なぜ?円安が輸出企業に有利に影響する理由③トヨタに学ぶ資産が増えるナゾ

 

前回までの記事では、「なぜ円安になると、輸出企業の利益が増えるのか?」についてその前提1つ目の理由をお話しました。

 

今回は、2つ目の理由「円表示にすると資産・負債が増える!」について解説します。

 

このシリーズでは、「円安が決算書にどんな影響を与えるか?」について全4回で解説しています。

 

利益増のカラクリは「円安で膨らむ資産」にあり!

前回は、売上や仕入といった収益や費用に与える為替レートの影響のお話でした。

今回は、企業が持っている資産や負債に与える為替レートの影響のお話です✨

 

為替レートが円安に進むほど、外貨建ての資産や負債を円貨に直した金額は大きくなります。(この理由は、前回と同じです。)

これが利益アップにつながるのはなぜでしょうか?

 

簡単な例で理解しよう

外貨建ての預金(=外貨建ての資産)が100ドルある場合を例に、解説していきますね😊

 

預金口座に預け入れたときの為替レートは1ドル=100円だったため、預入時の外貨建て預金残高を円貨に直すと、

 100ドル × 100円/ドル = 10000円

となります。

 

年度末決算を迎え、この外貨建て預金を決算書に掲載することになりました。決算書に外貨建ての預金を表示する際は、年度末の為替レートを使って円貨に直します。

年度末の為替レートは1ドル=110円と円安に進んだため、決算書には、

 100ドル × 110円/ドル = 11000円

と表示されます。

 

つまり、預け入れたときから年度末(※預金を預け入れた年に迎えた年度末)にかけて、

 11000円(年度末)- 10000円(預入時)= 1000円

増えていることになります。

 

この増えた1000円は、決算書では「為替差益」という収益として表され、利益を押し上げる効果を持つんですね😊

決算書においては、「為替差益」は営業外収益(商売以外の平常時の活動から生まれた収益)の1項目として表示されます。

 

円高に進むとどうなる?

反対に、外貨建て預金を預け入れた時から為替レートが円高に進んだ場合はどうなるでしょうか?

 

先ほどの外貨建て預金の例で、年度末の為替レートが1ドル=90円と、円高に進んだケースを考えてみましょう。

この場合、決算書に掲載される外貨建て預金残高は、

 100ドル × 90円/ドル = 9000円

となります。

 

円貨に直すと、預入時から年度末までに

 9000円(年度末)- 10000円(預入時)= ▲1000円

減ったことになるのです。

この減った1000円は「為替差損」という損失になります。

 

実際の外貨預金残高は増えたり減ったりしていないのに、為替レートが動くことで、日本円に直した外貨預金残高が増減したように見えてしまうのです。

そこで生じた差額分は、決算書では損益の扱いになるんですね。

 

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【トヨタ自動車の例】「円安=為替差益UP」ではないワケ

トヨタの外貨建て資産には何がある?

預金以外にも外貨で管理されている資産や負債があります。

たとえば、海外の顧客に自動車を販売し、まだ受け取っていない販売代金。この未収となっている販売代金は、会計用語では「売掛金」と呼び、資産の扱いになります。

トヨタ自動車の場合は、さらに自動車ローンの金融サービスも行っているため、この事業での債権(お客様に貸し付けているお金)がかなり大きい割合を占めています。

 

為替差益の大きさは何で決まる?

たとえば、海外のお客様に自動車を販売した場合、販売した時点から年度末にかけて為替レートが円安に動いたら、そのお客様に対する債権からは「為替差益」が生じることになります(お客様への債権を日本円に直すと、販売時点から年度末にかけて増えているように見えるためです)。

もし、年度末を待たずに決済(未収となっていた販売代金が支払われる)された場合は、販売した時点から決済時点までの為替レートの動き「為替差益」「為替差損」の金額に反映されます。

 

ここまでお話ししたように、「為替差益」が大きくなるかどうかは、その年度内で為替レートがどのくらい円安に進むかにかかっています。

1ドル=120円という円安の年であっても、年度初めから年度終わりまでそのレートのまま安定していたら「為替差益」は出ないんですね。

 

たとえば2014年度は、1ドル=103円に始まり、1ドル=120円で年度末を迎えるという、為替レートが大きく円安に進んだ年でした。この年度のトヨタ自動車は、他の年と比べても「為替差益」の金額が大きく出ています✨

 

決算書にどのように影響しているのか

外貨建ての資産や負債を円貨に直すことにより生まれる損益は、決算書のどの部分に影響するのでしょうか?

トヨタ自動車の損益計算書を例に見てみましょう。★マークの部分が影響のある箇所です😊

 

トヨタ自動車 損益計算書(2017年4月~6月/一部要約)  単位:億円

 2017年4月~6月影響を受ける場所
 売上高70,476
 売上原価及び販管費64,733
 営業利益5,742
 その他の収益・費用1,050
       :
     為替差益227
       :
 税引前利益6,793
       :
※トヨタ自動車株式会社 2017年6月期 四半期報告書より

 

本業以外の収益力を表す「その他の収益・費用」の内訳の1つに「為替差益」の記載がありますね。

つまり、「その他の収益・費用」以下の各利益(「税引前利益」「純利益」など)に、「為替差益」や「為替差損」の影響があるということです。

一方、本業の収益力を表す「営業利益」には影響を与えません

(※トヨタ自動車は米国会計基準を採用していますが、日本基準を採用している企業の場合、「為替差益」は営業外収益に、「為替差損」は営業外費用に含められます。これらは、営業外収益や営業外費用を含めて計算される「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の金額に影響します。)

 

トヨタ自動車のように「為替差益」の金額が大きくなると、このように独立して損益計算書に金額が明示されます。

外貨建ての資産や負債を円貨に直すことで損益にどの位の影響があったのか、私たちのような外部の人間でも知ることができるんですね😊

 

3つ目の理由「円安になると商品魅力度がUPする」については、次の記事(↓)でお話しします🗝

なぜ?円安が輸出企業に有利に影響する理由④トヨタに学ぶ商品魅力度UPのワケ

2017.11.01

 

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まとめ

1.為替レートが円安に進むほど、外貨建ての資産を円貨に直した金額は大きくなる。円安に進んだことで、円貨に直した資産の残高が取引発生時から増えた分は「為替差益」という収益となる。

2.「為替差益」の大きさは、その年度内で為替レートがどのくらい円安に進むかに影響を受ける。

3.損益計算書では、「為替差益」は営業外収益に、「為替差損」は営業外費用に含められる。そして、営業外収益・営業外費用の下で計算される「経常利益」「税引前利益」「当期純利益」の金額に影響する。