癒し系出演者の解説がほっこりとした気分にさせるテレビ番組、「キューピー3分クッキング」。
野菜の中にアート性すら感じさせる色使いや配置を施した数々のCM。
レシピサイト顔負けの華やかさと分かりやすさを兼ね備えたホームページ掲載のレシピ達。
いずれも調味料を主力製品としている企業、キューピーが提供しているものとは言え、単に商品を紹介する以上の力の入れっぷりを感じさせます。「キューピー3分クッキング」はほんの10分ほどの番組ですが、レシピ番組界の中ではゆるぎないポジションを築いています。
キューピーの広告宣伝法の特徴とは?
これらのメディアの内容に共通しているのは、キューピーの商品を使いながらレシピを紹介していることです。
確かにレシピと絡めて紹介すれば、商品の具体的な使い方も分かります。
その一方で、商品の広告宣伝には、旬のタレントさんに商品名を連呼してもらったり、商品自体が際立つような鮮烈な演出を加える方法も多く採用されています。
キューピーのように、レシピ自体が前に押し出されているうえ、全体として落ち着きのある雰囲気でまとめられた宣伝方法はめずらしいのかもしれません。
なぜキューピーは、あえてレシピを主役にした宣伝を行うのでしょうか?まずは、キューピーにとってマヨネーズやドレッシングがどんな存在なのかを探ってみるところからひも解いてみましょう^^
マヨネーズがキューピーの経営に与える意味とは?
キューピーの販売している商品を見てみると、どれも食卓でおなじみの品々ばかりです。
キューピーの代名詞と言えるマヨネーズやドレッシング、ジャムに、パスタソースに…ベビーフードやカットサラダ、健康食品もあります。
2016年12月から2017年8月までの業績を見てみると(キューピーは11月に1年間の決算を行っています)、売上高の4分の1ほどをマヨネーズやドレッシングなどの調味料事業が稼いでいます。そして、同じく売上高の4分の1を物流システム事業が占めています。
なんと、キューピーは食品以外の領域も手掛けていたんですね。実は、キューピーは食品を専門にした配送事業を行っているんです。
その他、タマゴ事業、サラダ・惣菜事業や加工食品事業なども展開しています。
マヨネーズやドレッシングが売上高の4分の1だけ、というのは少し意外な気もします。しかし、利益面から内訳を見てみると‥
なんと調味料事業はキューピーの営業利益の半分近くを占めているのです^^これは、調味料事業が他の事業と比べてダントツに利益率が高いためです。やはりキューピーの業績面においても、マヨ&ドレはエース格なんですね。
キューピーの中で調味料は付加価値商品。効率的に利益を稼ぎ出してくれるため、積極的に消費者にアピールしたい商品なんです。
キューピーがレシピを提案する理由
家庭用のマヨネーズ&ドレッシング市場では、キューピーはトップの座を走り続けています。
そんなキューピーがさらなる売上高の伸長を目指すべく力を入れているのが、調味料市場そのものを広げることなのです。
たとえば、70%のシェアを取っている商品がある場合、市場が1000億円から2000億円に拡大すれば、売上高も700億円から1400億円にのばすことができます。
大半のシェアを獲得している商品の場合、残りのシェア獲得に苦心するよりも、市場拡大を狙った方が効率的に売上高を増やすことができます。盤石のシェアかつブランド力を誇るキューピーだからこそ取れる戦略なのかもしれません。
キューピーのCMやHPを見てみると、一口にサラダと言っても、大ぶりの根菜類をメインに仕立てたり、鮮やかな色どりの野菜にローストビーフや魚を添えたりなど、ごはんのわき役には留まらない存在感抜群かつ新鮮な感覚のサラダが紹介されています。
また、マヨネーズ1つとっても、たとえばサラダ油代わりにマヨネーズを使ってレタスを炒めるなど、シンプルに野菜や卵にディップするおなじみの方法とは異なるレシピを紹介しています。
あえて斬新さを狙ったレシピを紹介するのは、料理の新たなスタイルを浸透させ、それらに添えられるキューピー商品、特に調味料の使用シーンを増やすためなんです。つまり、マヨネーズやドレッシングの市場の枠を広げようとしているんですね。
キューピーがメディアを通して新たな料理のスタイルを提案し続ける理由はここにあります。
家庭で作られるサラダの幅が広がれば、同じくキューピーの高付加価値商品であるカットサラダにとっても追い風になりますね。
キューピーの業績の推移を見てみると、やはり調味料やカットサラダが利益をけん引しているようです。派手さはないものの緩やかにキューピーは業績を伸ばしています^^