なぜ企業のストーリーを知る必要があるの?
おいしい料理には下ごしらえが大切✨
それと同じように、
より深い決算書の分析にも下ごしらえが必要なのです。
その下ごしらえとは、企業のストーリー(背景)を知ることです。
企業のストーリーとは、
● 今までの歴史
● どんな戦略を取っているか
● どんな成長ステージにいるか
● 事業を取り巻く環境の変化
などのことです😊
たとえば、人件費が目立って増えている企業(例:飲食店)があったとして…
出店を加速させている企業ならば、
一方、特段、拡大路線を取っていないのなら、
と、企業の今後の業績に対する予想が変わってきます✨
では、次のパートからレベル別に企業のストーリーを知る方法をご紹介しますね😊
一度にすべて取り入れるというよりも、パパッとできそうなところから手を付けてみてくださいね🎵
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<レベル1>企業の基本データをおさえよう♪
※<レベル1>は、「【初心者向け】決算書を分析するポイント:「比較」の技をサクッとおさえよう!」でご紹介した内容と同じです😊
① 成長のレベル感を知ろう
② どんな事業を行っているのかを知ろう
①成長のレベル感
「① 成長のレベル感」というのは、分析したい企業がどのステージ(成長真っただ中にいるのか、成長の勢いが落ち着き安定しているのか、事業が危ない状態にあるのか)にいるのかといったことです。
どのステージにいるかによって、決算書に出てくる項目をポジティブにもネガティブにも捉えられるのです。
例えば、借金が増えた場合を考えてみましょう!
もし、その企業が成長のステージにいるのならば、
一方、その企業が低迷している状況だったら、
と、同じ「借金が増えた」という現象も、その背景によっては明るい未来も心配な未来も予想できてしまうのです。
直近5年間の業績であれば、有価証券報告書の最初のページ(↓)に売上高や利益などの推移がまとめてあります。
第一部 企業情報 > 第1 企業の概況 > 1 主要な経営指標等の推移
このページは、ザックリした推移をつかめるのでとっても便利です🎵
有価証券報告書の入手方法はこちら(↓)
また、企業HPの投資家情報ページに、直近の業績推移をまとめているところが多いので、それを使うのもいいですね😊
②どんな事業を行っているのか
実はこれ、知ってるつもりで知らないことが多いんです。
飲料メーカーでも不動産事業の利益に支えられていたとか、家電製品のイメージが強いのに鉄道や発電所を作っていたとか…よくありますね😊
事業によってトレンドが全く異なるので、主要な事業だけでも押さえておきましょう!
企業HPの会社案内ページには、事業の内容が分かりやすくまとまっていますよ。
もっと掘り下げるのであれば、売上や利益の割合(ザックリ、主要なものだけでも)をつかんでおくとグッドですね✨
有価証券報告書のセグメント情報(↓)を見れば、事業ごとの売上高、利益(前年度分・当年度分)が書いてあります。
第一部 企業情報 > 第5 経理の状況 > 1 連結財務諸表等 > セグメント情報
※企業HPの投資家情報ページにも、セグメント情報が見やすくまとまっていることが多いです😊
<レベル2>企業に訪れている変化を見定めよう
① 事業を拡大させようとしているかを知ろう
② 事業に関係する環境の変化があるかを知ろう
①事業を拡大させようとしているか
事業を拡大させようとしている時とは、たとえばこんなこと(↓)に取り組んでいる時です😊
● 店舗数を増やしている
● 新しい工場や研究所を建てている
● 生産ラインを増やしている
● 企業や事業を買収している
企業がこのような行動に出るときは、大きなお金が動きます💰借金が増えることもあるでしょう。
また、コストが増え、一時的に利益が小さくなることもあります。
一見、マイナスに見える数字の動きでも、将来飛躍する可能性を示唆している場合があるのです😊
これらの情報を知る方法としては、
● 企業HPのIRニュースを見る(大きい投資であれば新聞にも載りますね)
● 有価証券報告書で設備投資計画を見る
等の方法があります。
詳しくは、こちら(↓)で解説しています✨
※上の記事のテーマは設備投資ですが、企業や事業の買収にも同じことが言えます^^
②事業に関係する環境の変化があるか
事業に関係する環境の変化とは、
たとえば…(※ ” → ”の後は、その環境の変化を受けた結果)
● 例年と比べて気温が高い
→ アイスクリームや清涼飲料水の売上高が伸びる
● 人手不足に陥る
→ コンビニや飲食店の人件費がかさむ
● 円高になる
→ 輸出企業の利益が縮む
● 節約志向が強まる
→ 低価格が売りの100円ショップやファミレスの売上高が伸びる
といったことです😊
決算書の数字の動きと” 事業に関係する環境の変化 ”を結びつけて考えることで、業績の変化が一時的なものなのかどうかを推測できますし、今後の予想に役立てることもできます。
何が分析したい企業の” 事業に関係する環境の変化 ”に該当するかは、まず有価証券報告書の事業等のリスク(↓)でチェックしてみましょう🎵
有価証券報告書の記載場所
第一部 企業情報 > 第2 事業の状況 > 事業等のリスク
こちらには、業績に悪い影響を及ぼすと考えられる環境の変化が書かれています。
また、企業が行っている事業を知れば(参考:<レベル1>どんな事業を行っているのか)ある程度推測できますね✨
<レベル3>企業を取り巻くサブキャラの動きをつかもう
商売をしていれば、そこに影響を及ぼす要素(=サブキャラ)もたくさん出てきます!
