「有価証券報告書って、長くて文章も多くて読みにくい…」と思う方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに、会計士であっても有価証券報告書を全部読み込むのは非常に骨が折れます。
今回は、ポイントをしぼってサクッと会社の事業や業績をつかむ方法をお伝えします!効率的に有価証券報告書を読んじゃいましょう😊
有価証券報告書を入手する方法はこちらをご参照ください(↓)
会社のことを知ろう
背景を知らずに業績の数字面だけ眺めていても、その数字の真に意味するところは分かりません。また、その企業が今後成長するのか、それとも伸び悩むのかといった予想をすることもできません。
本当の意味で業績を理解するために、企業のことを知っておきましょう!そのための情報が有価証券報告書には山ほどあります😊
事業の幅を知る
第一部 > 第1 企業の概況 > 3 事業の内容
企業がどんな事業を手掛けているか、こちらのページを見れば一目でわかります。意外な事業がその企業の収益を支えていたりするので、業績を読み込む上で大いに参考になります。
ここでは、「ふ~ん、こんな事業もやってるんだ」という感じでサラッと押さえておきましょう。
事業展開を知る
第一部 > 第1 企業の概況 > 2 沿革
「2 沿革」では、企業の歴史を知ることができます。ここでは、「新しい事業を始めた」「他社を買収した」といった情報も得られます。
事業展開を押さえておけば、なぜ売上が増えたのか、固定資産が増えたのかといった業績の変化の意味をつかみやすくなります😊
今後の投資計画を知る
第一部 > 第3 設備の状況 > 3 設備の新設、除却等の計画
こちらでは、今後どんな設備に投資予定なのかを知ることができます。これによって、今後「どんな商品を増産するのか」「どんな事業を始めるのか」などの情報を事前につかむことができます。これからの業績予想に役立ちますね✨
また、この項目のポイントは、その設備を作るにあたって自らの資金を使うのか、それとも借金でまかなうのかといった投資の資金源も分かるところです。たとえば大型の設備投資資金を借金でまかなうのであれば、その投資が成功しないと後々財政状態が苦しくなるリスクもあるのです。
海外への依存度を知る
第一部 > 第5 経理の状況 > 1 連結財務諸表 > 関連情報 > 2 地域ごとの情報 >(1)売上高
こちらでは、地域別の売上高が示されています。国内と海外のどちらの比重が高いのか、海外であればどの地域への販売が大きいのかが分かります。
海外への依存度が高いほど、業績は為替レートの動きから影響を受けやすくなります。注目している企業の海外販売割合が高ければ、為替レートの変動を意識しておいた方がいいですね。
また特定の地域への売上が大きいのであれば、その地域特有のリスクも押さえておいた方が良いです。たとえば中国への売上が大きければ、中国の経済減速の状況や規制等をつかんでおけば今後の業績予測に役立ちます。
為替レートと業績の関係については、こちらで詳しく解説しています(↓)
企業自身が把握しているリスクを知る
第一部 > 第2 事業の状況 > 4 事業等のリスク
事業を続けていく上で、企業自身がリスクだと思っている項目が列挙されています。ここに示されているような事象が起これば、その企業の業績も崩れていく可能性が高いです。
たとえば、鶏肉の賞味期限切れ問題によって業績が急降下した日本マクドナルドも、問題発覚前から「食品の安全管理に問題が起これば、経営成績に影響を与える可能性がある」旨をこちらの項目に記しています。
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業績をサクッとつかもう
決算書をしっかりと読み込むのは、知識も時間も必要です。ここでは、業績の流れや概要をサクッとつかむ方法をご紹介します😊
ざっと見て、さらに深掘りするポイントを見つけたら、決算書でその原因を探っていきます。
5年間の業績の流れをつかむ
第一部 > 第1 企業の概況 > 1 主要な経営指標等の推移
有価証券報告書に掲載されている決算書には、当期と前期の2年分の業績しか載っていません。しかし、こちらの項目では直近5年間の業績の主要項目(売上高、当期純利益など)が示されているのです。いわば、最近の業績ダイジェスト版とも言えるページです。
こんなことが分かります!~ご参考~
収益性
たとえば、売上高や利益の推移を見ることで、その企業が成長軌道に乗っているのか又は落ち込み気味なのかといった傾向をつかむことができます。
安全性
あわせて、自己資本比率も見ることで財務基盤の安定性もチェックできますね。売上高に変化が無くても、自己資本比率が下がっていたら要注意です。その理由を探ってみましょう。
資金繰り
また、キャッシュ・フロー計算書の3要素(営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフロー)のバランスをチェックすることで、キャッシュの流れに危ういところが無いかをざっくり把握することができます。
営業活動によるキャッシュフローを投資活動によるキャッシュフローが上回ることが続いているようであれば、本業の資金繰りが苦しくなっているか、大きな投資に打って出ている可能性があります。
また、財務活動によるキャッシュフローが大きくプラスの値になっているようであれば、借入れや増資を行っていると思われます。何か資金的に苦しい部分があるのか、それとも大きな資金を必要とする場面に出くわしているのか、原因を探ってみましょう。
収益の柱をつかむ
第一部 > 第5 経理の状況 > 1 連結財務諸表 > セグメント情報
こちらでは、事業ごとの売上高や利益が2年分記されています。
複数の事業を手掛けている企業が多いですが、売上高の金額を見ただけでは、どの事業が成長を牽引し、どの事業が足を引っ張っているかは分かりません。セグメント情報を見ることで、売上高のさらに一歩先の情報をつかむことができるのです。
いよいよ決算書本体へ
このように業績の概要を見てみると、「なぜこの数値がこんな動きをしているのか?」といった疑問も出てくると思います。そういったポイントを中心に決算書を見てみると、より理解が深まりますよ😊
念のため、決算書の掲載場所をこちらに記します。
第一部 > 第5 経理の状況
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まとめ
1.企業の業績が変化した意味や、今後の業績の予測のためには、企業のこと(事業内容や投資計画など)を知る必要がある。有価証券報告書には、そのための情報がある。
2.決算書を読み込む前に、「主要な経営指標等の推移」や「セグメント情報」で最近の業績のポイントをつかむ。
3.1.や2.で疑問に思ったところ、深く確認したいところを中心に決算書を見ると、効率的に深く理解することができる。
決算書には見慣れない用語や会計特有の考え方が出てきます。具体的な読み込み方については、こちらをご参照ください(↓)