引当金には、企業の状況に合わせて数多くの種類があります。
性格ごとにグループ分けをしながら、どんな例があるのか見ていきましょう!
「そもそも引当金ってどんなモノ?」を知りたい方は、こちら(↓)で解説しています!
収入の減少に備えた評価性引当金 VS 支出に備えた負債性引当金
評価性引当金とは?
引当金の多くは、将来の支出に備えて計上されます。
一方で、一部の引当金は、将来入ってくるはずの収入が失われるリスクに備えて計上されます。貸借対照表では、資産からマイナス表示されるのが特徴です。
このような引当金を評価性引当金と呼びます。
説明だけでは分かりにくいので、具体例をご紹介しましょう😊
代表例は貸倒引当金!
評価性引当金の代表例は、何といっても貸倒引当金です。
貸倒引当金は、将来、債権(売掛金や貸付金等)が入金されない可能性が高い場合に、その損失に備えて計上されます。
表示の仕方も特殊であり、貸借対照表の該当する債権の下で貸倒引当金がマイナス表示されるのです。つまり、入金されないと想定される金額を差し引くことで、債権を入金されるであろう金額に修正しているんですね。
このように資産の評価額を左右する存在であることが、評価性引当金と呼ばれる所以ですね。
貸倒引当金の詳しい解説はこちら(↓)アシックスの実例入りです。
負債性引当金とは?
負債性引当金とは、将来の支出に備えて計上される引当金です。引当金の多くが、こちらのグループに分類されます。
さっそく具体例を見てみましょう!
負債性引当金の具体例
負債性引当金は多くの種類があるため、決算書で頻出する負債性引当金をご紹介します。
● 賞与引当金 →従業員への賞与の支給に備えた引当金
● 役員賞与引当金 →役員への賞与の支給に備えた引当金
● 退職給付に係る負債(退職給付引当金)→従業員への退職金の支給に備えた引当金
● 返品調整引当金 →販売済み商品が返品された際の支出に備えた引当金
● 製品保証引当金 →販売した商品のアフターサービスにかかる支出に備えた引当金
スポンサーリンク
費用を計上する費用性引当金 VS 収益からさし引く収益控除性引当金
費用性引当金とは?
引当金を計上すると、同時に費用も発生します。たとえば、貸借対照表に「賞与引当金」を計上するときは、「賞与引当金繰入額」という費用も生じます。
このような引当金のグループを、費用性引当金と呼びます。
一部の例外(後ほどご紹介する収益控除性引当金です)を除き、大半の引当金が費用性引当金に分類されます。
収益控除性引当金とは?
一方、引当金を計上する際に、対応する金額を費用とするのはなく収益から控除する引当金があります。これが収益控除性引当金です。
例を見た方がイメージがわきやすいと思いますので、具体例をご紹介しますね😊
費用性引当金と収益控除性引当金の具体例
先ほどご紹介した負債性引当金の具体例を、費用性引当金と収益控除性引当金の2つのグループに分類してみます。
● 賞与引当金 →賞与引当金繰入額を費用に含める
● 役員賞与引当金 →役員賞与引当金繰入額を費用に含める
● 退職給付に係る負債(退職給付引当金)→退職給付費用を費用に含める
● 返品調整引当金 → 返品調整引当金繰入額を売上総利益から控除する
● 製品保証引当金 →製品保証引当金繰入額を費用に含める
このうち、返品調整引当金のみが収益控除性引当金に該当し、それ以外の引当金は全て費用性引当金に含まれます。
スポンサーリンク
資生堂の引当金を見てみよう
ここまで、多くの企業に共通して見られる引当金をご紹介してきました。ここで、資生堂がどんな引当金を計上しているか見てみましょう!
資生堂 2016年12月末時点の引当金(前パートでご紹介した引当金は除く)
● 危険費用引当金(この1年で2倍近くに)
● 債務保証損失引当金
● 環境対策引当金
● 構造改革引当金(この年に0円になる)
危険費用引当金という見慣れない引当金は、海外子会社の訴訟リスク、税務リスクなどに備えて計上しているものです。
環境対策引当金は、法律で義務付けられているポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理に備え、処理に必要な費用を見込んで計上しています。
構造改革引当金は、早期退職者の退職割増金など、構造改革による支出を見込んで計上していたものです。実際に該当する支出があったために、事業改革引当金が取り崩され0円になったものと思われます。
いずれの引当金も、負債性引当金かつ費用性引当金に当てはまりますね。このように、企業のその時々の事業環境に合わせて、様々な種類の引当金が登場します。
資生堂はここ数年間、在庫の削減、人件費の削減、拠点の再編といった改革に世界全域で取り組んできました。この改革によって組織や業務を見直し、再び成長のエンジンをかける狙いだったのです。
この努力の成果か、2017年度は売上高、営業利益とも過去最高を見込んでいます😊
スポンサーリンク
まとめ
1.将来の支出に備えて計上される引当金は負債性引当金と呼ばれる。一方で、将来入ってくるはずの収入が失われるリスクに備えて、資産からマイナス表示する引当金を評価性引当金と呼ぶ。
2.計上と同時に費用が発生する引当金を費用性引当金と呼ぶ。一方で、対応する金額を収益から控除する引当金を収益控除性引当金と呼ぶ。
3.引当金の多くは、負債性引当金や費用性引当金に該当する。評価性引当金の代表例は貸倒引当金、収益控除性引当金の代表例は返品調整引当金である。