固定負債の意味とは?
負債は2つに分けられる
貸借対照表には、資産、負債、純資産(資本)という3つの大きなグループが表示されています。
このうち2番目に表示される負債グループには、「将来、資産(主に現預金)を減少させる義務」を表した項目が集められています。たとえば、借金や未払金などのように、「将来、現預金を支払う義務」を表した負債が多いですね😊
この負債をさらに2つのグループに分けたものが、流動負債と固定負債です。
流動負債と固定負債の違いとは?
流動負債と固定負債には、どんな違いがあるのでしょうか?
ざっくりと言えば、支払い日が近い負債が流動負債、遠い負債が固定負債と表すことができます。
まず、流動負債は以下のいずれかに当てはまるものを含みます。
1.商売のサイクルの中で生まれた負債
2.決算日から1年以内に支払い・返済が行われる負債
流動負債の詳しい解説はこちら(↓)
そして、以上のいずれにも当てはまらないもの、つまり負債のうち流動負債に含まれないものが固定負債です。
たとえば同じ未払いの代金でも、仕入代金の未払い分は買掛金、有価証券を購入した際の未払い分は未払金と呼ばれます。
買掛金は商売のサイクルの中で生まれるので、流動負債に含まれます。
未払金は、決算日から1年以内に支払われるのであれば流動負債に、それより後に支払われるのであれば固定負債に振り分けられます。
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どんな経営指標に使われるの?
固定負債の特徴は、支払いまでの期間が長いことです。この特徴を生かして、「財務状態が安全かどうか」を測定する際の計算の一要素として使われます。
固定長期適合率
固定長期適合率(%)= 固定資産 ÷( 自己資本 + 固定負債 )× 100
「自己資本と固定負債によって、投資にかかった金額(=固定資産)をまかなえているか?」を測る指標です。
自己資本は返済不要な資金、固定負債は返済・支払いまでの期間が長い(1年超)資金を表します。これらの資金によって投資資金をまかなえていれば、投資のリターンを得る前に借金返済に追われるリスク(つまり資金が底を尽くリスク)も低くなります。
固定長期適合率の詳しい解説はこちら(↓)
一風堂の固定負債を見てみよう
固定負債にはどんな項目があるのでしょうか?ラーメンチェーン店一風堂を展開する、力の源ホールディングスの固定負債を見てみましょう!
力の源ホールディングス 2017年12月末時点の固定負債 単位:千万円
項目名 | 2017年12月31日残高 | |
---|---|---|
固定負債 | 社債 | 17 |
長期借入金 | 551 | |
リース債務 | 6 | |
退職給付に係る負債 | 19 | |
資産除去債務 | 54 | |
その他 | 4 | |
固定負債合計 | 652 |
(2017年度第3四半期 四半期報告書より)
力の源ホールディングスは、国内既存店で伸び悩んでいるものの、新規出店を進めている効果で売上高が増えています。
精力的な出店戦略に必要なのは資金です。そのため、やはり長期借入金が大きな割合を占めていますね。
2018年1月以降も、ロンドン、メルボルン、香港といった海外都市への出店を控えており、国内外で一層の店舗網拡大を目指しています。
また、店舗運営を行う事業形態であることから、資産除去債務も登場していますね。
店舗の賃借契約には原状回復義務(契約満了の際、ラーメン調理設備などを撤去して元の状態に戻す)が記されていることが一般的です。この原状回復に必要な将来の支出を見込んで、資産除去債務という負債を計上しているのです。
資産除去債務の詳しい解説はこちら(↓)
その他、従業員への退職金の支払いを見込んだ退職給付に係る負債、設備等のリースによる将来の支出を見込んだリース債務など、他の企業でもよく見られる項目が並んでいます。
ここまでに登場した固定負債以外にも、繰延税金負債や各種引当金などが企業の状況に合わせて計上されます。
設備投資が大きい企業は長期借入金や社債の金額も大きくなる傾向がある一方で、帝国ホテルのように借金関係の項目は一切ない企業もあります。退職給付に係る負債は、やはりどの企業も載せていますね。
流動負債と比べると、固定負債の項目は少ない傾向にあります。
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まとめ
1.負債のうち、商売のサイクルの中で生まれたもの、または決算日から1年以内に支払われるものは流動負債に含まれ、それ以外の負債は固定負債に含まれる。
2.固定負債は、財務状態の安全性を測るため、固定長期適合率の計算に使われる。
3.固定負債には、長期借入金、社債、退職給付に係る負債、資産除去債務などが計上されることが多い。設備投資を進めている企業では、長期の借金(長期借入金や社債)が増えることがある。