2017年3月に発売されてから爆発的な人気を誇る「ニンテンドースイッチ」。品切れとなってしまうほどの人気ぶりです😊
大きなヒットに恵まれず売上高が右肩下がりだった近年の任天堂の業績を、「ニンテンドースイッチ」はどのように変えたのでしょうか?
販売から半年たった2017年4月~9月の決算書をもとに、「ニンテンドースイッチ」が任天堂に起こした変化を見ていきましょう!
収益性の変化~実は粗利率は低下!
まずは、収益性の変化を捉えるべく損益計算書を見てみましょう。
2017年4月~9月の売上高は3740億円でした。前年の同じ時期と比べて2.7倍に増えています😊
売上好調でも、粗利率は低下
ところが、粗利率を見てみると、意外にも前年から下がっているのです。2016年4月~9月の粗利率が45%だったのに対し、2017年4月~9月は38%でした。
粗利率とは…
粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
粗利(売上高から売上原価を差し引いたおおもとの利益。売上総利益のこと。)をいかに効率的に得ているかを見る指標。詳しくはこちら(↓)
これが意味するのは、たとえ2016年4月~9月の1.2倍の売上をあげたとしても、得られる粗利は変わらないということです。粗利を獲得する効率性が下がったんですね。
原因は、売上の内訳に変化があったこと
ニンテンドースイッチが発売されたことで、任天堂の売上高の内訳に変化が起こりました。
新しいゲーム機が発売されると、多くの消費者がまずはゲームソフトと共にゲーム機本体を買います。そして、ゲーム機本体がある程度普及してくると、ゲームソフトの購入割合が多くなっていきます。
2017年はニンテンドースイッチのゲーム機を広める段階であるため、前年よりもゲーム機本体の販売割合が増えたのです。
実は、利益率の面で言うと、ゲームソフトの方がゲーム機本体(ハード)よりも高いんですね。
そのため、ゲーム機本体の販売割合が増えた2017年は、粗利率が下がってしまったのです。
ですが、勝負はここから。ゲーム機をいかに普及させるかで、その後ゲームソフトから稼げる利益額が変わってくるからです。
ニンテンドースイッチが普及してくれば、任天堂の粗利率は再び上がってくるでしょう。
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一方、営業利益率は上昇
今度は営業利益率を見てみましょう!
営業利益率とは…
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
「いかに効率的に、売上高から営業利益(商売活動から稼いだ利益)をしぼり出しているか?」を見る指標。詳しくはこちら(↓)
2016年4月~9月の営業利益率が-4%であったのに対し、2017年4月~9月は11%でした。粗利率の低下を跳ね返し、赤字だった前年から飛躍的に上昇しています。
営業利益率が改善した理由とは?
営業利益は、粗利から販売費及び一般管理費を差し引いたものです。
任天堂の販売費及び一般管理費の内訳を見てみると、ニンテンドースイッチの発売によって広告宣伝費や研究開発費が増えています。しかし、売上高がそれ以上の伸びを見せたことから、見事、営業利益率が上昇したのですね。
また、販売費及び一般管理費には固定費(売上が増えても金額が変わらない費用)である人件費も多く含まれていることから、売上高の増加が営業利益率の上昇に結び付きやすかったのです。
財政状態の変化~増えた資産・負債とは?
今度は、貸借対照表で財務状況の変化を見てみましょう。
棚卸資産と買掛金に大きな変化
資産では商品の在庫を表す棚卸資産が、負債では仕入れの債務を表す買掛金が増えています。これらの変化を生み出したのは、やはりニンテンドースイッチの好調な売れ行きです。
ニンテンドースイッチ発売後、2017年4月~9月の半年間で棚卸資産は3.5倍に膨れ上がりました。需要の増加にあわせて在庫も増やしているんですね。
またこの間、支払手形及び買掛金も2倍近くにまで増えています。膨れ上がった需要に対応するべく、商品の材料などの仕入れも増えているのでしょう。
自己資本比率は下がっている!?
もともと財務基盤がしっかりしている任天堂ですが、ニンテンドースイッチによってさらに財務状況が改善したのかを見てみましょう😊
事業継続の安定感を測る自己資本比率は、2017年4月~9月の半年間でどのように変化したでしょうか?
自己資本比率とは…
自己資本比率 = 自己資本 ÷ (自己資本 + 負債)× 100
企業が事業で使う資金のうち、返済する必要のない資金(自己資本)の割合を表す。この数値が高いほど、安定的に事業を続けやすく、財務基盤が健全であると考えられる。
詳しくはこちら(↓)
ニンテンドースイッチを発売したばかりの2017年3月末の自己資本比率は85%、そこから半年経ち増収増益を達成した2017年9月末は78%でした。
この半年で利益を積み増したはずが、意外にも自己資本比率は下落してしまいました(それでもかなりの高水準ですが)。
自己資本比率が下がった理由
理由の1つは、配当の支払いです。2017年度の上半期(4月~9月)は利益を積み増すことができた一方で、前年度の期末配当の支払いとして利益とほぼ同額のお金が出ていきました。そのため、自己資本の金額に大きな変化がなかったのです。
もう1つの理由は、買掛金が増えたことで負債全体が膨らんだことです。
自己資本比率の計算式で言うと、分母が増えた一方で、分子が変わらない状態なんですね。これが自己資本比率が下がった原因です。
ですが、これは一時的な現象です。このまま順調にニンテンドースイッチが売れてゆけば利益はどんどん積み増され、自己資本が増えていくでしょう。そうなれば、再び自己資本比率は上昇していくことになると思います。
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まとめ
1.売上高は前年から増えているものの、ハード(ゲーム機本体)の販売割合が増えたために粗利率は低下した。ゲーム機が普及してくると、次第に回復してくると考えられる。
2.粗利率の低下に負けず、売上高の大幅増加を味方につけて営業利益率は大きく上昇した。
3.2017年度上半期は利益を積み上げたものの、配当金の支払いや買掛金の増加によって自己資本比率が低下してしまった。ニンテンドースイッチの好調が続けば、自己資本が増えて再び上昇するものと考えられる。