マイナス表示の繰越利益剰余金の意味とは?その解消方法もわかりやすく解説します。

 

繰越利益剰余金は、貸借対照表の純資産の部うち、利益剰余金というグループの中に表示されます。

実は、この繰越利益剰余金がマイナスの値となっている企業はめずらしくありません。

マイナス表示されている繰越利益剰余金には、どんな意味があるのでしょうか?2016年度に繰越利益剰余金がマイナスの値に変わった大塚家具の事例もまじえて見てみましょう!

 

マイナス表示される繰越利益剰余金の意味とは?

どんな時にマイナスになるの?

繰越利益剰余金は、企業が今まで稼いだ利益を蓄積させたものです。

黒字であれば繰越利益剰余金は増えていきますが、反対に赤字(マイナスの利益)を出すと繰越利益剰余金は減ってしまいます

そのため、赤字が続いたり、巨額の赤字を出してしまったりすると、繰越利益剰余金がマイナスの値になってしまうのです。

 

マイナス表示の繰越利益剰余金が意味することとは?

上記の通り、赤字を出すことが繰越利益剰余金をマイナス値の方へ導いていきます。

とは言っても、繰越利益剰余金は過去に稼いだ利益の蓄えがあるので、ちょっとやそっとの赤字でマイナスになることはありません。

繰越利益剰余金がマイナス表示されている企業は、それほどまでに大きな赤字を過去に出した経緯があり、かつ、それを回復させるほどの利益を未だ出せていないのです。

現時点でも、まだ業績が回復していない可能性も大きいです。

 

また、繰越利益剰余金がマイナスになっているような状態は、返済しなくてよい自前の資金を表す純資産が薄くなってしまっていることを表します。

資本金などが潤沢にあるうちは良いですが、このまま業績悪化に歯止めがかからなければ、借金に資金源を依存する割合が大きくなり、将来の資金繰りに支障をきたすリスクが高まってしまいます

 

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債務超過とは違う!

繰越利益剰余金のマイナス幅が純資産の他項目の残高をも上回ってしまうと、純資産全体がマイナスの残高になります。

この状態を債務超過と呼びます。

繰越利益剰余金がマイナス表示されているだけでは、必ずしも債務超過に陥っているとは限らないんですね。

 

別の見方をすると、債務超過とは資産の残高を負債の残高が上回っている状態です。

株主からの出資金や自らの稼ぎだけでは到底キャッシュが足りず、借金に依存している可能性が大いにあります。資金繰りにかなり余裕のない状態です。

 

債務超過の詳しい解説はこちら(↓)

債務超過の意味をすっきり理解!その原因とは?赤字との違いもわかりやすく解説します

2018年1月17日

 

 

繰越利益剰余金がマイナスのときの解消方法

1.利益剰余金のその他の項目から補充する方法

同じく利益剰余金グループである利益準備金や積立金を取り崩し、繰越利益剰余金に補充することができます。

 

2.資本金等から補充する方法

利益剰余金がマイナスとなってしまっている時に使える方法です。

具体的には、補充したい金額を資本金や資本準備金からその他資本剰余金に振り替えた後、同額をその他資本剰余金から繰越利益剰余金に振り替えます。

 

「1.利益剰余金のその他の項目から補充する方法」も「2.資本金等から補充する方法」も純資産内での振替であるため、純資産総額が変わるわけではありません

配当の原資となる繰越利益剰余金を回復させ、配当できる体制を整えることで、株主からの信頼をつなぐために取られる方法です。

 

3.利益を出す

ここまで2つの方法をご紹介しましたが、企業が利益を出せるような体質に戻らなければ、根本的な解決はできません。

他の項目から補充し続ければ、最終的にはそれらの残高が無くなってしまいますからね。

「1.利益剰余金のその他の項目から補充する方法」や「2.資本金等から補充する方法」はあくまでも一時的な対策なのです。

しっかりと業績を回復させ、黒字の利益を積み重ねていけば、やがて繰越利益剰余金のマイナスは解消されます😊

 

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大塚家具に見る!繰越利益剰余金がマイナス表示される事例

大塚家具の繰越利益剰余金が一気に減少

近年の大塚家具は顧客離れが進んでいます。販売方法の転換を試みるものの、いまだ成果を出せないまま、2016年度、2017年度と2年連続で赤字を出してしまいました。

その結果、繰越利益剰余金はこのような変化をたどっています。

大塚家具の繰越利益剰余金

 2015年12月末 …   4億円

   ↓

 2016年12月末 … -45億円

   ↓

 2017年12月末 … -76億円

2016年度に-45億円の赤字を出してしまったことで、繰越利益剰余金が一気にマイナスの値になってしまいました。

続く2017年度も-72億円の赤字を出したことで、マイナス幅が拡大しています。

 

以前の大塚家具の最終利益は3億~8億円程度(赤字に陥る前の5年間)でした。

たとえ、赤字転落前の業績レベルに回復したとしても、繰越利益剰余金のマイナスが解消されるには10年以上かかるものと考えられます。

それほどまでに、売上高の縮小は深刻であり、業績の下落幅が大きかったことが分かります。

 

それでも配当を維持できているワケは?

大塚家具は潤沢な別途積立金(利益剰余金グループの1つ)を有しています。

そして、2016年度、2017年度の2年にわたり、別途積立金の一部を繰越利益剰余金に振り替えています

これにより、大幅な赤字を出しても年間10億円以上の配当を続けることができているのです。

 

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まとめ

1.マイナス表示の繰越利益剰余金は、過去に大きな赤字を出していたり、赤字が続いていたことを表す。

2.また、現在も業績が回復していない可能性もあり、業績悪化に歯止めがかからなければ資金繰りに支障が出る恐れもある。

3.マイナスとなった繰越利益剰余金を回復させるには、黒字の利益を積み重ねていく方法の他に、純資産のその他の項目(資本金等や利益準備金など)から補充する方法がある。

 

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