「ところで、決算書はどこで手に入るの?」
決算書の読み方のノウハウは各所で入手できますが、このような疑問を持たれている方も多いと思います。
上場企業の決算書は公開されているため、誰でも見ることが可能です。
今回は、上場企業の決算書の入手方法はもちろんのこと、簡単に業績の概況を知る方法や、決算書のさらに一歩先の情報を知る方法をご紹介します!
インターネット環境さえあれば、家に居ながらにしてこれらすべての情報を知ることができますよ😊もちろんすべて無料です!
目次
【導入編】まずはざっと業績を眺めたいなら「業績ハイライト」
たくさんの数字や文章が並ぶ決算書に目を通す前に、簡単に最近の業績の動向をつかんでおくと、その先の決算書にもスムーズに入っていくことができます✨
そんなときに役に立つのが、企業が公開している「業績ハイライト」情報です。
1.企業HPで簡単に見られる
企業のホームページから見ることができます!
企業の業績に関する情報を見たいときは、企業HPのIR情報のページに行きます。ページタイトルは「投資家情報」や「株主・投資家の皆様へ」と表示されていることも多いですね。
IR情報のリンクは企業HPの隅っこでひっそり息をひそめていることが多く探しにくいですが、Google等で「企業名(例:○○株式会社) IR」と検索すれば一発でたどり着けますよ😊
IR情報ページのメニューをたどっていけば、「業績ハイライト」の項目を見つけることができます(「業績・財務情報」等のメニューの1項目となっていることもありますね)。
「業績ハイライト」ページを作っていない企業もありますので、その場合は【基本編】に進みましょう!
2.直近5年間の業績が一目でわかる
多くの企業では、直近5年間の売上高、利益、自己資本、主な経営指標などの動きをグラフで表示しています。詳細な説明はなく、とてもシンプルなページですが、その分見やすくとっつきやすいです。
一目で、売上高は増えているのか、借金が増えすぎていないかなどが分かります。
ここで疑問点(たとえば、売上高は増えているのに利益率が下がっている等)を見つけて、次からご紹介するより詳細なデータで探っていくのも1つの使い方ですね😊
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【基本編-1】いち早く最新の決算書を入手するなら「決算短信」
「決算短信」は、企業が決算発表を行うと同時に公開される決算書です。いち早く企業の業績情報を知りたいなら、「決算短信」がおすすめです。
「決算短信」は、決算書である貸借対照表、損益計算書等に、事業の概況や次期の業績見通しの説明を加えたものです。
1.企業HPからダウンロードできる
【導入編】1.入手方法でお話しした、企業HPのIR情報ページから「決算短信」をダウンロードすることができます。
IR情報ページの中でも、「IR資料室」「IRライブラリ」「決算情報」などのメニューの中に掲載されていることが多いですね。
Google等で「企業名 短信」と検索しても、たどり着きますよ💫
2.決算書メインのつくり
トップページには、2年分(前年度・当年度)の主な指標(売上高、利益、資産残高、株主資本比率など)が表形式で載っています。前年からの比較をしやすいつくりになっています。
次ページ以降は、事業の概況、次期業績見通し、そして決算書が掲載されています。企業によっては、それ以上のボリュームで情報提供しているところもありますね。
3.メリット・デメリットとは?
