負債にはどんな種類があるの?JR東日本の負債を見てみよう!

 

負債=借金、と説明されることが多いですが、負債には借金以外にもいろいろな種類があります

健全な企業であれば、借金以外の割合の方が大きいでしょう。

今回は、「負債にはどんな種類があるか?」についてJR東日本を例にご紹介します😊

 

その前に!負債の性質を押さえておこう

まず、頭に入れておいてほしいのは、負債に共通する性質です。

それは、企業にとっての「将来の支出を表す」ということ。(※貸倒引当金のような例外はあります。)

ここに、負債の代表例をあげてみます。

● 買掛金 = 将来の仕入代金の支払い

● 借入金 = 将来の借金の返済

● 賞与引当金 = 従業員への将来の賞与支給

このように、早かれ遅かれ、また相手先が中であれ外であれ、企業から現預金が出ていくことを表しているのです。

 

この負債の性質を頭に入れておくと、グッと理解しやすくなりますよ😊

 

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JR東日本はどんな負債があるの?

JR東日本の負債は5つに分けられる

では、JR東日本の負債にはどんなものがあるのか、見てみましょう。

2017年3月期の貸借対照表をもとに、負債の項目を大きい順に並べ替え、かつ、項目の名称をわかりやすく直したものがこちらです。(実際の項目名は後ほどご紹介します。)

   2017/3/31 残高(億円)
流動負債
未払金  4,591
借金  2,767
運賃の前受け分   992
税金の未払い分   751
賞与の引当金   731
仕入債務   468
その他  3,071
流動負債合計  13,373
固定負債
借金  26,096
退職金の引当金  6,413
新幹線購入の未払い分  3,366
新幹線改修の引当金   240
その他  2,866
固定負債合計  38,983
負債合計  52,357

※金額の小さいものは、「その他」にまとめています。

これらの負債をさらに性質ごとにまとめると、以下の5つに要約されます。(金額の大きい順。残りはその他。)

 ● 借金      …55%(負債全体に占める割合。以下同じ)

 ● 未払金     …17%

 ● 引当金     …15%

 ● 収益の前受金  … 2%

 ● 仕入債務    … 1%

いずれも、鉄道会社に限らず多くの企業の決算書で見られる項目です。その詳しい内容を見ていきましょう!

 

最も大きい負債は借金

もっとも金額が大きいのは借金です。

先ほどの負債の表を見てみると、固定負債の借金が圧倒的に大きいですね。JR東日本の借金は、返済まで1年超あるものが殆どということが分かります。

負債全体の55%ほどを借金が占めているために、多額のお金が利息の支払いに持っていかれている状況です。

JR東日本は設備投資に大きな金額を使う会社です。現在計画されているものでは、たとえば渋谷駅改良工事686億円、京浜東北・根岸線ホームドア設置工事330億円、横浜駅西口ビル建設工事717億円などがありますね(金額は、工事に要する予定金額)。

毎年支払う金額も莫大であるため、3兆円近くの売上を稼ぎ出すJR東日本であっても、一度に借金を減らすのは難しいのです。

 

未払金では新幹線が存在感を示す

未払金とは、固定資産や有価証券などを購入した際の未払い分のことです。

JR東日本の未払金には、まさに鉄道会社の特徴を表す未払金が載っていますね。それは、新幹線を購入した際の未払金です。貸借対照表には「鉄道施設購入長期未払金」という名前で表示されています。

購入した当初(今から25年以上前のことです)は3兆円以上あった「鉄道施設購入長期未払金」も、残り3500億円を切るところまで来ました。

 

「鉄道施設購入長期未払金」は利息を支払わなくてはならないので、扱いとしては有利子負債ですね。

有利子負債については、キリンを例にこちらで説明しています(↓)

【はじめての有利子負債】キリンの決算書でマスターしよう!

