なぜ?円安が輸出企業に有利に影響する理由②トヨタに学ぶ売上高へのメリット

 

前回の記事(↓)では、「なぜ円安になると、輸出企業の利益が増えるのか?」について、その前提と大きな3つの理由をご紹介しました。

なぜ?円安が輸出企業に有利に影響する理由①トヨタに学ぶ円高円安のカラクリ

2017年11月1日

今回からは、それぞれの理由について具体的にお話ししていきますね😊

 

今回は、1つ目の理由「円表示にすると売上高・仕入高が増える!」について具体的に解説していきます✨

 

このシリーズでは、「円安が決算書にどんな影響を与えるか?」について全4回で解説しています。

 

「決算書上では売上高が増えちゃう」メカニズムとは?

前回の記事でお話しした通り、為替レートが業績に影響を与えるのは「決算書が日本円で表示される」ことが大前提です。

この前提を念頭に置いて、見ていきましょう^^

 

海外との取引は外貨で行われることが多いですが、決算書にはこれらの取引額を日本円に直した上で表示します。

すると、外貨ベースでは海外への販売額や仕入額が毎年一定だとしても円安が進んでいる時は、それらを日本円に直した瞬間、過去の取引高よりも増えたように見えてしまうのです。

このカラクリを、簡単な例でご説明しますね✨

 

簡単な例で見てみよう

たとえば、毎年変わらず、20ドルで商品の仕入を行い、それを30ドルで販売している企業があったとします。

1ドル=100円の年は、

🔹仕入額:2000円(20ドル×100円/ドル)

🔹売上額:3000円(30ドル×100円/ドル)

🔹利益: 1000円(3000円-2000円)

となります。

 

円安が進み、次の年は1ドル=110円なりました。すると…

🔹仕入額:2200円(20ドル×110円/ドル)

🔹売上額:3300円(30ドル×110円/ドル)

🔹利益: 1100円(3300円-2200円)

外貨ベースでは前年と同じ仕入額・売上額であるにも関わらず、円貨に直すと両者とも取引額が増額したように見えます!

と同時に、前の年よりも利益額が100円増えていますね

 

外貨で仕入を行っていれば、円安になった分だけ仕入れコストも増えます。

ですが、「売上>コスト」という利益が出る構造になっていれば、円安になった分だけ利益も増えていきます。

(※販売と仕入を別の通貨で行っていれば、円に直した後に異なる動きをすることもありえます)

 

販売は海外向けが多く、仕入れは国内がメインという企業の場合は、特に円安による恩恵を受けやすいとも言えます😊

 

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【トヨタ自動車の例】円安で動いた金額とは?

トヨタが受けた円安の恩恵とは?

トヨタ自動車はアメリカへの輸出が多いですが、この分の売上は米ドルで集計されます。

2017年4月~6月は、前の年の同じ時期よりも為替レートが円安に動いており、トヨタ自動車もこの円安の恩恵を受けていました。

トヨタ自動車の公表によると、この時期の米ドルで行われた輸出入額を円貨に直すことによって、前年同時期と比べて営業利益が300億円も押し上げられたそうです✨

 

また、トヨタで行われる外貨取引は、国内からの輸出だけではありませんね。

海外の子会社が現地で行う販売や仕入も、やはり外貨が使われます。つまり、海外子会社の売上高や仕入高も、決算書を作る際には日本円に直され、円安の恩恵を受けるのです。

 

決算書のどこに影響しているのか

今回の1つ目の理由「円表示にすると売上高・仕入高が増える!」が決算書に影響を与える場所は、こちらのトヨタ自動車の損益計算書の★マークの部分です。

 

トヨタ自動車 損益計算書(2017年4月~6月/一部要約)  単位:億円

 2017年4月~6月影響を受ける場所
 売上高70,476
 売上原価及び販管費64,733
 営業利益5,742
 その他の収益・費用1,050
       :
     為替差益227
       :
 税引前利益6,793
       :
※トヨタ自動車株式会社 2017年6月期 四半期報告書より

 

 

損益計算書には、商品の販売額を表す「売上高」、仕入コストを表す「売上原価」、人件費やその他の経費を表す「販売費及び一般管理費」といった項目があります。

これらの項目に外貨建ての取引があれば、円安になるほど、円に直した金額が増えていきます

「売上高」「売上原価」「販売費及び一般管理費」が円安の影響を受けるということは、それらを差し引きした結果である「営業利益」、さらに本業以外の収益や費用を差し引きした「純利益」も円安の影響を受けることになります。

 

ちなみに、この1つ目の理由によって影響を受けた金額は、決算書を見ただけでは分かりません。

ですが、為替レートの動きによる影響額を知るために、内部で集計している企業は多いです。トヨタ自動車のように、決算説明資料に影響額を記載している企業もありますね😊

 

2つ目の理由については、次の記事(↓)でお話しします。

なぜ?円安が輸出企業に有利に影響する理由③トヨタに学ぶ資産が増えるナゾ

2017年11月1日

 

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まとめ

1.外貨ベースの販売額や仕入額は、円安になるほど、(決算書に表示するために)円貨に直した金額が増える。結果、販売額から仕入額を差し引いた利益も増える。

2.特に、販売は海外向けが多い一方で、仕入れは国内からがメインの企業は、この円安による恩恵を受けやすい。

3.トヨタ自動車は、海外(特に米国)向けの輸出が多く、かつ、海外現地法人も数多く抱えているために、外貨を使った取引が多い。それゆえ、為替レートが円安に進んだ年は、外貨で行った取引額を円貨に直すことによる利益押し上げ効果が大きい。

 

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