今、業績をグングン伸ばしている化粧品メーカーといえば…コーセーです😊
収益性が向上したヒミツについてはこちらで解説しました(↓)
今回は、コーセーの財務体質(※倒産しにくい体質かどうか)に起きた変化に着目してみます!
事業を続ける安定性…やっぱり向上している!
事業を安定して続けていけるかは、資金の潤沢さにかかっていると言っても過言ではありません。
さらに、将来の返済や支払いに回さなくて済む資金が多いほど、その安定性は高まると考えられます。
このポイントを確認するために、コーセーの自己資本比率の変化を見てみましょう!
自己資本比率とは…
自己資本比率 = 自己資本 ÷( 負債 + 純資産 )
企業が使うお金のうち、返済・支払いに充てる必要のない資金の割合のことです。この比率が高いほど、借金の返済に追われずに安定して事業を続けられると言えます。
返済しなくていい資金の割合が増えている
コーセーの自己資本比率を4年前と比べてみましょう。
コーセーの自己資本比率
2013年3月期:64.8%
↓
2017年3月期:66.3%
1.5ポイント上昇していますね!
毎年の利益増大によって事業の安定性が増した
自己資本比率が上がった理由は、シンプルに自己資本が増えたことです。
事業拡大にともなって負債も膨らんでいますが(この理由は後ほど解説します^^)、それ以上に自己資本が増えているのです。
自己資本は、毎年の当期純利益(最終的に手元に残る利益)が足し込まれて増えていきます。
業績をグングン伸ばしているコーセーの当期純利益は、年を追うごとに増大しているため、自己資本もどんどん成長しているのです。
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積極投資を行うコーセー、投資余力の変化は?
事業を拡大するために、近年のコーセーは工場建設や企業買収といった様々な投資を行っています。そして投資には、やっぱりたくさんのお金を使いますね。
それだけのお金が流出しても事業を回していけるのでしょうか?その底力を固定比率を使って測ってみたいと思います😊
固定比率とは…
固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本
固定比率が100%以下であれば、借金に頼らず自前の資金で投資を行えていると言えます。
固定比率が100%を超えて上昇していくほど、長い目でリターンを見るべき投資の資金を借金等でまかなっている割合が大きくなり、借金等の返済に行き詰まるリスクが出てきます。
コーセーの固定比率を4年前と比べてみると…
コーセーの固定比率
2013年3月期:51.7%
↓
2017年3月期:45.9%
もともと100%を大きく下回る良好な数値でしたが、さらに6ポイント近く下落しています!
固定比率が低下したということは、投資した金額に対し、返済しなくてよい自前の資金(自己資本)の割合が大きくなっているということです。
つまり、投資余力が高まっているんですね。
近年のコーセーは、増産体制に備えて工場を建てたり、企業を買収したりしたことで固定資産が増えています。しかし、それ以上に毎年の利益の積み重ねで自己資本が増えているのです。
身の丈を超えない範囲で投資を行い、その結果を利益につなげるという好循環ができているのです。
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ちょっと気になる在庫の増え方
利益が拡大していることで自己資本が蓄積され、倒産のリスクもさらに低下している…ここまで、コーセーの良い変化に着目してきました。
しかし、ちょっと気になる点もあります。それは、在庫の増え方です。
事業が拡大し商品への需要が増えれば、当然企業が用意しておく在庫も増えていきます。
しかし、コーセーの場合、商品へのニーズ以上に在庫が増えている可能性があるんです。
経営指標を使って在庫の増え方を見てみよう
これを測る指標が在庫回転期間です。
在庫回転期間とは…
在庫回転期間(月)= 棚卸資産 ÷ 売上原価 × 12ヵ月
持っている在庫が何ヶ月分の販売に相当するかを計算する指標です。この指標をみることで、企業の売上規模に照らして在庫が余り過ぎていないかを測ります。
この数値が長くなってくると、在庫余りの可能性があります。
コーセーの在庫回転期間はというと…
コーセーの在庫回転期間
2013年3月期:6.0ヵ月
↓
2017年3月期:7.3ヵ月
上記の数字は、「2017年3月期の決算日時点で持っている在庫は、7.3ヵ月分の販売をもたせることできる」ということを表しています。
2013年3月期は6ヵ月分の販売に必要な在庫を持っていたのが、4年の時を経て1.3ヵ月長くなっていますね。
実は、2013年3月期以前から在庫回転期間の長期化は始まっており、年を追うごとにどんどん長くなっているのです。
在庫回転期間が長くなった理由とは?
もちろん、顧客の需要増大をにらんである程度の在庫を用意しておく必要はあります。ですが、在庫回転期間が長くなっているということは、実際の販売の伸び以上に在庫が膨れ上がっているということです。
近年のコーセーは、百貨店以外にもネット通販やドラッグストア、コンビニといった複数の販売チャネルを駆使するようになっていますし、海外事業の展開も推し進めています。また、主力のブランドついても、多様化する顧客に合わせて毎年のように新ラインが投入されていますね。
このように販売チャネルや商品数が増えたことで、以前よりも在庫管理が難しくなっているであろうことが想像できます。
また、止まることなく拡大している販売状況から、一歩先の需要を見込んだ在庫を用意しているのかもしれませんね。
いずれにしろ、在庫があるということは、そこにキャッシュが留まっていることを表します。過剰に在庫があるとキャッシュを有効に使えませんし、売れ行きの悪い商品が溜まっている可能性も疑われます。
現在はキャッシュフローを悪化させるほどではありませんが、このまま在庫回転期間が長くなりつづけるのであれば注意が必要です!
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まとめ
1.コーセーの自己資本は、毎年増える利益を受けて成長し続けている。これにより投資余力が蓄えられて、事業の安定性が増している。倒産のリスクがより低くなった状態と言える。
2.一方で、実際の販売の伸び以上に在庫が増えている。この傾向が続けば、資金繰りにも影響が出てくるため注意が必要である。