トヨタ自動車の2017年上半期(4月~9月)の業績が発表されました。
前年の同時期と比べてみると、
🔹売上高 →増える
🔹営業利益 →減る
🔹四半期純利益 →増える
という不思議な結果に!
今回は、「なぜトヨタの損益が段階ごとに揺れ動いたのか?」について追ってみます💫
なぜ、売上高が増えたのに営業利益が減ったの?
2017年上半期のトヨタは、アジアや北米での販売台数がやや減少したものの、欧州や国内での販売の伸びがそれを上回りました。そのため、2016年上半期と比べると売上高が8.6%も増え、14兆1912億円となったのです。
一方営業利益はというと…2016年上半期から1.8%減少しています。
大きな原因は北米にある
この原因として最も注目すべきは、主要市場である北米地域の営業利益率が急降下したこと。2016年上半期に6.1%あった営業利益率は、2017年上半期は2.7%にまで落ち込んでいます。
今、北米の自動車市場は新車販売台数が減り、何やら雲行きが怪しい状況なのです。トヨタだけでなく、ホンダやマツダなども北米地域の売上高が低下しています。
小さくなる市場の中でシェアを取り合うため、トヨタは値引きの原資となる販売奨励金を増やしています。販売台数は微減となった一方で、経費は増えたということです。これが、営業利益率の低下、つまり売っても売っても手元に利益が残りにくくなる状況を招いているんですね。
増益要因もありましたが…
実は、2017年上半期には、営業利益を押し上げる要因もありました。
1つは、前年よりも円安に傾いたこと。トヨタは海外向けの販売があるため、決算書を作る際は外貨で行われた売上を円貨に直す必要があります。その際、為替レートが円安であるほど、円貨に直した売上も膨らみやすいんですね。
2017年上半期は、営業利益1兆円ほどの中に、この円安による押し上げ効果が1000億円もありました✨
円安による営業利益への効果は、こちらで詳しく解説しています(↓)
もう1つは、トヨタの得意分野である原価改善ですね😊原価改善の努力の結果、営業利益が1000億円押し上げられたそうです。
このようなプラスの要因がありながらも、経費の増加といったマイナスの影響が営業利益に強く響いてしまったのです。
スポンサーリンク
なぜ、営業利益が減ったのに四半期純利益は増えたの?
さて、このように販売面での苦戦によって営業利益が減ってしまったわけですが、それでも2017年上半期の最終損益は前年の同時期よりも13%増えています。
この原因は、為替レートが円安に傾いたことです🗝
決算書を作るときなど外貨建ての資産や負債を円貨に直す際は、為替レートが円安または円高に動いていると収益(為替差益)または損失(為替差損)が発生するんですね。ここでの収益または損失は、営業利益の外(損益計算書で言うと営業利益の下)に表示されます。
海外に拠点を多く持つトヨタにとって、この換算による影響は避けることができません😥
資産・負債を円貨に直す際の利益への影響については、こちらで詳しく解説しています(↓)
2016年上半期は為替レートがどんどん円高に傾いていき、為替差損を出すこととなってしまいました。
一方、今回の2017年上半期は昨年と比べても円安に傾いてきている状況です。その結果、為替差益が発生したんですね。
営業利益の外に出てくる為替差損・為替差益の影響を除いてしまえば、おそらく四半期純利益でも減益になったものと思われます。
為替の影響がなかった場合の業績は?
このように、営業利益、そして営業利益の外に出てきた円安の影響を除くと、2017年上半期の業績は「売上高は増えたけれども、営業利益と四半期純利益は減った」という結果が考えられます。
2017年の為替レートが円安に傾いている状況を踏まえて、トヨタは2017年度年間での業績予想を上方修正しました。当初は減益予想だったのが一転、増益予想に変更したのです。しかしこの業績予想について、トヨタの副社長は「為替の影響を除けば実力では減益」とおっしゃっています。
円安の効果によって、まるで事業が好調であるかのような錯覚が数字の中に生まれていますが、ひも解いてみると自動車を取り囲む厳しい市場実態が浮かび上がってきますね。