安易に自社商品の値上げをしてしまったハニー姫💦
前々回(値上げによって利益が増える仕組み)・前回(値上げの成功事例)のレッスンで、値上げによる売上高・利益への影響を学びつつありますが…
実際に値上げをしてみると、経営者の想定を超える外部環境の変化が起こることがあります。
今回は、その変化によってかえって業績が悪化してしまった事例をご紹介していきます!
ビジネスも簿記も初心者のハニー姫🐰✨ある日一念発起し、お菓子のネット販売を手掛ける会社を立ち上げました😊
お付きのウリまるに教えてもらいながら、勉強の日々を送っています✍
値上げの失敗事例を見てみよう~ユニクロ編~
国民的ブランドが値上げ…業績はどう動いた?
いまやグローバルブランドに成長しましたね😊そんなブランドを育て上げたファーストリテイリングの値上げ事例を見てみましょう!
こちらの企業、実は2年連続で値上げを実施しています。
【値上げ前】 2013年度上期 | 【値上げ時(1回目)】 2014年度上期 | 【値上げ時(2回目)】 2015年度上期 |
|
---|---|---|---|
売上収益 | 7643億円 | 9496億円 | 1兆116億円 |
売上総利益 | 3774億円 | 4795億円 | 4769億円 |
粗利率 | 49.4% | 50.5% | 47.1% |
※ こちらの企業の「売上収益」は「売上高」に該当します
表の業績数値は、値上げを実施した時期(1回目:2014/9月~2015/2月、2回目:2015/9月~2016/2月)と、値上げする前年の同時期(2013/9月~2014/2月)を比較したものです✍
ファーストリテイリングは、国民的ブランドユニクロやジーユーを展開する企業です✨商品の企画(素材から開発しているものも!)・生産から販売までを一貫して手掛けているのが特徴ですね。
ユニクロは、2014年秋冬シーズンと2015年秋冬シーズンの2回にわたって値上げを実施しました。
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値上げの背景にあったものとは?
ユニクロの代名詞でもある、あの”求めやすい価格”は、素材を大量に仕入れ、ベトナムやバングラデシュなど世界の工場で大量に生産することで実現しています。
しかし、この時期の円安や原材料費高騰のあおりを受けたために、商品の品質を保つべく値上げを決断しました💪
数字だけを見れば、1回目の値上げは上手くいったかのように見えますね…
ところが、その翌年の2回目の値上げでは、増える売上収益とは対照的に粗利率が低下、売上総利益の金額が縮んでしまいました😢
2回にわたる「値上げ」によって、ユニクロの売上と利益を取り巻く環境にどんな変化があったのでしょうか?
次のパートから、詳しく見ていきましょう😊✨
値上げから値下げへ!売上高と利益に起きた変化とは?
1度目と2度目の値上げの違いとは?
ハニー姫の言う通り、ユニクロの業績が足踏みした大きな原因の1つに、既存店の客数減少が挙げられます。
1回目の値上げを実施した2014年秋冬は、気温の低い日が多いシーズンでした⛄前年の同じ時期と比べると客足は減ったものの、この”寒さ”が追い風となり冬物商品がよく売れたのです!
この追い風の中で単価の高い商品(ウールアウターなど)が好調な売れ行きを見せ、そこに値上げの効果が加わり、客単価(1人当たりの購入額)が大きく増えました🚀
結果、粗利率も改善したのです✨
ところが…!!
2回目の値上げを実施した2015年秋冬シーズン…”寒さ”という強力な味方がいなくなってしまったのです😲
2015年秋冬の値上げ対象は新商品の2割程度でした。しかし、昨シーズンは味方であった天候が今度は”暖冬”となって立ちはだかり、前年とは比べものにならない程大きく客数が減ってしまったのです。
売上高を伸ばした1回目の値上げとは対照的に、その効果がなかなか見えない2回目の値上げ。防寒衣料の売れ時である11月~12月は、前年と比べて10%前後も売上高(既存店)を減らしてしまいました😢
もちろんファーストリテイリング側も、この状況に手をこまねいていたわけではありません!ここから挽回すべく、ある施策を講じます✨
そして…利益という観点で見ると、これがかえって逆効果をもたらしてしまうのです。
客足を呼び戻すための施策とその思わぬ結果とは…!?
2度目の値上げで、客単価の伸び以上に、大きく減ってしまった来店客数。それに引きずられるようにして、売上高も落ち込んでゆきます😢
この不調な売上高を補うために打ちだした対策こそ、値引き販売なのです。
この時期は、週末に限定してセールを実施していました。平日は値上げされた商品を店頭に並べる一方、週末はセール価格で商品を売り出しお客さんを引き付ける戦略だったのです👚
さらに、1月は冬物セールの時期でもありますが…
この強化された値引き販売から生まれたものがあります。
それは…粗利率の悪化です😨
原価が変わらないまま販売額を減らしたために、1つ当たりの商品が生む粗利が減ってしまったんですね。
値上げによって粗利率が改善するのとは、反対の現象が起きたのです。
ここでもう一度、値上げ前後の売上高・粗利率の変化を見てみましょう💡
【値上げ前】 2013年度上期 | 【値上げ時(1回目)】 2014年度上期 | 【値上げ時(2回目)】 2015年度上期 |
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---|---|---|---|
売上収益 | 7643億円 | 9496億円 | 1兆116億円 |
売上総利益 | 3774億円 | 4795億円 | 4769億円 |
粗利率 | 49.4% | 50.5% | 47.1% |
※ こちらの企業の「売上収益」は「売上高」に該当します
2回目の値上げ時に、粗利率が大きく落ち込んでいます。値上げ前と比べても、低い水準ですね💦
一方、値引き販売の強化で客数を回復させた(=購買点数を稼ぐことができた)こともあり、売上収益を増やすことはできています!
