繰延税金資産を理解するために、5ステップに分けて記事をお届けしています🎵
🌷 今回はステップ3です🌷
🔸 ステップ1:繰延税金資産を理解するための「基本の考え方」を身に付ける
【5stepで学ぶ繰延税金資産①】繰延税金資産を理解するための基本の考え方を押さえよう♪ポイントは収益と費用のタイミング!
🔸 ステップ2:繰延税金資産の意味を知る
【5stepで学ぶ繰延税金資産②】繰延税金資産とは?例を見ながらわかりやすく解説します!
🔸 ステップ3:繰延税金資産と法人税等調整額の関係を押さえる
【5stepで学ぶ繰延税金資産③】法人税等調整額と繰延税金資産の関係とは?法人税等調整額が増加・減少する理由やマイナス表示の意味はここにある!
🔸 ステップ4:繰延税金資産を決算書に載せられる条件を学ぼう
【5stepで学ぶ繰延税金資産④】繰延税金資産の回収可能性って何?スケジューリングの意味とは?繰延税金資産に上限がある理由を解説!
🔸 ステップ5:繰延税金資産取り崩しの裏にある意味を知る
今回は、繰延税金資産と法人税等調整額との関係について迫っていきます😊✨
切っても切り離せないこの2つの関係…💗
繰延税金資産とからめながら、法人税等調整額の意味を深堀りしていきましょう!
繰延税金資産が増えると、法人税等調整額は○○する
前回の記事でもお話しした通り、
繰延税金資産は資産の1つです💎✨つまり、貸借対照表(BS)に登場します。
それに対して、法人税等調整額は費用の1つです。
そのため、損益計算書(PL)の中に見つけることができます。
このように(↓)、「法人税等合計」の1項目として表示されていますね(損益計算書の下辺り)。
法人税等調整額の表示例:ピジョンの2018年1月期 損益計算書(一部抜粋)
: | : |
税金等調整前当期純利益 | 20,916 |
法人税、住民税及び事業税 | 5,931 |
法人税等調整額 | 225 |
法人税等合計 | 6,157 |
当期純利益 | 14,759 |
2つの動きは連動している!
実は、両者にはこんな関係があります😊
🔸 繰延税金資産が増えると、法人税等調整額が減る
🔸 繰延税金資産が減ると、法人税等調整額が増える
繰延税金資産が大きく増えることで、法人税等調整額がマイナスに転じる(=利益側に振れる)こともあります。
スポンサーリンク
繰延税金資産と法人税等調整額が連動しているワケ
では、まずは繰延税金資産が増えることの意味からおさらいしていきましょう😊
繰延税金資産が増えるとき、何が起こっている?
繰延税金資産は、将来の税金を減らす効果を表す資産でしたね✨
つまり、繰延税金資産の登場は、将来の税金が減らされることを意味するのです。
同時に!
その繰延税金資産が登場した年の税金が増えてしまったことも表します。
言いかえると、その年は、
実際に支払うことになる税額(損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」という科目に表れます)が、決算書の利益から計算される税額よりも大きくなってしまっているんですね😲
文章だけでは分かりづらいので、ごく簡単な例で見てみましょう😊
こちらは、繰延税金資産が登場した年の損益計算書です✨
: | : | ||
① | 税引前利益 | 30万円 | 税金を差し引く前の最終利益 |
② | 法人税、住民税及び事業税 | 15万円 | この年の税額 |
①-② | 当期純利益 | 15万円 | 税金を差し引いた後の最終利益 |
税率は30%とします。
税金を差し引く前の利益(税引前利益)30万円に30%をかけると、9万円ですね。
…が、実際の税額(法人税、住民税及び事業税)15万円とは一致しません!😲
これが、繰延税金資産が増えた年に起こる、実際の税額が決算書の利益から計算される税額よりも大きくなってしまっている状態です。
(★この理由は、決算書に織り込まれている費用が税金計算では除かれていることです。この辺りの詳しい解説はこちらをご覧ください ↓↓ )
このチグハグの解消に法人税等調整額が一役買う!
くま美さんのように、決算書に表示される税額(実際に払う税額)が、決算書の利益から計算される税額よりも大きい状態にモヤモヤする方は少なくありません。
…それならば、
「決算書に表示される税額を、決算書の利益から計算される税額に合わせてしまったらいいんじゃない!?」
という発想から生まれたのが法人税等調整額です✨
先ほどの損益計算書の例に、法人税等調整額を加えるとこうなります😊
: | : | ||
① | 税引前利益 | 30万円 | 税金を差し引く前の最終利益 |
法人税、住民税及び事業税 | 15万円 | A:この年の実際の税額 | |
法人税等調整額 | △6万円 | B:Aの金額を調整する | |
② | 法人税等合計 | 9万円 | A + B |
①-② | 当期純利益 | 15万円 | 税金を差し引いた後の最終利益 |
実際の税額「法人税、住民税及び事業税」15万円に「法人税等調整額」△6万円を足しこんだことで、「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を合わせた「法人税等合計」は9万円になりました。
これで、決算書に表示される税額(9万円)と決算書の利益から計算される税額(税引前利益30万円 × 税率30% = 9万円)は一致します!
ここまでのお話をまとめると、こうなります😉
繰延税金資産が増える
→ この年の決算書に表示される税額「法人税、住民税及び事業税」(=実際に払う税額)が、決算書の利益から計算される税額よりも大きくなる
→ 決算書に表示される税額を、決算書の利益から計算される税額と一致させたい!
→ 「法人税、住民税及び事業税」を減らす形で法人税等調整額をマイナス方向に動かす
→ 決算書に表示される税額(法人税、住民税及び事業税+法人税等調整額)が決算書の利益から計算される税額と一致する
(※ただし、法人税等調整額を加えても、完全には一致させられないケースの方が多いです)
これが、繰延税金資産と法人税等調整額が連動している理由です✨
今回は繰延税金資産が増えたケースを取り上げましたが、実際の企業の中には繰延税金資産が大きく減ってしまうケースも珍しくありません💦
この意味については、また次々回ご紹介します!
スポンサーリンク
まとめ
1.繰延税金資産が増えると法人税等調整額が減り、繰延税金資産が減ると法人税等調整額が増える。このように、両者は連動している。
2.たとえば、繰延税金資産が増えた年は、決算書に表示される税額(=実際に払われる税額)が、決算書の利益から計算される税額よりも大きくなってしまい、金額が一致しない事態が生ずる。
3.2.のようなチグハグを解消するために、決算書に表示される税額を法人税等調整額が調整し、決算書の利益から計算される税額との整合性をとる。
次回は、決算書に載せられる繰延税金資産には上限が設けられているケースがあるというお話をしていきます😊