今回のテーマは、「流動資産と固定資産の違いとは?」です🗝
貸借対照表で1番最初に登場するのは、企業の財産を表す「資産」です。その「資産」にもいくつかの区分があります。
その中でも最も大きなくくりである「流動資産」と「固定資産」の違いを、オリエンタルランドの例を見ながら解説していきます。
まず、資産とは?
まずは、簡単に資産についてご説明します😊
決算書の中でも、貸借対照表の1番初めに表示してあるのが「資産」です。資産は、「企業の持っている財産」を表します。
現預金、株券、工場の建物や機械などどいった分かりやすい資産から、顧客からの未収代金やソフトウェアなど目に見えない資産まで、様々な形の資産があります。
これら資産に含まれるものの共通点は、「企業のお金を増やすことに対しプラスに働く」ということです。
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流動資産に入っているもの
”流動”と名前がついているように、「お金に変わりやすい」ものが流動資産に含まれます。
お金に変わりやすいかどうかは2つの基準によって判断します。
1.商売のサイクルの中で生まれるもの
企業が事業を行いお金を稼ごうとすると、以下のようなサイクルを繰り返すことになります。
材料の仕入れ → 商品の製造 → お客様へ商品の販売 → 販売代金を受け取る
このサイクルの中でいくつかの資産が生まれます。
たとえば、仕入れを行ったら「材料(棚卸資産)」、商品を作ったら「商品(棚卸資産)」、商品を販売し代金をツケにしたら「売掛金」というように。
このような商売のサイクルの中で生まれる資産は「流動資産」に含まれます。この区分方法は、カッコよく言うと「正常営業循環基準」と呼ばれます✨
2.1年以内にお金に変わるもの
「お金への変わりやすさ」を判断するもう1つの基準は、「その資産が1年以内にお金(現預金)に変わるかどうか?」ということです。
たとえば、よく決算書に登場する流動資産には‥
・「未収入金」 → 土地や有価証券といった商品以外のものを売り、まだ受け取っていない代金
・「有価証券」 → 株式や社債など
などがあります。
これらの資産は、1年以内に未収代金が入金されたり、社債の満期が来たりします。つまり、1年以内に現預金に変わるために「流動資産」に含まれるのです。
(同じ性質の資産でも、現預金に変わるのが1年より先である場合は「流動資産」には含まれません。)
オリエンタルランドの流動資産の中には…
ディズニーランドを運営するオリエンタルランドの流動資産の中身を見てみましょう!
2017年9月末の決算書には、流動資産はこのように記載されております(※一部要約)。
最も金額の大きい項目が、お金そのものである「現金及び預金」です。
ディズニーグッズは商売のサイクルから生まれた資産
商売のサイクルの中で生まれる資産がピンクのマーカーをひいた項目です。
「受取手形及び売掛金」は、お客様からまだ受け取っていないパークチケット代やホテル宿泊料などですね。クレジットカードで支払う方も多いので、まだ決済されていない代金が含まれます。
そして、「商品」や「原材料」といった在庫(棚卸資産)には、まだ売れていないグッズやレストランでの食材などが入っていると思われます。
1年以内にお金に変わる資産は何が多い?
水色のマーカーをひいた項目は、商売のサイクルには含まれないが1年以内にお金に変わる資産です。
オリエンタルランドの場合は、「有価証券」が大きいですね。パークやホテルの商売以外にも、こうした有価証券の運用によって資金を増やそうとしているのです。
固定資産に入っているもの
簡単に言うと、流動資産に含まれない資産のことです!(繰延資産という例外もたまにありますが…)
つまり、「商売のサイクルの中で生まれた資産」にも、「1年以内にお金に変わる資産」にも当てはまらない資産が固定資産です。
固定資産の3つのグループ
決算書では、固定資産を3つのグループに分けて表示しています。
「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」です。
簡単に言うと、それぞれ、目に見える固定資産、目に見えない固定資産、商売目的ではなく投資目的で保有する固定資産です。
詳しくは、オリエンタルランドの例を見ながらご説明します。
オリエンタルランドの固定資産の中身とは?
2017年9月末時点のオリエンタルランドの決算書には、固定資産はこのように記載されております(※一部要約、金額の大きいものを表示してます)。
有形固定資産にはテーマパークそのものが入っている
一番わかりやすいのが「有形固定資産」グループですね。建物や土地などが含まれています。
人気アトラクションのスプラッシュ・マウンテンやタワー・オブ・テラー、東京ディズニーランドホテルをはじめとしたディズニーホテルの数々は「建物及び構築物」に、舞浜のあの広大な土地は「土地」に含まれています。
「建設仮勘定」という項目には、今現在建設中の有形固定資産が表示されています。2019年導入予定のディズニーシーの新しいアトラクション「ソアリン(仮称)」(建設費180億円)がここに入っているようです。どうやら海外のディズニーテーマパークで人気のアトラクションみたいですよ✨
無形固定資産に含まれる「のれん」とは?
「無形固定資産」「投資その他の資産」の中身は、今時点の情報(2017/10/30公表の短信)では「その他」にまとめられちゃっていますが…
オリエンタルランドの場合、「無形固定資産」には「のれん」などが含まれています。「のれん」とは、たとえば会社を買収するときに、その会社のブランドイメージや信用力といった目に見えない価値に対して充てられた買収価格のことです。
一般的には「のれん」の他、企業のシステムを動かすソフトウェアが「無形固定資産」に含まれていることが多いです。
投資その他の資産の中身とは?
また、オリエンタルランドの「投資その他の資産」の多くは「投資有価証券」が占めています。「投資有価証券」も、流動資産に含まれる「有価証券」と同じく株式や社債を表します。
「有価証券」と異なるのは、満期までの期間が1年を超えていたり、取引先との関係から長期間保有する目的で取得しているなど、保有期間が長期にわたることですね。
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住友不動産の流動資産は何かが違う?
オリエンタルランドの資産は一般的によく見られる項目が並んでいますが、ちょっと異なる資産の並び方をしている企業もご紹介しますね😀
それは住友不動産です。
こちらは、住友不動産の2017年6月末時点の貸借対照表(※一部要約)です。
流動資産に見る、不動産会社ならではの特徴
まず、一番特徴的なのは、「流動資産」の中に「販売用不動産」という項目があることです。
不動産なので土地や建物を表しているのですが、一般的な企業では土地や建物は「固定資産」に含まれています。
一方、住友不動産のビジネスは、土地に家を建設して売ることです。つまり、住友不動産にとって、家を建てるための土地やそこに建つ建物(家)は「商売のサイクルの中で生まれるもの」なのです。
そのため、正常営業循環基準に照らして、これらの不動産を「流動資産」に含めているのです。(※賃貸用のビルなどは「固定資産」に含まれます)
住友不動産の土地や建物は、オリエンタルランドでいうキャラクターグッズと同じポジションとも言えます。
借地権とは何のためのもの?
次に「固定資産」を見てみると、「無形固定資産」のほとんどを「借地権」が占めています。
「借地権」とは、建物を建設するために土地を借りる権利のことです。これも、不動産会社ならではの特徴ですね。
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まとめ
1.資産に含まれるものの共通点は、「企業のお金を増やすことに対しプラスに働く」こと。
2.流動資産には、「商売のサイクルから生まれる資産」と「1年以内にお金に変わる資産」が含まれる。
3.固定資産には、流動資産に該当しない資産が含まれる。決算書では、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つのグループに分けて表示される。