コーセーの営業利益率は急上昇中
実は、コーセーの業績はグングン成長中なんです。
2017年3月期の業績を4年前(2013年3月期)と比べてみると…
● 売上高 →1.6倍
● 営業利益 →3.3倍
(※ 2017年3月期は、売上高2667億円、営業利益391億円でした)
と、見事ジャンプアップしています。
この間、営業利益率も高まっていたことで、売上高以上に営業利益が伸びているのです。
営業利益率(売上高営業利益率)とは…
営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100
「いかに効率的に、売上高から営業利益をしぼり出しているか?」を測る指標です。売上高が同じ金額でも、営業利益率が高い方が営業利益は大きくなります。
では、その営業利益率はどの位成長したのでしょうか?
コーセーの売上高営業利益率の推移
2013年3月期:7.0%
↓
2015年3月期:10.9%
↓
2017年3月期:14.7%
この4年間で、なんと2倍以上に成長しました!
コーセーの営業利益率アップの秘密は何でしょうか?次のパートから探っていきます😊
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人件費に大きな変化があった!
実は、コーセーの売上高人件費率には大きな変化が起こっているのです!
売上高人件費率とは…
売上高人件費率(%) = 人件費 ÷ 売上高 × 100
この比率が高いほど、獲得した収益の多くを従業員への給料等へ回していると言えます。
コーセーの売上高人件費率について、4年前と比べてみましょう。
コーセーの売上高人件費率(※販管費に含まれる人件費のみ使用)
2013年3月期:25.6%
↓
2017年3月期:19.6%
(※)人件費には、販管費に含まれる「給料及び手当」「退職給付費用」「法定福利費」の合計を使用しています。
なんと…6%も下がっています!
裏を返すと、売上高人件費率の変化だけで、営業利益率を6%も上げることができているのです。
美容部員を通さない売上が増えている
コーセーの商品の中でも、近年は「雪肌精」や「エスプリーク」といったドラッグストアで売られる商品が売上を伸ばしました。爆買いの恩恵もここに含まれていますね。
また、ここ数年のコーセーは、海外事業も含めたネット通販に力を入れています。
ドラッグストアとネット通販、これらの販売方法に共通するのは美容部員を介さないということです。
コーセーの従業員の多くは、美容部員(デパートの化粧品売り場などで、お客様にメイクやアドバイスをして化粧品を販売する人)で占められています。美容部員を介さない売上が増えれば、当然、売上高に対する人件費の負担も小さくなりますね。
1人当たりの生産性が上がっている
従業員1人当たりが生み出す収益が増えれば、売上高人件費率も下がります。
このポイントを見るために、コーセーの1人当たり売上高をチェックしてみましょう。
1人当たり売上高とは…
1人当たり売上高 = 売上高 ÷ 従業員数の平均
従業員1人当たりがどれだけの売上高をあげているかを測る指標です。
コーセーの1人当たり売上高に起きた変化とは?
たとえば3年前と比較してみると、コーセーの1人当たり売上高は大きく増えています。
コーセーの1人当たり売上高
2014年3月期 :15百万円
↓
2017年3月期 :20百万円
これは、同じ金額の売上高を稼ぐにしても、そこに必要な従業員が少なくて済むようになったことを表しています。
効果的に人件費を抑えられるようになったんですね。
生産性が上がった理由とは?
先ほどご紹介した「美容部員を通さない売上が増えている」ことも、計算上、1人当たり売上高の増加に影響していますね。では、その他にはどんな要因があるでしょうか?
最近のコーセーの売上高を引っ張り上げたのは、インバウンド消費と言われています。土日関係なく来店する訪日客が増えたことで、美容部員の手待ち時間が減り、結果として美容部員1人当たりの売上高が増えたことが考えられます。
これは、管理業務にたずさわる従業員も同じことが言えますね。たとえ売上高が2倍になっても管理業務まで倍増するとは考えられませんし、業務が増えても従来の就業時間である程度対応できるはずです。
実際に、この4年間で売上高は50%以上も増えているのに対し、従業員数の増加率は5%にも届きません。
このように、人件費は固定費(売上高の増減に関わらず一定額生ずるコスト)の占める割合が大きいため、売上高が伸びるほど売上高人件費率は抑えられる傾向にあるのです。
(※出店攻勢をかけ、従業員数をどんどん増やしている企業は、必ずしもこの傾向に当てはまるわけではありません。)
特に、コーセーの1人当たり売上高が顕著に上がったのは…
一人一人への丁寧な接客が求められる美容部員はそれなりの人数が必要とされます。そのため、人件費という面で見ると、コーセーにとって大きなコストとなります。
その大きな負担がある一方で、高額な商品を扱うがゆえに、美容部員の獲得する売上は来店客の有無によって大きくぶれやすいのです。
そのため、美容部員が多くを占めるコーセーでは、特に上記の傾向(来店客が増え売上高が伸びるほど、売上高人件費率が抑えられる)が顕著であると考えられます。
M&Aのチャレンジに成功した!
コーセーの営業利益率を押し上げたもう1つの立役者は、2014年に買収したタルトです。
タルトは、アメリカの自然派化粧品メーカーであり、成長真っただ中の企業です。
広告宣伝費に莫大な資金を投じている化粧品メーカーが多い中、タルトはSNSをうまく活用することで効果的に商品の宣伝をしています。広告宣伝費を抑えたタルトは利益率が高いのが特徴です。
コーセーの営業利益率が10%前後で推移したのに対し、タルトの営業利益率は買収した時点ですでに20%近く、2017年3月期には約30%にまで伸長しました。
この高利益率体質のタルトを組み込んだことで、コーセーの営業利益率はさらに押し上げられたのです(1.5~2%程度の押し上げ効果と推測されます)。
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まとめ
1.業績拡大中のコーセーは、特に営業利益率の伸びが顕著である。2013年3月期に7.0%だった営業利益率は、2017年3月期には14.7%にま成長した。
2.営業利益率を押し上げた大きな要因は、売上高人件費率が低下したことである。ドラッグストア経由の販売拡大、インバウンド消費の盛り上がり等が影響している。
3.また、高利益率体質の米化粧品メーカー・タルトを買収したことが、さらにコーセーの営業利益率を押し上げた。