(※ 国内ユニクロ事業だけで見ると、売上高は微減でとどまります。海外ユニクロ事業の売上増加などが加わることで増収を保っています)
それでも、粗利率の落ち込みが響き、結果として、売上総利益(=売上高 × 粗利率)は減ってしまいました😢
そうなんです💦
売上高から効率的に粗利を残し(=粗利率を上げる)、より多くのキャッシュ獲得を目指して踏み切った値上げでしたが、そこから生まれたお客さんの反応が、かえって粗利率を下げる方向に会社を動かしてしまったんですね😞
2015年上期は、利益のおおもとである売上総利益が減ってしまったことに加えて、人件費の上昇や物流改革による物流関連費用の増加、さらには為替の影響が響き、最終的な利益(四半期純利益)は前年の半分以下になってしまいました。
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値上げ戦略撤回!その後に起きた変化とは?
2度目の値上げが行われた秋冬シーズンを終え、迎えた2016年春🌸
ユニクロは値上げを撤回し、従来のような割安感のある価格帯に戻しました。
…すると!不調だった11月~2月よりも、春以降の方が客単価が伸びたのです(対前年比)✨
さらに、単価が高いトレンド商品(スカンツなど)の販売が好調だったことも追い風になりました。
値上げ撤回後、すぐに客足が戻ったわけではありませんが、平日の客数も徐々に回復していきました😊
ここで、2回目の値上げ時と、その翌年度の同じ時期(値上げ撤回後)の売上高や粗利率を見てみましょう!
【値上げ時(2回目)】 2015年度上期 | 【値上げ撤回後】 2016年度上期 |
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---|---|---|
売上収益 | 1兆116億円 | 1兆175億円 |
売上総利益 | 4769億円 | 4942億円 |
粗利率 | 47.1% | 48.6% |
曜日に関わらず割安感のある価格を設定したことで(その名も「毎日お買い求めやすい価格戦略」!)、値上げ時のような週末限定セールが抑えられました😊
また、売価コントロールをうまく実施したために、前年のような大幅な冬物セールはせずとも在庫を余らさずにすみました✨
これらの工夫の結果、過度な値引きが抑えられ、粗利率が改善したのです!
同じ規模の売上高からでも、より効率的に利益を獲得できるようになったことが分かります✨
値上げが失敗した企業は他にも!原因はなに?
たとえば、同じくアパレル系企業のユナイテッドアローズ。コスト増をまかなうため、2014年秋冬において商品の値上げを実施しました。
しかし、この値上げが想定以上の客数減少を招き、アウトレットや催事セールを増やすことになります。その結果、ユニクロと同様、粗利率が悪化してしまったのです💦
値上げ撤回がユニクロの業績を回復に導いたのは、消費者が持っているユニクロのブランドイメージと撤回後の価格が合致していたからです✨
ファーストリテイリングの会長兼社長の柳井氏がおっしゃているように、ユニクロのコンセプトは「本当に着心地が良く、高品質でファッション性があり、誰にでも手が届く価格の究極の普段着(公式HPインタビュー記事より)」です👕
値上げ後の価格は、ユニクロの成長を支えたこのコンセプトから外れてしまっていたのかもしれません。
それが、消費者の目には商品の価値と価格のバランスが取れていないように映り、店から客足を遠ざける原因を作ってしまったのでしょう。
これらの商品は、その高い価値を認めたお客さんが一定数いるため、「値上げ後の価格を払ってでも購入する価値がある!」と判断されたのですね👛
人件費の上昇、物流費の増加、為替変動によるコスト増加、原材料費の高騰などなど…企業が値上げをしようとする動機は山ほどあります。
それでも、商品の価値に対する現在の価格にお客さんが納得している場合(ユニクロのようにその価格自体がブランドに組み込まれていることも含め)は、単なる値上げはかえって業績悪化を招くリスクが高いのです😨
値上げを成功させるためには、それに見合った付加価値をお客さんに提供する必要があるんですね✨
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まとめ
1.値上げによって客足が遠のいてしまうことは往々にしてある。これが値上げによる商品単価上昇の効果を上回れば、売上高が落ち込んでしまうこともある。
2.値上げによる客数減少で売上高が落ち込んだ場合、売上高を挽回すべく企業側が値下げ販売を強めることがある。この場合、売上高を確保できても、粗利率の低下によってかえって利益が縮んでしまう恐れがある。
3.商品の価値に対する現在の価格にお客さんが納得している場合は、単なる値上げはかえって業績悪化を招くリスクが高い。値上げを成功させるためには、それに見合った付加価値をお客さんに提供する必要がある。