サブキャラに動きによって、業績は良くも悪くもなりえるのです😊
これらの動きをつかんでおけば、より深みのある分析ができるようになりますよ🎵
① 事業に関係する政策が実行されるかを知ろう
② 大口得意先の業績にアップダウンがないかを知ろう
③ 主な活動地域(国)の環境に変化がないかを知ろう
これらの情報を押さえられるように、新聞などのニュースには注意を払っておきましょう😊
①事業に関係する政策が実行されるか
政策の中には、売上高に大きな影響を与えるものがあります!
たとえば、消費税が上がる前は駆け込み需要が、上がった後はその反動減があります。
最近では酒税法が改正され安売り規制がかかったことで、アルコールを扱う企業(ビールメーカーや飲食店)の販売に影響が出てきていますね。
この他、政府の補助金(または類似のもの)の対象になると、販売量が伸びる傾向にあります😊
過去にも、家電製品を対象としたエコポイントなどがありました💡
②大口得意先の業績にアップダウンがないか
企業の大口得意先を調べる方法はこちら(↓)
売上高の大きな割合を占めるような得意先がいれば、そこの業績のアップダウンが連鎖している可能性が高いです😢
また、仕入先であっても、災害などでその企業の稼働が停止してしまえば、仕入れが滞り販売にも影響が出てきます💦
その取引先が重要なポジションを占めている(ex.代わりを探すのが難しい)ほど、取引先の苦境からもたらされる打撃は大きく長いものになります。
③主な活動地域(国)の環境に変化がないか
販売や生産拠点がある地域の経済情勢や災害の有無なども、決算書にインパクトを与えます。
ヨーロッパで商品を販売している企業は、欧州の経済危機によって売上に打撃がありました。
また、タイで商品の生産を行っている企業は、2011年のタイ洪水被害で生産がストップしてしまいました。
販売や生産の拠点地域は、有価証券報告書に載っている「事業の系統図」や「関係会社の状況」から読み取ることができます。
「事業の系統図」の記載場所
第一部 企業情報 > 第1 企業の概況 > 3 事業の内容(事業内容の説明文の下に記載)
「関係会社の状況」の記載場所
第一部 企業情報 > 第1 企業の概況 > 4 関係会社の状況
また、同じく有価証券報告書の注記を見れば、(ザックリですが)地域ごとの売上高も分かります。
分析したい企業にとって、どの地域の売上高が重要なポジションを占めているかが分かります✨
地域ごとの売上高の記載場所
第一部 企業情報 > 第5 経理の状況 > 多くは【セグメント情報】の次パートに記載(名称は【関連情報】【海外売上高】【地域別情報】など)
このような環境の変化を考慮することで、今後の予想も変わってくるはずです😊
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まとめ
1.企業のストーリー(背景)を押さえて決算書を見ることで、より深い分析ができ、かつ、実態に即した業績予想をすることができる。
2.まず、企業の基本データ(→成長のレベル感、事業内容)を調べてみよう。<レベル1>
3.慣れてきたら、事業やそれを取り巻く環境に訪れている変化、さらに関連する政策の実行や取引先の動向等も調べてみよう。<レベル2・3>