「決算短信」を利用する上でのメリット・デメリット(注意点)をご紹介します💫
メリット
🔹決算発表と同時に決算書を入手できる(決算発表は、対象となる年度が終了してから約1か月前後で行われることが多いです)
🔹決算書の細かい補足情報が不要であれば、十分な情報量である
デメリット
🔹会計士の監査が完了していない
→頻繁にあることではありませんが、その後決算書の数字が修正される可能性があります。
🔹単体の決算書は公開されていない
→企業グループ合計ベースでの決算書のみ掲載されています。親会社のみの決算書は掲載されていません。
🔹決算書の数値に関する補足情報が少ない
→基本的に注記は記載されていないため、決算書の数値に関する補足情報をつかむことはできません。
【基本編-2】情報量が豊富、会計士お墨付きの決算書は「有価証券報告書」
「決算短信」のデメリットをうめてくれるのが「有価証券報告書」です✨「決算短信」と比べると、一気にボリュームが増えます。
1.2つの方法で入手できる
「有価証券報告書」の入手方法は2パターンあります。それぞれの方法をご紹介しますね。
1-1 企業HPから入手する方法
1つは、「決算短信」と同じく企業HPのIR情報ページからダウンロードする方法です。
大体の場合、「IR資料室」や「IRライブラリ」とタイトル書きされたメニューの中にあります。
1-2 EDINETから入手する方法
もう1つは、EDINETから検索する方法です。EDINETとは、企業の有価証券報告書を閲覧するための専門サイトです。
EDINETのサイトはこちら(↓)
EDINETの「書類簡易検索」画面を開き、検索条件を入力していきます。
「提出者/発行者/ファンド」の検索窓に調べたい企業名(一部分でもOKです)を入力、「決算期/提出期間を指定する」欄で調べたい期間を指定して検索すると、該当する企業の「有価証券報告書」「四半期報告書」がずらりと表示されます。
1-3 目的に応じて入手方法を使い分ける
どちらの方法を使っても同じ「有価証券報告書」を入手することができますが、それぞれメリット・デメリットがあります。
EDINETで入手できる「有価証券報告書」は直近5年分のみですが、企業HPではそれそれ以上にさかのぼって入手できることが多いです。どこまで古い「有価証券報告書」を載せているかは、企業によります。
一方、EDINETの「有価証券報告書」は目次のリンクが左のサイドバーに設置されており、見たいページにすぐ飛ぶことができます。一方、企業HPで入手できる「有価証券報告書」にそのような機能はないので、見たいページは1ページ目から繰って探すか、単語で検索をかけるかしなければいけません。ページ数が膨大な「有価証券報告書」において、この作業は少し大変です。
どちらの入手方法も一長一短あるので、知りたい情報に合わせて使い分けるといいですね✨
2.決算書以外の情報がもりだくさん
まず、決算書関連のページでは、グループ全体の決算書(連結財務諸表)、親会社のみの決算書(単体財務諸表)のほか、決算書の補足情報である注記事項が何ページにもわたって作成されています。注記事項には、たとえば決算書を作る上での方針や販売費及び一般管理費の内訳、事業別の売上高・利益の内訳などが含まれています。
決算書関連だけでも充実した情報量ですが、決算書関連以外の情報も盛りだくさんです。これが、「有価証券報告書」の特徴ともいえます🌟
たとえば、こんな情報を知ることができます。
・事業別の従業員の人数
・受注数量、受注残高
・これから行う大型投資の内容とその金額
・大株主とそれぞれが保有する株式の割合
・最近5年間の株価の推移
などなど…
その企業のことを、もっと深く知る手がかりがたくさん盛り込まれています。これらは、今後の企業の業績を予測する材料にもなりますね。
また、トップページ(第1【企業の概況】の1【主要な経営指標等の推移】)には直近5年間の売上高、利益、キャッシュフローなどが表形式で掲載されているため、このページで企業の動きを見渡すのも良いです😊
3.メリット・デメリットとは?
「有価証券報告書」のメリット・デメリットをご紹介します🗝「決算短信」の裏返しになりますね。
🔹とにかく情報量が豊富!数字以外の情報をたくさん読むことができる
🔹会計士の監査が完了しているので、信頼性のある決算書が掲載されている
🔹ボリュームが多すぎて読む気が失せてしまう…
→特に決算書に慣れていないと、膨大なページ数と見慣れない用語の羅列に圧倒されてしまう可能性もあります。割り切って決算書のページだけ見に行くか、「決算短信」などで情報を抑えるのも◎です。
🔹公開されるまでに時間がかかる
→対象となる年度が終了してから、2か月半~3か月後に公開される企業が多いです。次の年度に気持ちが切り替わった頃に、公開されるイメージですね。
「決算短信」も「有価証券報告書」も一長一短あるので、知りたい内容やその情報が必要な時期、持っている会計の知識に合わせて使い分けるとよいと思います😊
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【応用編】決算書プラスアルファの情報が知りたいなら
もっともっと細かいことまで知りたい!となったら、こちらの資料も参考にしてみてくださいね✨
初心者でもわかりやすい「決算説明会資料」
有価証券報告書を追っていくと、売上高が増えた理由や費用が減った理由などが文章で説明されています。
しかし、多くの企業は、この業績が良くなった又は悪くなった理由の記載が非常に簡潔です。結局なぜ業績が動いているのか、腑に落ちないまま読み終わることになりかねません。
そんな「?」の部分を補足してくれるのが「決算説明会資料」です。「決算説明資料」、「プレゼンテーション資料」と表示されていることもあります。
企業HPから入手できる
「決算説明会資料」も、「決算短信」と同じように企業HPのIR情報ページからダウンロードできます。
「決算説明会資料」のメニューが設けられていることも多いですし、「決算短信」と並んで掲載されている場合もあります。
多くの人が理解しやすいように作られている
「決算説明会資料」は、企業が決算発表を行う際に、投資家に業績を説明するために作成した資料です。そのため、業績の推移や現在力を入れている事業などが、豊富なグラフ、写真、図により分かりやすく説明されています。
「決算短信」「有価証券報告書」よりもとっつきやすく、視覚的に業績を理解しやすいように作られているのです。まずは「決算説明会資料」でざっと予習してから、決算書を読むと理解が進みやすいです。
また、「有価証券報告書」には記載していないような具体的な売上高・利益等の増減理由、今後の計画、市場環境などを知ることができ、企業が市場でどんな立場に置かれているのか、今後の業績はどう動いていくのかを推測する手助けになります。
メリット・デメリットとは?
