輸出企業と輸入企業の抑えるべきポイント
為替レートが円高や円安に動いたとき、輸出企業や輸入企業にはどんな影響があるのでしょうか?
ポイントはこちら!
輸出企業や輸入企業は外貨を使って取引をしている
海外にお客さんがいる輸出企業は、販売代金(売上高)を外貨で受け取ります。
海外から材料や商品を仕入れる輸入企業は、仕入代金(後々の売上原価につながる)を外貨で支払います。
決算書にこの売上高、売上原価を表すときは、日本円に直さなくてはなりません。
すると、その年の為替レートが円高か円安によって、日本円に直した後の金額が全く変わってきてしまうんです!
この理由を次のパートから詳しく見ていきましょう^^
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輸入企業に与える円高・円安の影響とは?
輸入企業の業績に対して、為替レートはどのように働きかけるのでしょうか?
ここでは、輸入企業の代表例として大王製紙のケースを見てみましょう。
大王製紙は、材料となる木材チップなどを輸入に頼っています。一方、販売のほとんどは日本国内向けです。
簡単な例を使って、輸入企業と為替レートの関係を見てみよう
この大王製紙のケースをもとに、簡単な例で考えてみましょう^^
ある企業が毎年100ドルの商品を仕入れ(輸入)、それを国内に10000円で販売していたとします。
1ドル=80円(円高)の年は…
● 仕入れ価格: 8000円(100ドル×80円/ドル)
● 利益: 10000円-8000円=2000円
と、2000円も利益が出ます!
一方、1ドル=120円(円安)の年は…
● 仕入れ価格: 12000円(100ドル×120円/ドル)
● 利益: 10000円-12000円=▲2000円
と、2000円の赤字になってしまうのです。
商品の仕入れは外貨で行っているため、円高か円安かによって円貨に直した仕入れ価格は全く変わってしまうのです。
一方、元々円貨を使っている販売価格は為替レートの影響を受けません。
そのため、円安になるほど仕入れ価格(売上原価)が膨らみ、利益を圧迫することになるのです。
円安が大王製紙に与えた打撃とは?
円安になると、大王製紙には…
● 輸入した材料費が膨れ上がりやすい
● 販売は外貨で行われないため円安の恩恵を受けられない
という現象が起こります。
それが顕著に表れたのが、大王製紙の2017年4月~6月の業績です。
前年の4月~6月と比べて、売上高は10%増えた一方で、営業利益は80%以上も減ってしまっています。
大きな原因は2つあります。
1.原材料である古紙価格が上がった
2.前年の4月~6月よりも円安であった
古紙価格が上昇したことに加えて、木材チップの輸入額が円安により膨らみました。その結果、材料費を含んでいる売上原価が大きく増えたのです。
一方、円貨で行われる国内向けの販売は、円安の影響を受けません。
そのため、せっかく販売が拡大(=売上高が増加 ※ここは為替レートとは関係なく)しても、そこから売上原価や経費を差し引いた営業利益は減少してしまった、という結果になったのです。
輸出企業に為替レートはどんな影響を及ぼす?
今度は、輸出企業について見てみましょう。
輸出企業の場合は、外貨で販売代金を受け取ります。
そのため、同じ100ドルの売上高であっても、
● 1ドル= 80円(円高)なら 8000円(=100ドル×80円/ドル)
● 1ドル=120円(円安)なら12000円(=100ドル×120円/ドル)
と、円安になるほど円貨に直した売上高が膨らんでいくのです。
国内から仕入れをしていれば、仕入れ価格は為替レートの影響を受けません。すると、円安パワーを受けて売上高が膨らんだ分だけ、利益も底上げされます。
また、海外から仕入れている場合であっても、たとえば販売と仕入を同じ通貨で行っている場合、「売上高>売上原価」という構造ならば利益は円安の恩恵を受けることができます。
こちら(↓)では、輸出企業代表としてトヨタ自動車と円安の関係を解説しています(もう少し詳しいです)。
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まとめ
1.輸入企業は仕入代金を外貨で支払うため、円安になるほど、円貨に直した売上原価が膨らみ利益を圧迫するようになる(特に国内向けに販売している場合)。
2.輸出企業は販売代金を外貨で受け取るため、円安になるほど、円貨に直した売上高が膨らむ。国内からの仕入れがメインであれば、円安によって膨らんだ売上高がそのまま利益アップにつながる。
円安が企業業績に与えるその他の影響については、こちら(↓)で解説しています。