債務超過の意味をすっきり理解!その原因とは?赤字との違いもわかりやすく解説します

 

東芝やシャープも陥った債務超過。その意味を1からひも解いていきましょう😊

 

債務超過とはどんな状態?

債務超過とは、貸借対照表が「ある状態」になること

債務超過とは、貸借対照表の「ある状態」を表した言葉です。

 

貸借対照表は、資産、負債、純資産という3つの大きな要素で構成されています。どんな企業でも、この3つは必ず以下の関係が保たれています。

 資産 = 負債 + 純資産

 

多くの企業は、資産よりも負債の方が小さいです。ところが、債務超過の企業の場合は、資産よりも負債の方が大きいのです(つまり、「債務」が資産を「超過」しているのですね)。

この場合、「資産 = 負債 + 純資産」という関係を保つために、純資産がマイナスになります。

貸借対照表のこのような状態を債務超過と呼ぶんですね。

 

決算書から債務超過を見分ける方法

債務超過は、「債務」が資産を「超過」している状態を表します。

つまり、貸借対照表の純資産の部を見れば、一目でその企業が債務超過かどうかが分かるのです。

純資産の部の合計がマイナスの金額になっていれば、債務超過です。

 

債務超過になった東芝

会計不正の発覚を機に、東芝は経営の悪化ぶりがさらされることとなりました。そして2017年3月期には、とうとう債務超過に陥ってしまったのです。

この時の東芝の貸借対照表を見てみると、

 ● 資産合計 4兆2695億円

 ● 負債合計 4兆5452億円

 ● 資本合計  -2757億円

※ 東芝はアメリカの会計基準を採用しているため、「純資産」ではなく「資本」という言葉を用いています。

前年まで6722億円もあった資本合計が、たった1年間でマイナスの値にまで落ち込みました。この理由については、後ほどお話しします。

 

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債務超過は何を意味するの?

債務超過になったからといって、ただちに倒産するというわけではありません。お金が無くならない限り、会社は事業を続けることができます。

しかし、その肝心のお金が尽きる可能性が極めて高まっていることを債務超過は示唆しているのです。

 

「資産 < 負債」が意味すること

債務超過とは、負債が資産よりも大きい状態のことです。つまり、すべての資産をお金に換えても、負債の支払いをまかなうことができない状態なのです。

別の見方をすると、事業に使っているすべてのお金は「返済や支払い等により、将来企業から出ていく資金(借金など)」によってまかなわれているとも言えます。かなり資金繰りに余裕のない状態です。

債務超過に陥ったのち、自転車操業で何とか日々の支払いを乗りきっている企業もあります。しかし、ふとしたつまずきで支払資金が足りなくなる危険性と常に隣り合わせなのです。もし支払いに充てる資金が無くなってしまったら…いよいよ倒産です。

 

債務超過が環境を変えてしまう

実際、債務超過に陥るほど財政状態の悪い企業に銀行はお金を貸したがりませんし、他の企業も取引を避けようとするでしょう。さらに、債務超過を1年以内に解消できなければ、上場廃止しなくてはなりません。

ただでさえ手元のお金が足りない状況なのに、銀行や投資家から資金を集めることが難しい上に、事業を続けるための取引もしにくい環境になってしまうのです。

 

つまり債務超過とは、倒産ではないが、倒産の危険性が極めて高まっている状態を意味するのです。

 

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債務超過の原因は?赤字と何が違うの?

債務超過=赤字、ではありません😊ですが、赤字が続くといずれは債務超過に陥ってしまいます

その仕組みをご説明しますね。

 

貸借対照表の純資産は、主に株主からの出資金(資本金と資本剰余金)と企業が今までに稼いだ利益の蓄積利益剰余金)から作られています。企業が稼いだ利益は利益剰余金に足し込まれるため、利益を出している企業の純資産は増えていきます。

しかし、赤字(利益がマイナスの金額)になると、そのマイナスの利益が利益剰余金に足し込まれるため、純資産が減ります。さらに赤字が続くと、利益剰余金はどんどん減ってマイナスの金額になり、これが悪化すると株主からの出資金すら飲み込んで、とうとう純資産自体がマイナスの金額になってしまうのです。

 

このように、根本から経営が悪化し赤字を繰り返してしまうと、やがて債務超過に陥ってしまうのです。

 

 

債務超過を解消する方法とは?

債務超過を解消するためには、マイナスの金額になった純資産をプラスの金額に戻してあげる必要があります。

そのためには、純資産の構成要素、つまり株主からの出資金今までに稼いだ利益の蓄積を増やさなくてはなりません。

実際に債務超過を解消した企業の例を見てみましょう。

 

新たな親会社を受け入れたシャープの例

シャープは主力の液晶パネル事業が不振に陥ったことで赤字が常態化し、2016年3月期に債務超過になりました。

そこで台湾の鴻海精密工業の子会社になり、鴻海の出資を受け入れたのです。これによって資本金と資本剰余金は大きく増加しました。2016年3月期には-312億円だった純資産が、1年後には3078億円にまで回復したのです。

 

2つの経路で債務超過解消を目指した東芝の例

数々の事業の業績不振を隠すために、東芝は会計不正に走ってしまいました。しかし、その事実が明るみに出たことで、真実の業績を公表しなくてはならなくなったのです。さらに抜本的改革を行うための費用が上乗せされ、東芝は2015年3月期から3年連続で赤字となってしまいました。

その3年目の赤字の年に、東芝は債務超過に陥ったのです。

1年後の2018年3月末までに債務超過を解消できないと、上場廃止に追い込まれてしまいます。

 

まずは利益剰余金を増やす作戦

そこで東芝が目を付けたのは、東芝の稼ぎ頭であるメモリ事業です。メモリ事業を他社に売れば、多額の利益を得ることができます

その利益が利益剰余金(今までに稼いだ利益の蓄積)に足し込まれれば、純資産がプラスに転換するという算段でした。

しかし、メモリ事業の売却先に目途を付けたものの、2018年3月末までに売却手続きが完了するのか微妙な状況になってしまったのです。完了しなければ、2018年3月末時点で債務超過が解消されず、上場廃止となる可能性があります。

 

今度は資本金を増やす作戦

そこで、今度は資本金・資本剰余金(株主からの出資金)を増やすことにしたのです。

海外の数十にも上るファンドに増資を引き受けてもらい、6000億円もの出資金を得ることに成功しました。これによって2018年3月末には債務超過が解消できる見込みとなったのです。

利益率の高いメモリ事業を手放した後は、残った事業で確実に収益を得る体制を築いていかなくてはなりません。債務超過を解消したとはいえ、決して気を緩めることはできない状況なのです。

 

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まとめ

債務超過とは

資産 < 負債 = 純資産がマイナスの金額

1.債務超過は即倒産を意味するわけではないが、資金繰りに窮しており、極めて倒産の可能性が高まっている状態である。

2.赤字が続くことで、利益剰余金が大きくマイナスになり、資本金や資本剰余金の金額さえも飲み込んでしまうと債務超過となる。

3.債務超過を解消するには、出資を募ったり、利益を黒字化するなどの方法がある。

 

なぜ赤字が続いても倒産しないの?ジーンズメイトにみる赤字経営のからくり!

2017年12月28日

 

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