負債の増加・減少の意味とは?V字回復リンガーハットの負債の変化から学ぼう

 

貸借対照表の3大要素の1つ、負債。負債を読み解くことで、どんな企業の状態がわかるのでしょうか?

リンガーハットの衰退期と成長期を比較しながら、解説していきます!

負債は「どんな性質を持つか?」「どんな種類があるか?」については、JR東日本を例にこちらで解説しています(↓)

負債にはどんな種類があるの?JR東日本の負債を見てみよう!

2018年1月5日

 

2009年と2017年の負債の変化とは?

2009年2月期のリンガーハットは客数が伸び悩んでおり、大量の閉店を進めたことから-24億円という大赤字を出してしまいました。

その後、ちゃんぽんの野菜を全て国産に切り替えるなどの工夫が功を奏し、リンガーハットは再び成長軌道に乗ります

大赤字を出した直後の2009年11月末時点、そして毎期増収を続けている2017年11月末時点で比べると、リンガーハットの負債はどのように変化しているでしょうか?

 

リンガーハットの負債の内容

(単位:億円)

    2009年11月30日  2017年11月30日
流動負債買掛債務     6     10
借金      75     19
未払費用     9     13
その他     9     19
流動負債合計      99     61
固定負債長期未払金     4      6
借金     27     22
退職給付に係る負債     6     11
資産除去債務     0     12
その他     4      9
固定負債合計      42     60
負債合計     141     121

(※買掛債権=買掛金+支払手形、借金=借入金、社債)

こちらはリンガーハットの貸借対照表をもとに、一部金額を取りまとめたものです。

目立った変化といえば、流動負債の大半を占めていた借金が激減したことではないでしょうか。にも関わらず、固定負債の借金は大きく減っていませんね。

その他、買掛債権が増えた、資産除去債務が登場した、などの変化があります。

これらの負債の変化が何を示しているのか、見ていきましょう!

 

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なぜ、短期の借金は減っているのに、長期の借金が変わらないの?

短期の借金が減った理由

2009年11月末時点では、流動負債の大半を借金が占めています。

この理由は、リンガーハットの稼ぐ力が弱まっていたことです。この頃のリンガーハットは不景気の波をもろにかぶったこともあり、客数が伸び悩んでいました。

その結果、本業から稼いだお金で、新規出店などの投資にかかるお金をまかないきれず、足りない資金を借金に頼るようになっていたのです。(これは、キャッシュ・フロー計算書で言う「営業活動によるキャッシュフロー」が「投資活動によるキャッシュフロー」を下回っている状態です)

その短期の借金が8年の月日を経て、4分の1にまで圧縮されました。リンガーハットの業績が上向いたことで、本業から得られるお金が増え、順調に借金の返済が進んだためです。

 

長期の借金があまり減っていない理由

流動負債の借金(短期の借金)の減り具合と比べると、固定負債の借金(長期の借金)の減り方は力強さに欠ける印象です。

その理由は、リンガーハットの積極的な出店施策です。

今のリンガーハットは国内の出店地域を広げるだけではなく、海外にも進出しています。556店舗だった2009年11月末の出店数と比べると、2017年11月末は763店舗にまで拡大しているのです。

稼ぐ力が戻っているとはいえ、拡大路線を走るリンガーハットにとって、今でもある程度のまとまった投資資金は必要なのだと思われます。

そして、2009年11月の頃と比べると、短期の借金ではなく長期の借金の割合が増えていますね。これは、リンガーハットの財務状況が改善しているためです。

銀行は貸したお金を踏み倒されることを恐れるので、財務状況の悪い企業に対しては長期間の貸付をしてくれなくなります。稼ぐ力が増し、財務状況が改善したリンガーハットには、銀行も安心して長期の貸付をしてくれるようになったのです。

 

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業績改善しても増えている負債のワケは?

事業の成長と共に増えた買掛金

業績が改善しているにも関わらず、増えている負債もあります。それは、買掛債権(買掛金・支払手形)です。

買掛金のように、商売のサイクルから生み出される資産や負債は、事業の拡大と共に増える傾向にあります。

店舗数が増え、販売する商品が増えれば増えるほど、リンガーハットが仕入れる金額も増えていくでしょう。同じように売掛金、棚卸資産(在庫)といった資産も、会社の成長と共に増えることが多いです。

 

従業員減でも退職給付に係る負債は増えている

退職給付に係る負債は、従業員に将来支払う退職金を引き当てたものです(以前は、退職給付引当金と呼ばれていました)。

こちらの金額は増えている一方で、従業員数はあまり変わっていません(むしろ減っています)。もしかしたら、業績が大きく改善したことで、退職金の水準も上がっているのかもしれませんね。

 

資産除去債務が登場

また、以前は項目自体無かった資産除去債務が、2017年11月の決算書に登場しています。資産除去債務に関する会計基準が導入されたことから、対応する負債を計上しなくてはならなくなったためです。他の企業にも、同じ現象が見られますね。

資産除去債務については、こちらで分かりやすく解説しています(↓)

【超初心者向け】資産除去債務とは?具体例でわかりやすく解説!

2018年1月10日

 

 

自己資本比率にも変化が表れた

ここまで負債の内訳を見てきましたが、最後にリンガーハット全体から見た負債の位置付けがどう変わっているかを見てみましょう😊

使うのは自己資本比率です。(自己資本比率 = 自己資本 ÷(自己資本+負債))

こちらの指標で、自己資本(返済不要な資金)と負債(返済が必要な資金)のバランスを見ていきます。この値が大きいほど、返済期限に追われることなく使える資金の比率が大きい、つまり事業を続ける上での安定性が高いと言えます。

リンガーハットの自己資本比率

 ● 2009年11月末 : 35.6%

 ● 2017年11月末 : 61.6%

大幅なジャンプアップを見せています。自己資本比率の目安である40%を切っていた2009年から、優良企業の目安である60%を超えるところまで伸びていますね

負債が大きく減っていないにも関わらずここまでの変化が表れたのは、株主からの出資を増強したことと利益を積み重ねてきたことで自己資本に厚みが増したためです。

着実に業績を改善していったことで、財務基盤の安定性を獲得したのです。

 

自己資本比率の詳しい解説はこちら(↓)

【はじめての自己資本比率】計算方法や目安とは?マイナス・高い・低い時の意味もわかりやすく解説!

2017年12月7日

 

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まとめ

1.業績が改善したからと言って、全ての負債が減るわけではない。

2.利益を上げられるようになったことで、短期の借金は大きく減った。一方で、積極的な出店を進めていることから、長期の借金はそれほど大きくは減っていない。

3.事業を拡大していることに伴い、仕入れの債務を表す買掛金は増えている。その他、新しい会計基準の導入により資産除去債務が登場した。

4.着実に利益を積み重ね、株主からの出資も募ったことから自己資本が大きく増えた。リンガーハットの資金調達源泉は、自己資本が負債を逆転した。

 

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2018年1月11日

 

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