企業の経費の中でも重要なポジションを占めている人件費。
損益計算書では、人件費はどこに現れるのでしょうか?そして、人件費を引いた後の利益はどれでしょうか?
今回は、そんな人件費と利益の関係を見てみましょう😊
まず、人件費とは?
人件費の意味とは?
企業の中では様々な職種の人が業務にあたっており、それによって企業は活動することができます。
人件費とは、このような企業内で働く「人」に関する費用全体のことをいいます。
実は、損益計算書に「人件費」という項目があるわけではありません。人件費にはいくつもの種類があり、これらを総称して人件費と呼んでいるのです。
どんな種類がある?
人件費と呼ばれる項目には、以下のような費用があります。
● 従業員への給与・賞与
● 従業員への退職金
● 役員報酬
● 社会保険の会社負担分
この中で1番金額が大きくなるのは、やはり従業員への給与ですね。
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人件費が差し引かれた利益はどれ?
5種類ある利益。ポイントはどんな費用が差し引かれているか?
損益計算書には5種類の利益が載っています。
上から順に、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、当期純利益が表示されていますね。
利益は収益から費用を差し引くことで計算されますが、損益計算書の下の方に表示される利益ほど、差し引かれる費用は多くなります。
5つの利益を求める際に差し引かれる費用は、以下のようになります。
① 売上総利益 …商品の仕入費用・製造費用
② 営業利益 …①に加えて、販売活動にかかる費用、経理等の管理業務にかかる費用
③ 経常利益 …②に加えて、毎年のように発生しているが本業とは関係のない費用
④ 税引前利益 …③に加えて、臨時・巨額な費用 = 税金以外のすべての費用
⑤ 当期純利益 …この年に生じたすべての費用
5つの利益のしくみについては、こちらでより詳しく解説しています(↓)
では、このうち実際に人件費が引かれている利益はどれでしょうか?
業務によって人件費の振り分け先が変わる
一口に人件費といっても、その発生源である従業員は多様な業務を行っています。
そのため、同じ企業に勤める従業員であっても、担当する業務によって、その人に関する人件費がどんな費用に振り分けられるかが変わってくるのです。
たとえば、アイスクリームを作って販売する企業であれば、そこの従業員は、アイスクリームを製造する人、店頭でアイスクリームを売る人、本社で間接業務を行う人に分かれます。
この場合、アイスクリームを製造する人への給料は商品の製造費用に含まれます。
一方、アイスクリームを売る人への給料は販売活動にかかる費用に、本社で間接業務を行う人への給料は管理業務にかかる費用に含まれます。
実は、どの利益も人件費が引かれている
つまり、売上高から商品の製造費用を差し引いた利益である売上総利益は、アイスクリームを製造する人に関する人件費が差し引かれた後の利益ということになります。
また、売上総利益から販売活動・管理活動にかかる費用を差し引いた利益である営業利益は、アイスクリームを製造する人に加え、アイスクリームを売る人と間接業務を行う人に関する人件費が差し引かれた後の利益です。
そして、営業利益からさらにその他の費用を差し引いている経常利益・税引前利益・当期純利益についても、上記の人件費が差し引かれた後の利益ということになります。
つまり、このアイスクリームの製造・販売を行う企業では、5つの利益どれをとっても何らかの人件費が差し引かれているんですね。
業種によって異なる場合も
ここまで見てきたように、製造業を営む企業については5つの利益すべてにおいて人件費が引かれています。
しかし、業種によっては少し異なる場合があります。
IT企業の場合、サービスの内容によっては商品の製造に人件費がかからないことも考えられます。
たとえば、クックパッドの事業は運営しているレシピサイトに広告を掲載し、その広告主から料金を得るというものです。そのため、商品の仕入れ・製造コストを表す売上原価は殆ど発生しません。
つまり、売上総利益で引かれている人件費は、(あったとしても)かなり少ない金額なのです。
クックパッドの場合、ほとんどの人件費は営業利益を算定する段階で差し引かれます。(つまり、ほとんどの人件費が販売費及び一般管理費に含まれているのです)
クックパッドのこの特徴は粗利率にも表れていますね。詳しくはこちら(↓)
このように業種によってバラツキはありますが、少なくとも営業利益以下では人件費は差し引かれているのですね。
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まとめ
1.人件費とは、「人」に関して生ずる費用全体のことをいう。従業員への給与、賞与、退職金や役員報酬などが人件費にあたる。
2.商品の製造にかかった人件費は売上総利益を求める際に、その他の人件費は営業利益を求める際に差し引かれる。
3.業種によっては、売上総利益で引かれている人件費がほとんどない企業もある。