無形固定資産とは、目には見えないけれど長期にわたって利用する資産のことです。
そんなちょっと実態のつかみにくい無形固定資産について、実際にどんな種類があるのかを見てみましょう😊
無形固定資産の概要についてはこちら(↓)で解説しています。
ここは押さえておこう!よく見る無形固定資産
定番項目がおよそ固定されている有形固定資産と違って、多くの企業が共通して持っているような無形固定資産は多くありません。
それぞれの企業の決算書に登場する無形固定資産は、その企業のビジネスの特徴をよく表しているものが多いのです。
また、1つの企業の決算書に出てくる無形固定資産の種類は、有形固定資産ほど多くありません。
そんな無形固定資産の中でも、比較的よく目にする項目をご紹介します。
● ソフトウェア ★★
● のれん ★★
● 借地権 ★
● 商標権 ★★
● 特許権 ★
(※)★★ …決算書によく登場する項目
★ …頻出項目ではないが、特定の業種で登場しやすい項目
国際会計基準(IFRS)を適用している企業では、のれん以外の無形固定資産を「無形資産」とひとくくりにして表示しています。
この中には、上記でご紹介したもののほか、顧客基盤や開発資産などが含まれています。
以下で、1つ1つ簡単にご説明しますね😊
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ソフトウェア
ソフトウェアは、コンピューターのプログラム等を指します。
これには、社内で利用するもの(会計システムなど)のみならず、お客さんに販売するためのソフトウェア(に関連して発生した費用)も含みます。
多くの企業は、少なくとも社内用のソフトウェアは利用しています。そのため、無形固定資産の欄にソフトウェアを表示している決算書はよく見かけますね。
のれん
買収先企業の信用力やブランドといった、目には見えない価値に充てられた買収価格のことを言います。
M&Aをした年には、一気に残高が膨らみます。一度に増える金額も大きくなりやすいという特徴があります。
大型買収を繰り返しているソフトバンクでは、この5年間(2012年度~2017年度)でのれんが4倍以上にも増えました。
いまや、のれんだけで4兆円以上の残高(総資産の14%程度)を持っているのです(2018年3月31日現在)。
買収先の事業がぐらついてくると、のれんを減損するリスクが高まります。
のれんの減損損失は巨額になる傾向にあり、利益に深いダメージを与えるおそれもはらんでいるのです。
近年では、東芝や日本郵政で起こった巨額ののれん減損が話題になりましたね。
借地権
借地権は、第三者の土地を借りて利用できる権利のことです。
借りた土地の上にビルや住宅を建ててビジネスを行う不動産会社(住友不動産や三菱地所など)では、借地権の金額が大きくなる傾向にあります。
商標権
商標権とは、商品を識別するための名前や記号などを登録することで、それらを独占的に使用できる権利のことです。
たとえば、多くのブランドを有する資生堂では、固定資産の中でも商標権の残高が大きな割合を占めています。戦略的に商標権を買い取ることもしているようです。
特許権
特許権とは、特許を受けた発明を独占的に使用できる権利のことです。
特に製造業などで見られる項目ですね😊
変わり種⁉企業の特徴がよく出た無形固定資産
ここまでご紹介した無形固定資産のほかにも、ビジネスの特徴をよく表した個性的な無形固定資産を載せている企業があります。
FCCライセンス~ソフトバンク~
ソフトバンクの無形資産の中には、FCCライセンスという聞きなれない項目があります。(※ソフトバンクは国際会計基準を適用しているため、決算書では「無形資産」という科目にのれん以外の無形固定資産をまとめています)
これは、アメリカで特定の周波数を利用するためのライセンスのことです(FCCとは、アメリカで放送通信の規制や監督を行う機関の名前ですね)。
日本のみならず、アメリカでも携帯事業を展開するソフトバンクならではの科目と言えます。
その他、ソフトバンクの無形資産には、顧客基盤、テクノロジー、ゲームタイトル(2015年度まで)といったものが含まれています。
FCCライセンスも含め、これらの無形資産はM&Aによって獲得してきたものですね。
開発資産~ホンダ~
こちらは変わり種というわけではありませんが、最先端の研究開発に力を注いでいるホンダならではの項目です。
国際会計基準を適用している企業では、一定の開発費は無形資産として計上しなくてはならないのです(ここは日本基準との大きな違いです)。
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まとめ
1.無形固定資産の中では、ソフトウェア、のれん、商標権といった項目が多くの企業の決算書で見られる。
2.決算書に掲載される無形固定資産の項目数は有形固定資産ほど多くはないものの、その内容には企業のビジネスの特徴が出やすい。ソフトバンクのFCCライセンスのように見慣れない項目も登場しうる。