ネット販売拡大の波に乗り、成長目覚ましいスタートトゥデイ✨(「ZOZOTOWN」の運営会社ですね。)
毎期増収増益を続けていたスタートトゥデイですが、
2018年4~6月に減益(前年同時期よりも利益が減った)となったことを発表し、話題になりました。
その理由として、2018年から本格的に展開されたプライベートブランド「ゾゾ」の先行費用が挙げられています。
この言葉の裏には、「減益は一時的なもの」という意味が隠されていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
今回は、スタートトゥデイが減益となった理由について、
● 会計的な視点から見てみる
● 減益となった本当の理由に迫ってみる(原因はプライベートブランドだけ?)
をテーマにお送りします😊
減益になった理由を会計的に見てみる
では、さっそくスタートトゥデイの2018年4~6月(第1四半期)の損益計算書(一部)を見てみましょう😊
手書きで失礼します。
※2019年3月期 第1四半期決算短信より
本業の採算性を表す営業利益が大きく減っており、それがその他の各利益をも減益に導いてしまっています。
本業の収益性になんらかの原因があったことが分かりますね。
あるコストに変化あり!
では、どこに原因があったのか?
ということで損益計算書をよく見てみると…販管費及び一般管理費がズドーンと増えています。
もちろん事業の規模が拡大しているのでコストも増えますが、
売上高に対する販管費及び一般管理費の比率(=売上高販管費率)を見てみると…
スタートトゥデイの売上高販管費率
2017年4~6月 …55.3%
↓
2018年4~6月 …69.2%
🌟 売上高販管費率(%)= 販売費及び一般管理費 ÷ 売上高 × 100
と、やはり売上高に対する販売費及び一般管理費の割合も増えているんですよね。
つまり数字だけを見ると、前年の同じ時期と比べて、
同じ金額の売上高を生み出すのにより多くのコスト(販売費及び一般管理費)が必要になってしまっている
=売上高を生み出すための効率性が悪くなっている
と捉えることができます。
では、販売費及び一般管理費の中にどんな原因が潜んでいるのか、ここからさらに詳しく掘り下げていきましょう🔑
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増収の裏で気になること
ところで、1つ気になるのは、
2018年4~6月の数字を見る限り、売上高の成長の勢いが弱まっているように見えるということ。
売上高は、相変わらず二桁の伸び率を記録していますが、
前年、前々年の4~6月が+40%程度の伸び(対前年同期比)であったのに対し、2018年4~6月は+23.8%です。
購入者数の推移を見てみても、明らかに増加幅が縮んできています。
成長はなはだしかった既存の事業(ZOZOTOWN)に関しては、少しずつ落ち着きを見せているようにも見えるのです。
それが、これから話に出てくる新規事業の原動力になっているのかもしれませんね。
コストが膨らんだのはPBのせいだけ?
では、減益の原因を突き止めるため、販売費及び一般管理費をバラバラにしていきましょう😊
販売費及び一般管理費は、従業員さんへのお給料や、事務所の賃借料、広告宣伝費といった多様な項目により構成されています。
このそれぞれの項目ごとに、売上高比率を出してみましょう。
すると…
特に、荷造り運賃、プロモーション関連費用において売上高比率が高まっていることが分かります。
プライベートブランドの先行費用の正体
このプロモーション関連費用こそ、噂のプライベートブランドの先行費用が込められている項目なのです。
その先行費用の正体はスタートトゥデイ特製の水玉全身タイツ、ZOZOSUITです!
ZOZOSUITは、自宅での体型計測を可能にするというもの。注文すると、なんと無料で送ってくれます。
ここで計測した結果をもとに、プライベートブランドの商品を買ってもらおうという戦略なのです✨
このZOZOSUITを無料配布していることによる費用や、プライベートブランド事業の広告宣伝費がプロモーション関連費用をググっと押し上げました。
実はプライベートブランド以外にも原因が
ZOZOSUITを無料配布するとなると、当然配送費もかかってきます。
これが荷造り運賃が増える一因となったのですが、ここにはもう1つ大きな原因が隠されているのです。
それは、運送会社ヤマト運輸の値上げです。
(人手不足、業績悪化に苦しんだヤマト運輸が値上げに踏み切ったことは、大きな注目を浴びましたね。)
現在のZOZOTOWNは、配送料を一律200円としているので、残りの金額はスタートトゥデイ側が負担していることになります。
ZOZOSUITの配布枚数的にも、荷造り運賃の増加はヤマト運輸の値上げが大きいのではないかと思います。
この他、人件費や賃借料も増えていますね。
人件費の増加には、プライベートブランドを展開をするために人員を増強した影響が含まれています。
しかし、既存事業であるZOZOTOWNの方でも、取扱商品点数が拡大していくことを見込んで、物流拠点を増やし、エンジニアを積極採用しています。
これによる人員や賃借料の増加も、しっかりと販管費の押し上げ要因となっているのです。
PBでどこまで業績を押し上げられるか
2018年4~6月に減益となってしまったのは、プライベートブランドの先行費用が大きな理由になっているのは確かです。
しかし、プライベートブランド以外にも、
既存事業(ZOZOTOWN)が伸びていく前提で増やされたコストや配送運賃の値上げも深く絡んでいます。
既存事業がこれらのコストに応えられるような伸びを引き続き見せていけるのか。
さらなる成長の起爆剤としてプライベートブランドが花開き、簡単に先行費用のモトを取ってしまうのか。
スタートトゥデイの見どころはまだまだたくさんありそうですね。
商品の受託販売をメインに行っていたスタートトゥデイにとって、プライベートブランド事業を成功させるためには、商品の企画や生産といった新たなハードルを越えていく必要があります。
それでも、斬新なアイデアが盛り込まれたプライベートブランド事業が、これからどんな展開を見せ、消費者にどう受け入れられていくかは楽しみなところでもあります😊
どうやら、プライベートブランドのビジネススーツは、受注が計画を上回っているのだとか✨
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まとめ
1.スタートトゥデイの2018年4~6月の業績が減益となったのは、販売費及び一般管理費が大きく増加し、売上高販管費率が悪化したためである(売上高を稼ぐ効率が下がった)。
2.販売費及び一般管理費が増加した背景には、プライベートブランドの先行費用のほか、配送業者の値上げ、ZOZOTOWNの拡大を見込んだ人件費や賃借料の増加などもある。