固定資産の減損はどんな時に行われているのでしょうか?減損の主なパターンを、実際に減損が発生した例を添えてご紹介していきます😊
減損の意味ついては、こちらで解説しています(↓)
利益が出ない店舗の減損:セブンイレブンの例
一見業績が好調に見える企業でも、採算の取れない店舗があることにより、毎年のように減損損失が発生していたりします。
たとえば、セブンイレブン。企業全体で見ると毎期利益を増やし続けていますが、全国各地に広がる店舗の中にはやはり収益性の悪いものもあります。そんな不採算店舗の建物や土地から減損損失が発生するのです。
セブンイレブンの損益計算書では、もはや「減損損失」は定番項目となっています。店舗が多いからこそ、減損が発生する確率も高いのかもしれませんね。
ブランドイメージが悪化するなどして企業全体が不調に陥ってしまっている場合は、減損対象となる店舗も多くなります。そのようなケースでは、やはり減損の金額も大きくなりがちです。
客足が遠ざかり売上が低迷している大塚家具、賞味期限切れ問題を発端に一時は大赤字を出したマクドナルドなども、採算の取れない店舗群から大きな減損損失を出しました。ただでさえ利益が下降している所に減損損失が発生し、一層業績の見栄えが悪くなったのです。
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成績不調な事業の減損:シャープの例
先ほどは個別の店舗に対する減損の例をご紹介しましたが、こちらは事業全体が減損の対象となるパターンです。
たとえば、シャープの液晶事業の減損がこのパターンに当てはまります。
かつては「液晶のシャープ」と呼ばれていたほど、シャープの液晶製品は大きなシェアを獲得していました。しかし、価格競争に巻き込まれやすいという性質が災いし、近年の液晶事業は、利益率がとっても低いか赤字となる成績が続いていたのです。
シャープの液晶事業の固定資産と言えば、大金がつぎ込まれた亀山工場です。液晶事業の収益性が悪化したことで、「亀山工場等への投資額の元が取れない」と判断されるに至りました。そこで、2015年3月期に亀山工場等の建物や機械に対して減損が実施され、777億円という巨額の減損損失が生じたのです。
このパターンの他の例としては、近年はJR九州の鉄道事業やニコンの半導体装置事業の減損などがあります。
事業を廃止することによる減損:ミクシィの例
事業のサービスを廃止する場合、他の用途に転用できない限り、そこで使われていた固定資産が今後使われることはないでしょう。
つまり、収益を生まない存在になるのです。そうなると、固定資産への投資資金を回収することができなくなります。
たとえば、「チケットキャンプ」のサービス終了を発表したミクシィ。現時点(2018年1月15日)で決算書としては公表されていませんが、「チケットキャンプ」のサービスを終了するとともに、これに伴う減損損失が1億円生ずる予定であることが発表されました。
「チケットキャンプ」は、個人がコンサート等のチケットを出品・購入できるサービスです。サービスが廃止されたのは、商標権違反等により捜査が入っていた影響と考えられます。
この他、近年ではエイベックスが動画配信サービス「ゲオチャンネル」を終了したことにより、関連するソフトウェア等(無形固定資産)の減損処理を実施した例(2017年3月期)があります。「ゲオチャンネル」は収益性の低下に苦しんでいたため、サービスの終了という選択がとられたのです。
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のれんの減損:東芝の例
減損の中で最もニュースを騒がせてるものといえば、のれんの減損ではないでしょうか?
近年ますますM&Aが活発になっていることから、のれんの減損がテーマになりやすいですね。減損した際の金額が巨額になりやすいことも、注目される一つの要因でしょう。
最近では、会計不正が公になってから世間の注目を浴びていた東芝の例があります。2017年3月期に、7000億円超もの巨大なのれん減損損失が発生しました。
この減損損失が2017年3月期の大赤字を生み出し、東芝は債務超過に陥ってしまったのです。
ここで、簡単にのれんについてご説明します😊
企業を買収する際は、対価としてその企業の簿価を上回る金額を支払うことが多いです。買収価格が簿価を上回った差額がのれんと呼ばれ、固定資産に含められます。
のれんは、買収された企業のブランドイメージや信用力といった目に見えない価値を表しています。
しかし、買収された企業の業績が悪化するなどして、当初想定していた価値(=買収価格)を大きく下回ると、のれんの価値を切り下げる処理を行わなくてはならなくなります。これが、のれんの減損なのです。
東芝グループには海外の原子力事業を担う子会社があるのですが、その子会社が買収した企業ののれんについて減損が行われました。どうやらこの買収された企業が、想定をはるかに超えた業績の悪化ぶりを見せたようなのです。
この他、近年では、日本郵政がオーストラリア物流子会社ののれんについて4000億円もの減損損失を出した例(2017年3月期)があります。
遊休資産の減損:ジャパンディスプレイの例
活用されずに放置されている固定資産も、減損の対象となります。当初は利益に貢献すると見込まれて購入された固定資産も、活用されずにキャッシュを生まないとなればその価値を切り下げる必要が出てくるのです。
2017年度のジャパンディスプレイは、構造改革の一環として遊休資産の減損処理を進めています。減損損失を出してしまうことによって、少しでも今後の固定費を減らそうとしているのですね。
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まとめ
以上、固定資産の減損について、実際によく表れるパターンをまとめてみました!
いずれも、購入時(買収時)に見込んでいたほどキャッシュを生まなくなったことが減損の原因です。当初想定していたほどの価値が無くなったことを、固定資産の金額を切り下げ、損失を出すことで決算書上に表現しているんですね。
減損のニュースを見かけたら、その背景にも注目して見ると、より決算書の理解も深まりますよ😊