株主が気にする要素の1つと言えば、配当金ではないでしょうか😊
今回は、企業の利益がどれだけ配当に充てられているかを測る配当性向について、解説していきます。
配当性向の計算式と意味を理解しよう
配当性向の意味と計算方法
企業が稼ぎ出した利益のうち、最終的に企業の手元に残ったものが当期純利益です。これが配当金の元手になります。
この当期純利益のうち、株主への配当に充てられた割合を計算したものが配当性向です。
計算式はこのようになります。
配当性向(%)= 配当金の支払い総額 ÷ 当期純利益 × 100
また、1株当たりの単位で計算することもできます。
配当性向(%)= 1株当たり配当額 ÷ 1株当たり当期純利益 × 100
どちらで計算しても、結果は同じになります😊
たとえば配当性向が100%であるなら、その年に稼いだ利益すべてを配当に回したことになります。
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配当性向が高いほど、配当額は大きい?
一見、配当性向が高いほどたくさんの配当金を受け取ることができるように感じますが、そうではありません😊
たとえば、昨年度の当期純利益が1000億円、配当性向が10%だった企業のケースを考えてみましょう。
この場合、昨年度の配当金の支払い総額は100億円(1000億円×10%)です。
一方、今年度は配当性向が20%にまで引き上げられたものの、当期純利益が500億円に低下してしまいました。
そのため、この年の配当金総額も昨年度と同じ100億円(500億円×20%)になるのです。
このように配当性向が2倍に引き上げられたにもかかわらず、支払われた配当金総額は変わりませんでした。これは、配当金の元となる当期純利益が縮小してしまったからです。
極端な例で言えば、いくら配当性向が高くても利益が0なら配当額も0になってしまうのです。
配当性向の考え方~配当性向が高い企業の方がいい?~
大手企業では、配当性向30%程度を目安にしているところがちらほら見受けられます。
このように配当方針を明確にすることで、市場からの信頼を高めようとしているのですね。
一層の株主数拡大を目指して配当性向を引き上げることもあります。
この配当性向、株主の目から見ると高い方が良いのでしょうか?
企業が稼いだ利益は、企業のオーナーである株主へ還元されると同時に、企業の事業運営や成長に向けた投資に使われたり、今後何かあったときに備えて蓄えられたりします。
配当性向を高くしすぎてしまう、つまり利益の多くを配当に回してしまうと、事業成長に向けた投資に充てる分が少なくなってしまいます。
また、不況や一時的な事業環境悪化を乗り切るための資金を貯めることができなくなってしまいます。
つまり、高すぎる配当性向は、企業の存続・成長を妨げてしまいかねないのです。
企業が長く繁栄していくためには、配当と企業が使う分とのバランスが大事です。
たとえ配当性向が一定でも、残った利益を成長投資に回し企業の業績が伸長することで、結果として将来の配当額が増え、株価が上がることも考えられます。
【事例】大塚家具の配当性向がマイナスである意味とは?
ここで、大塚家具の事例をもとに、さらに配当性向の理解を深めていきましょう。
顧客離れが進み、売上で苦戦している大塚家具では、どのような配当方針を掲げているのでしょうか?
100%を超えた配当性向の意味とは?
近年の大塚家具の配当性向は、このようにかなり特徴的な数値を示していることが分かります。
大塚家具の配当性向の推移
2013年度 … 86.6%
↓
2015年度 … 412.8%
↓
2017年度 … -9.7%
※1株当たりの単位で計算しています。
2013年度の時点で、すでに相当高い水準ですね。その後も配当性向の上昇は留まることを知らず、2015年度には100%をはるかに上回る数値を記録しています。
この理由は、利益の縮小局面にあっても配当額を減らさなかったことです。大塚家具は「継続的かつ安定的な配当」を重視しているんですね。
2015年度は、当期純利益の4倍以上にあたる配当金を支払ったことが分かります。
配当性向がマイナスになる意味とは?
2017年度の配当性向(-9.7%)をみると、マイナスの値になっていることが分かります。
これは、2017年度の最終損益が赤字(当期純損失)であったためです。
配当の元手である利益がマイナスになっても、過去の利益の蓄積分を取り崩すことで配当を継続しているのです。
現在の大塚家具は配当性向を重視した配当を行っているものの、株主からの信頼をつなぐため安定配当の考え方も取り入れています。
そのため、大きな最終損失を被った2017年度においても配当が続けられているのですね。
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まとめ
1.配当性向とは、当期純利益のうち株主への配当に充てられた割合を計算したものである。
2.配当性向は、配当金の支払い総額 ÷ 当期純利益 × 100 によって計算される。
3.企業が長く事業を続け、成長していくためには、利益のうち配当として支払う分と企業が使うために残しておく分とのバランスが大事である。株主にとっても、長い目で見れば「配当性向が高ければ高いほど良い」わけではない。