メリット
・決算短信と同じタイミングで入手できる。
・グラフや絵図が多く、初心者でも見やすい作りになっている。
デメリット
・「決算説明会資料」をHPに掲載していない企業もある。また、内容の充実度は企業によりけりで、写真やキャッチコピーを並べているだけのものもある。
・会計士の監査対象ではないため、掲載されている数字が保証されているわけではない。特に、「決算説明会資料」に記載されている将来予測が実際の数字とかけ離れていることは往々にしてある。
このようなデメリットもあるので、HPに載っていればラッキーと思って利用する位のスタンスがいいですね。また、記載されている数字が保証されていない(特に将来予測!)ことは念頭に置いておきましょう。
より多くの数字データが欲しいなら「ファクトブック」
「有価証券報告書」でも「決算説明会資料」でも網羅されていない数字データは、もしかしたら「ファクトブック」で見られるかもしれません。決算書の数字をさらに細かい単位にまで落とし込んで掲載しています。
企業HPで入手できる
こちらも「決算説明会資料」と同じく、企業HPのIR情報ページからダウンロードできます。
「ファクトブック」用のメニューが設けられていたり、IR資料室(IRライブラリ)のページに掲載されていることが多いです。
ここでしか分からない数字データを見られる
「ファクトブック」では、かなり細かい単位にまで分解された売上高・利益のデータを見ることができます。
ファクトブックに記載されている内容の例
・商品別の売上高(例:アサヒグループホールディングスでは、ブランド別(十六茶、カルピスなど)の売上高を掲載)
・ゲストの男女別、年代別の比率(例:オリエンタルランド)
・月別の客単価、客数の推移(例:ファストリテイリング)
そのため、何が業績向上又は悪化の要因になっているかが、ダイレクトに分かるんですね。
メリット・デメリットとは?
メリット
・売上高、利益の増減要因を、具体的につかめる
デメリット
・「ファクトブック」をHPに掲載していない企業がある(「決算説明会資料」を掲載している企業よりもさらに少ない)。
・掲載されている数字は監査されていない
ファクトブックを載せている企業に出会えれば、「決算説明会資料」の時以上にラッキーです!こちらも、掲載されていれば利用しよう位の気持ちでいるといいですね。
この他にもいろんな業績データがあります
ここまでご紹介した資料以外にも、企業HPでは月次販売データを随時公開していたり(三越伊勢丹など小売業に多いです)、10年ほどの財務データをまとめたExcelを掲載している企業もあります。
企業HPのIR情報ページを探検してみるのも面白いと思います😊
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まとめ
1.企業HPの「業績ハイライト」、「有価証券報告書」のトップページ、「決算説明会資料」などで企業の動きをざっと予習しておくと、決算書にすんなり入ることができる。
2.私たちが見られる決算書には「決算短信」と「有価証券報告書」の2つがあり、決算書の利用目的に応じて使い分けると◎。
3.「決算書」よりも詳細なデータや説明が欲しければ、企業HPのIR情報ページにヒントがある可能性がある(「決算説明会資料」「ファクトブック」など)。
ご自分に合った情報源を探してみてくださいね✨