したスバルの「エアバッグ関連損失引当金」は、
①「すでにリコールする旨を届け出た」ために、
②「将来リコールに関する支出(修理代など)がある」ことは
③「ほぼ確定的な状況」であり、
④「それなりの精度をもってリコール費用を算定することは可能」
であったように、引当金の4つの要件を満たしたがゆえに計上されたんでしたね🚘
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意外と知らない!?「引当金繰入額」って何?
引当金のパートナー的存在である「引当金繰入額」。このパートでは、その正体を明かしていきましょう😊
引当金と引当金繰入額は同時に登場する!
前のパートでお話ししたように、引当金が登場するには「支出の原因となる事象がすでに生じている」という前提が必要です。
そのため、引当金が登場するタイミングで、将来予定されているその支出額を当年度の費用(損失)として計上してしまいます!
この費用(損失)こそが、「引当金繰入額」と呼ばれるものです✨
つまり、「引当金」と「引当金繰入額」はセットで登場するのです🌟
貸借対照表(BS)に「引当金」が登場するとき、同じ金額の「引当金繰入額」が損益計算書(PL)に出てくるのはこのためです。
(※すでに一部の支払いが行われている時は、「引当金」の方が金額が小さくなります。)
スバルの決算書にも多額の「引当金繰入額」が…!
スバルの2017年度上半期の決算書を見ると、貸借対照表に812億円の「エアバッグ関連損失引当金」が登場しています。
そして、損益計算書の特別損失の欄には、同じく812億円の「エアバッグ関連損失」が記載されています。これが「エアバッグ関連損失引当金」と対になる「引当金繰入額」ですね✍
金額が多額に上ることから、特別損失に計上されています。
ここで計上されている「エアバッグ関連損失」は、翌年の2018年3月以降に実施予定のリコールにかかる費用です。
リコール費用を支払う原因(リコール実施の届出)が生じ、かつ、高い精度で支出額を見積もることができるようになったのが2017年度上半期であったために、リコール費用の支出を待たず、2017年度上半期の費用に含められたんですね。
これだけは知っておきたい!【頻出】引当金の種類
今回はスバルの「エアバッグ関連損失引当金」をご紹介しましたが、この他にもいろいろな種類の引当金があります。
その中でも頻繁に登場するのは、こちらですね✨
この他にも、支出の内容にあわせて様々な名称の引当金があります。
業績が悪化し、事業や人のリストラを実施している企業では、「事業構造改革引当金」や「リストラクチャリング引当金」といった引当金が見られますね。
その企業のビジネスの特徴や事業環境(たいていは厳しい場合ですが)が表れやすい勘定科目でもありますので、決算書を見る際にはどんな「引当金」があるのか見てみるのも面白いかもしれません😊
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まとめ
1.引当金は負債の1つであり、将来支出が生ずる可能性が高い等の4つの条件を満たすと計上される。
2.引当金が計上されると、同時に「引当金繰入額」という費用(損失)も計上され、企業の利益を押し下げる要因にもなりうる。
3.支出の内容に合わせて様々な名称の引当金があり、企業の経営状況やビジネスの特徴が表れやすい。