松屋の「プレミアム牛めし」誕生の背景とは?牛肉価格と松屋の利益の関係から読み解いてみる

 

牛丼チェーンといえば‥

”デフレの象徴”と表現されてしまうほどに、安さを追い求めていたイメージがありました。

しかし、近年は続々と値上げを発表するなど、そのレッテルを払拭するかのような動きが見られるようになりましたね😊

実は、ここ数年は、牛丼チェーンにとって大きな存在感を持つ牛肉価格が、まるでジェットコースターのようにめまぐるしく変動していた時期でもあったのです。

そんな牛肉のお値段が牛丼チェーン店にどんな影響を与えてきたのか?松屋を例に見てみます!

 

松屋にとって、牛肉の存在感を数字で表すと?

牛丼屋さんといえば、やはり何といっても牛肉が無くては始まりません。そこで、まずは、松屋にとって牛肉がどれほど存在感を発揮しているのか、具体的な数字から見てみましょう!

松屋の原価には、メニューに使われる牛肉や豚肉はもちろんのこと、工場で食材を調理する方のお給料や、水道代、電気代なども含まれています。

その中でも、牛肉を主とする材料費は、売上原価のうちの9割近くも占めています!意外ではないかもしれませんが😀

(※2017年3月期松屋フーズ(単体)の決算書より)

つまり、牛肉価格が上がればあっという間に原価が膨らみ、利益が圧迫されてしまうのです😥牛肉価格が上がるか下がるかは、松屋にとっては死活問題なのです。

 

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牛肉のお値段はどう動いてきたか?

松屋で使っている牛肉は、アメリカかカナダから輸入したもの。

牛肉の輸入価格の動きを過去から追ってみると‥

2012年4月頃から徐々に上がり始め、2014年12月にピークに到達します。ピーク時の価格は、牛肉価格が上昇気流に乗る直前の1.7倍にまで膨れ上がっているんです!

(※農畜産業振興機構の国内統計資料牛ばら肉の輸入価格データより)

アベノミクスに沸く中、為替レートが円安にふれた影響もありますね。原価の殆んどを占める牛肉において、この価格上昇っぷりはとてもイタイです…😣

2014年12月からは下落方向に転じ、2017年8月時点でピーク時の80%にまで価格を落とします。それでも、牛肉価格が上昇し始めた2012年4月頃と比べるとまだまだ高い水準です。

 

 

牛肉の価格アップに打ち出した松屋の対策!その効果は?

容赦なく上り続ける牛肉に対して、松屋が繰り出した対策とは何でしょうか?

もちろん、値上げ、ではあるんですが…。値上げは値上げでも、ただの値上げではありませんでした。

定番メニューである「牛めし」を、チェーン店の牛丼らしからぬ内容にレベルアップさせた「プレミアム牛めし」を発売したのです。

今までの「牛めし」並が290円、「プレミアム牛めし」並が380円とお値段もレベルアップ。

「プレミアム牛めし」を置いている店舗では「牛めし」は販売されませんので実質的な値上げとも受け取れますが、「プレミアム」と銘打っているだけあってかなりのこだわりを込めた商品のようです。従来のような冷凍肉ではなくチルド肉を使用することで牛肉本来の柔らかさ・うまみを引き出し、さらに無添加のタレで仕上げ、附属のお味噌汁さえも改良するほどのこだわりよう!

プレミアム牛めし発売!

見ているだけでお腹がすいてきちゃいます‥

冷凍肉よりも保存期間が圧倒的に短く、品質管理にも手間暇かかります。松屋側も負担が増えることを覚悟で、繰り出されたメニューなんです。

それでは、「プレミアム牛めし」の効果はいかに!?ここで松屋の原価率の推移を見てみましょう。(※原価率:売上高に占める売上原価の割合)原価率が高い=利益率が低い、ことになります。

  2011年度    →32.6%

  2012~2013年度 →33.8~33.9% …牛肉価格が上がり始める

  2014年度    →34.3%     …牛肉価格がピークを迎える

  2016年度    →31.8%

2014年度は「プレミアム牛めし」を導入した年でもありますが、やはり原価率の上昇を完全に抑えるのは難しいようです。2013年度の原価率と比べればたったの0.4%の差のように見えますが、これだけで利益が3億円以上も変わります。最終的に残る利益を表す「当期純利益」が、2014年度は6.5億円ほどであったことを考えれば、大きな大きな差です…

それでも、原価の多くを占める牛肉の価格が1.7倍も吊り上がったことを考えれば、健闘していると思いますが😊牛肉以外にも、豚肉やチキンを使った定食メニューを充実させたり、店舗の改装を進めたことも、売上高の増加につながったようです。

牛肉価格上昇期の真っただ中に導入した「プレミアム牛めし」ですが、実は牛肉価格が落ち着いてきた現在においてもその効果を発揮しています。

ここ1~2年は牛肉価格が落ち着き始め、原価率はむしろ以前よりも低い水準に保つことができています。「プレミアム牛めし」がヒットしていることも関係しているようで、単価が高いゆえに増収効果が大きいようです。

これで一件落着!めでたしめでたし…とはならず、牛肉価格がまたいつ上がるかはわかりませんね。今度はどんな斬新なメニューが繰り出されるのか、楽しみにしたいと思います🍴

 

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