2017年10月27日

 

いろんな性格をもつ引当金

JR東日本は5種類の引当金を計上しています。

引当金とは、

★ 将来において、とある支出が発生する可能性が高いこと

★ その支出の原因がすでに生じていること

このような場合に、計上しなくてはならない負債のことです。まだ確定はしていないものの、将来高い確率で支出(費用)が発生することを表しています。

引当金の詳しい解説はこちら(↓)

【初心者必見】「引当金とは?」をわかりやすく解説!意味・要件・種類などを簡単に理解しよう

2017年11月10日

 

まず、どんな企業でも計上しているであろう「賞与引当金」「退職給付に係る負債(退職金に関する引当金)」、そして鉄道会社特有の「新幹線鉄道大規模改修引当金」「一部線区移管引当金」、最後に2011年の東日本大震災に伴う復旧費用の支出に備えた「災害損失引当金」です。

いずれも、高い確率で将来支出があることを見込んで計上されたものです。流動負債に表示されている「賞与引当金」と「災害損失引当金」は、1年以内という近い将来での支出が見込まれています。

 

「賞与引当金」「退職給付に係る負債(退職金に関する引当金)」を一言で表すと、将来従業員へ支給する賞与や退職金のうち現時点で判明している金額のことです。

「新幹線鉄道大規模改修引当金」とは、2031年から行う東北新幹線と上越新幹線の改修費用を積み立てたものです。これから毎年、240億円ずつ積み立てていく計画のようです。

 

この他、運賃にまつわる負債も

この他、運賃の前受け金や仕入債務などがJR東日本の負債に登場しています。

乗車する何日も前から新幹線の切符を購入することはよくありますよね。この場合、JR東日本にとっては「前受運賃」という負債になっているのです。まだ、サービス(お客さんを電車に乗せる)を提供していないにも関わらず、お客さんからお金を預かっているためです。

 

 

JR東日本の決算書ではどんな表記がされているの?

ここまで、JR東日本の主な負債の項目を見てきました。

実際の決算書(貸借対照表)ではどんな名称が使用されているか、もう一度おさらいしてみましょう😊

 内容決算書での表記 2017/3/31 残高(億円)
流動負債
未払金  4,591
借金短期借入金、1年内償還予定の社債  2,767
運賃の前受け分前受運賃   992
税金の未払い分未払消費税等、未払法人税等   751
賞与の引当金賞与引当金   731
仕入債務買掛金、支払手形   468
その他  3,071
流動負債合計  13,373
固定負債
借金社債、長期借入金  26,096
退職金の引当金退職給付に係る負債  6,413
新幹線購入の未払い分鉄道施設購入長期未払金  3,366
新幹線改修の引当金新幹線鉄道大規模改修引当金   240
その他  2,866
固定負債合計  38,983
負債合計  52,357

一部の引当金はJR東日本の特徴が現れていますが、ここに表示されている負債の多くは他の企業にも共通するものです。それぞれの項目の構成割合がどれくらいかによって、企業の財務状況の特色が出てきますね。

 

JR東日本の場合は、有利子負債(借入金、社債、鉄道施設購入長期未払金)の割合が大きいです。この負の影響を受けて、せっかく稼いだ利益が利息の支払いに持っていかれてしまっています(支払利息が営業利益の15%を占める)

そのため、JR東日本はグループ全体で一括して余裕資金の運用を行うなどして、少しでも有利子負債を減らそうと努めているのです。また、長期金利で社債を発行することで金利上昇を抑えるなどの工夫もしていますね。

 

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まとめ

1.JR東日本の負債は大きく分けて、借金、未払金、引当金、収益の前受け分、仕入債務の5つである。これらは、多くの企業に共通して見られる負債である。

2.JR東日本は有利子負債の割合が大きく、営業利益の15%が利息の支払いに持っていかれてしまっている。

 

【初心者向け】ベネッセの「5つの利益」を読む!損益計算書の見方を学ぼう!

2017年12月22日

 

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