今回は、棚卸資産を360度ぐるっと解説していきます!
決算書を読むために必要な͡基本から応用技まで、一通り見ていきましょう😊
目次
棚卸資産とは?どんな種類があるの?
まず、「そもそも棚卸資産とは何か?」についてお話していきます。
棚卸資産の意味
よく使われる言葉に言いかえると「在庫」です。
棚卸資産とは、お客さんに販売するために、仕入れ、製造した財産です。この棚卸資産を販売することで、企業はお金を得て事業を続けていくことができます。
モノを売る企業にとっては、棚卸資産がなくては商売ができません。
カカクコムと六甲バターの棚卸資産を比べてみる
ここで、業種によって棚卸資産にどのような違いがあるかを見てみましょう。
比べるのは、「食べログ」や「価格.com」のサイトを運営するカカクコムと、チーズの製造と販売を行う六甲バターです。
実は両社の売上高はほぼ同じ水準にあるのですが、決算書を見てみると棚卸資産に大きな違いがあります。
・カカクコム(2017年3月期)→ 売上高:450億円 棚卸資産:独立した記載なし
・六甲バター(2016年12月期)→ 売上高:471億円 棚卸資産:28億円
カカクコムも棚卸資産を持ってはいるのですが、金額が小さすぎて「その他」に含められているのでしょう。同じ位の売上高をあげている企業であっても、棚卸資産の金額に大きな差があります。
カカクコムの事業内容はモノを売ることではなく、サイトの運営です。そのため、棚卸資産が小さくなっているのです。
一方、六甲バターはチーズやチョコレートを販売することで収益を得ています。棚卸資産には、チーズ、ナッツ、チョコレートなどが含まれていますね。
棚卸資産の種類
決算書に出てくる棚卸資産には、主にこのような種類があります。
🔹商品、製品 →すでに完成しており、お客さんにすぐに販売できる状態
🔹仕掛品 →商品、製品の作りかけの状態
🔹原材料 →商品、製品を作るモトとなるもの。これを加工することで製品に仕上げる。
たとえば、B-R サーティワンアイスクリームの棚卸資産の場合、製品にはアイスクリームやシャーベットが、原材料には脱脂粉乳、砂糖、アーモンドなどが含まれています。
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貸借対照表のどこに表示されるの?
決算書での表示場所
棚卸資産は、決算書の中でも貸借対照表(BS)に表示されています。
資産の部の流動資産の項目を見てみると、多くの場合「現金及び預金」、「売掛金」に続いて、棚卸資産が表示されています。
棚卸資産の金額は何を表しているの?
貸借対照表で棚卸資産が500万円と表示されている場合、
・500万円を支払って、その材料や商品を仕入れた
・500万円を使って、その仕掛品や商品を製造した
ことを表しています。
同時に、販売することで500万円以上の売上高をあげられることも表しています。
販売されてキャッシュを獲得することこそ、棚卸資産の「資産としての価値」なのです。この例の棚卸資産は、500万円以上のキャッシュを獲得する価値があると貸借対照表上で主張しているのですね。
売上原価との関係とは?販売されるまで利益に影響しない!
材料の仕入れや商品の製造にどんなにお金を支払っても、販売されない限りそのお金は費用(売上原価)となりません。
販売されるまでは、支払ったお金は棚卸資産という資産に形を変えたまま、利益の計算に絡んでこないのです。
このように、お金の動きと利益の動きは、決算書の上ではバラバラなんですね。
なぜ販売されるまで費用にならないのか?
具体的にいつ費用になるのか?
詳しくはこちらで解説しています(↓)
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在庫評価損を簡単に理解しよう
例外的に、販売される前であっても棚卸資産が費用(損失)に変わることがあります。
その費用(損失)とは、在庫評価損です。
棚卸資産の「資産としての価値」が下がるタイミングとは?
商品の流行が過ぎてしまったり、災害の影響で品質が劣化するなどして、従来価格で販売することが難しくなるケースは珍しくありません。
値下げして販売するとなると、その棚卸資産が獲得できるキャッシュは小さくなります。つまり、「資産としての価値」が下がったことを意味するのです。
在庫評価損の意味とは?
販売できる価格が仕入れ価格を下回った場合、この「資産としての価値」の減少が在庫評価損という形で表れるんですね。在庫評価損の金額だけ、棚卸資産の仕入れや製造に使ったお金がムダになったとも言えます。
在庫評価損が生ずることで、販売される前の棚卸資産でも利益を押し下げる要因を生み出すのです。
🔸 在庫評価損の金額を知る方法
🔸 いつ在庫評価損が生ずるのか?
🔸 在庫評価損が出やすい業界とは?
これらについて、こちらで詳しく解説しています(↓)
棚卸資産が増加する理由をおさえよう!
棚卸資産はどんな場面で増えるのでしょうか?棚卸資産が増えるパターンとして、このようなケースあります。
1.企業が成長し、売上高が増えているとき
2.商品への需要が縮み、売れ残りが増えている
3.翌期に、金額の大きな商品の納入を控えている
4.翌期に新規出店を控えている
1のケースのように企業が成長しているときは、商品の販売量が増えているので手元に用意しておく商品(棚卸資産)も当然増えていきます。
3や4のケースは、翌期以降に金額が大きい(又は増える)商品の販売が予定されているために、当期末に手元に用意している棚卸資産が増えているのです。3のケースは、特に大型の個別受注製品(プラントなど)を扱っている企業に起こりますね。
問題となるのは2のケースです。棚卸資産の増加が企業の成長によるものなのか、それとも需要の衰えによるものなのか、決算書を読む際は見極めないといけません。
その見極めるための1つの有効な方法を、次のパートでご紹介します!
棚卸資産を持ちすぎてもダメ!在庫回転期間の使い方とは?
棚卸資産の持ちすぎは、資金を効率的に使えていない可能性も
お客さんに求められたらいつでも販売できるように、ある程度の棚卸資産は手元に持っておかないといけません。
一方で、棚卸資産は、本来であればいろんな用途に使えたはずの資金を特定の商品や材料に変えたものです。あまり過剰に棚卸資産を持ちすぎると、資金を効率的に使えなくなってしまいます。
ましてや、この先売れるかも分からない商品であればもってのほかです。需要が縮み売れ残りが積み上がれば、近々在庫評価損を計上しなくてはならないかもしれません。
棚卸資産が過剰かどうかを知る方法
棚卸資産の量が過剰かどうかは、単に金額の動きだけ見ていても分かりません。先ほどご紹介したように、売上が成長しているために棚卸資産が増えているケースもあるからです。
そこで、使いたい指標が在庫回転期間です。持っている在庫の量が、どの位の期間の販売に足りるかが分かります。
在庫回転期間の推移を見ていくことで、在庫が過剰に積み上がっていないかのヒントをつかむことができます。
🔸 在庫回転期間の計算式
🔸在庫回転期間の効果的な使い方
🔸 ABCマートの在庫回転期間が改善した事例
これらの内容を含め、こちらで在庫回転期間をさらに詳しく解説しています(↓)
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まとめ
1.棚卸資産を販売することで企業は収益を得て、活動を続けることができる。
2.決算書に表示される棚卸資産の金額は、その金額以上のキャッシュを得られることを表している。
3.得られるであろうキャッシュ(販売価格)が減り、仕入れ価格を下回ると在庫評価損が計上される。
4.非効率的に資金を使っていることや、業績が傾き始めていることによって在庫が過剰となっているかを知るには、在庫回転期間を使う。