昨今、百貨店の苦戦が伝えられていた三越伊勢丹ホールディングス。
2018年3月期は赤字に陥ってしまいました💦
確かに、本業の収益性が悪化しているのは事実です。
しかし、この年、赤字に陥った最も大きな原因は…特別損失が膨らんだことにあります。
この特別損失の中身にこそ、三越伊勢丹の復活に向けた戦略が隠されているのです。
今回は、三越伊勢丹の特別損失の中身を明らかにしていきながら、その改革の内容に迫ってみましょう😊
特別損失ってなーに?
損益計算書には、あらゆる種類の費用(損失)が登場します✨
そんな費用(損失)の中でも「臨時」的に発生し、金額が「巨額」なものが特別損失というグループに含まれるのです。
★ 臨時 →その企業にとって、毎年は発生しないようなもののこと
★ 巨額 →その企業の業務の中で、普通は発生しえない規模の金額のこと
詳しい内容や具体例はこちら(↓)で解説しています😃🎶
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三越伊勢丹の特別損失に含まれていたものとは?
ではさっそく、三越伊勢丹の特別損失の中身を見てみましょう!
三越伊勢丹の特別損失一覧(2018年3月期)
特別損失の項目名 | 損失が発生した主な原因 | 金額(億円) |
---|---|---|
固定資産処分損 | 三越日本橋本店の改装 | 9 |
減損損失 | 郊外・地方店舗等の収益性悪化 | 111 |
店舗閉鎖損失 | 伊勢丹松戸店の閉鎖 | 24 |
のれん償却額 | 百貨店業以外の事業買収で得たのれんの償却 | 33 |
関係会社整理損 | 子会社マミーナの清算 | 10 |
事業譲渡損 | クイーンズ伊勢丹売却 | 11 |
事業構造改善費用 | 早期退職制度の退職金積み増し | 50 |
その他 | 9 | |
合計 | 261 |
確かに、一見とっつきにくいかもしれませんね(^^;)
ですが、これらの損失はざっくり3つのグループにまとめることができます✨
① 赤字の店舗・事業を終了させた時の損失
② 今後の経費削減のために生じた損失
③ 今後見込まれる費用の前出し分
① 赤字の店舗・事業を終了させた時の損失
①に該当する特別損失は、
● 店舗閉鎖損失
● 関係会社整理損
● 事業譲渡損
です。
それぞれの内容は、
● 赤字を出していた伊勢丹松戸店を閉店させたことによる損失(店舗閉鎖損失)
● 採算が悪化し債務超過に陥っていた子会社マミーナ(アパレル事業)の事業を終了させたことによる損失(関係会社整理損)
● 赤字が続くクイーンズ伊勢丹の売却による損失(事業譲渡損)
です💦
いずれも、三越伊勢丹の利益を押し下げていた店舗や事業を切り離すために生じた損失なのです。
② 今後の経費削減のために生じた損失
②に該当するのは、「事業構造改革費用」です。
こちらの主な内容は、早期退職制度の退職金を積み増したことによる費用です。
三越伊勢丹の業績の特徴の1つに、「人件費の負担が重いこと」があります。
そこで、取り入れたのが早期退職制度です。
想定通りに退職者が集まっていなかったことから、退職金を積み増したものと考えられますね。
③ 今後見込まれる費用の前出し分
この年の特別損失の中でも、最も金額が大きい「減損損失」が③に該当します。
こちらは、
● 伊勢丹立川店、福岡三越店といった地方・郊外店
● クイーンズ伊勢丹の店舗
などの建物や土地を減損した際の損失です。
減損とは…
事業の収益性悪化等により関連する固定資産の価値(キャッシュ創出能力)が減少したと判断された時に、その固定資産の残高を減らすこと。
その際に、固定資産の残高を減らした分だけ減損損失が生ずる。
減損の詳しい解説はこちら(↓)😉
今回主に減損の対象となったのは、売上が縮み収益性が下がってしまった店舗です。
ファストファッションやネット通販に顧客が流れる状況下で、近年は訪日観光客の旺盛な消費が百貨店の強い味方となっていました。
ところが、郊外・地方店にはその恩恵が届きにくいこともあり、都心の店舗以上に収益性が悪化してしまったのです。
減損してもしなくても、固定資産はいずれ、減価償却を通じて費用に変わります。
そのため減損損失は、「将来予定されていた費用を、まとめて損失として先出ししたもの」とも言えます😊
そういった意味で、減損損失は「今後見込まれる費用の前出し分」なんですね。
特別損失が示唆する三越伊勢丹の戦略とは!?
大きな特別損失によって利益はグッと引き下げられ、2018年3月期の三越伊勢丹は最終赤字に陥ってしまいました。
いえいえ😊 特別損失は「一時的で巨額な損失」という意味です。
翌年度に同じような損失が発生するとは限りません。
さらに、今回の特別損失…原因は店舗や事業の採算悪化ではあったものの、実は今後の業績にとってプラスの効果をもたらしてくれるものでもあるのです✨
赤字の店舗や事業を切り離したことによって、今後は、ここから生じていた赤字を業績に取り込まずに済みます。
また、早期退職を実施したことで、今後の人件費の負担を減らすことができます。
さらに、減損損失を出したことによって、今後の減価償却費を抑えることができます。
これらの特別損失を生み出した行動は、いずれも今後の三越伊勢丹の利益を押し上げる効果を持っているのです。
実際、翌年度の2019年3月期の第1四半期(2018年4~6月)決算を見てみると、営業利益が増えていますね!
とは言っても、このような構造改革と売上高を増やすことはまた別です。
もちろん三越伊勢丹も、引き続き体質改善を進めるとともに、売上高を増やすための手も打っているんですよ😊
その1つが、日本橋や新宿にある都心基幹店の改装です。
この改装の中で、洋服売り場の面積を減らし、代わりに化粧品の売り場を広げるようですね。商品への需要の変化に合わせた売り場になるのです。
この攻めの投資が実を結び、売上・利益ともにステージアップすることで初めて、三越伊勢丹が本当の意味で復活したと言えますね😃
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まとめ
1.2018年3月期の三越伊勢丹の最終赤字は、特別損失が大きく膨らんだことが原因である。
2.この年の三越伊勢丹の特別損失には、赤字の店舗や事業を終了させたことによる損失や、収益性の悪化した店舗の減損損失、早期退職制度の退職金などが含まれている。
3.この年の特別損失を生じさせた行動(店舗・事業の終了や減損処理など)は、翌年度以降の利益を押し上げる効果を持つ。