ここだけは押さえておきたい!在庫評価損のポイント3つ~PLへの影響を読み解こう

 

 これからの販売によって利益を生み出す存在である在庫。会計用語では棚卸資産と呼びます。

今回は、在庫の価値が下がることで生ずる「在庫評価損」がテーマです😊

どんな時に登場し、損益計算書にどんな影響を与えるのでしょうか?大きな3つのポイントと一緒に、2017年に大きな在庫評価損が発生したジャパンディスプレイの事例についても見てみましょう⭐

 

1.在庫評価損とは?どんな時に登場するの?

「収益を得る力」が弱まったことを表す

貸借対照表(BS)に表示されている在庫の金額は、その金額をかけて製造又は仕入れたことを表します

同時に、販売を通じてその金額以上の収益が得られると考えられているのです。販売によって売上に貢献することこそが、在庫の「資産としての価値」なんですね。

 

在庫の価値が減るときとは?

ところが、その「資産としての価値」が減ってしまうことがあります。

・災害によって商品や材料が傷む

・商品の流行が過ぎて需要が減る

このようなことが起こると、その在庫は今までの販売価格で売ることが難しくなります。つまり、その在庫が獲得できる収益(売上)が減ってしまっているのです。

場合によっては、仕入れ値を下回る価格まで値下げをしないと買い手がつかないかもしれません。このようなケースでは、ちょっと特別な処理が必要になります✨

 

その場合、決算書への影響とは?

販売価格が仕入れ価格を下回ると考えられる場合、在庫の「資産としての価値」が変化したことを、きちんと貸借対照表にも反映させなくてはなりません。

具体的には、「想定される販売価格」が在庫の価格を下回った分だけ、在庫の金額を減らすことになります。つまり、在庫の金額が、獲得できる収益(想定される販売価格)と同じ金額になるように修正するんですね。

 

同時に、在庫から減らした金額分だけ、損失損益計算書(PL)に表示します。せっかくお金をかけて商品を製造又は仕入れたのに、その価値が減ってしまったことに対する損失ですね。

この損失が在庫評価損なのです!

 

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どんな時に計上されるのか

在庫の「資産としての価値」の変化は、日常の業務の中だけでは気づかないこともあります。

そのため、四半期末の決算のたびに、販売価格が在庫の価格を下回っていないかを確認することになっています。つまり、3か月ごとにチェックし、該当があれば在庫評価損を計上するのです。

 

 

2.在庫評価損はPLのココに表れる!

通常は売上原価に含まれる

基本的に、在庫評価損は売上原価に含めることとされています。つまり、営業利益を押し下げる要因になるんです。

そのため、多くの場合は損益計算書(PL)を見ても在庫評価損の金額を知ることができません。

在庫評価損の金額を知りたいときは、有価証券報告書の決算書のページの後に続く【注記事項】の中を探してみましょう

在庫評価損を計上している企業であれば、損益計算書関連の注記事項(最初の方)に、売上原価に含められている在庫評価損の金額が書いてあるはずです🗝

 

特別な在庫評価損は特別損失になる

・火事や地震によって商品が傷む

・事業のリストラによって、その事業の商品を今まで通りに販売することができなくなる

在庫評価損の中には、このような特別な事象によって生ずるものがあります。

このような臨時のケースによって生まれ、かつ、金額が大きい在庫評価損は、特別損失として損益計算書に表示されます。

 

 

3.評価損が出やすい業界はある?

価格が変動しやすい商品を扱う企業は、やはり評価損が出やすいです。

 

はやりものを扱う企業

たとえば、流行を大いに反映する商品は、その流行が過ぎると値引きして販売されます。

代表的なのがアパレル系の企業ですね。夏季セールや年明けセールでは、その季節のピークを過ぎた商品がセール価格を付けて並べられます。

 

商品の市場価格が変わりやすい企業

また、商品そのものの市場価格が変動しやすい企業も、評価損が出やすいですね。

代表的なのは、石油を在庫に持つ石油元売り企業です。その年に生産される石油量などによって、石油価格はどんどん変わっていきます。

原油安に大きく傾いた2014~2015年度は、JXホールディングス、出光興産などが巨額の在庫評価損を計上しました。石油元売り企業は、一定量の石油の備蓄が義務付けられているため、在庫評価損の金額が大きくなりやすいのです。

その結果、石油元売り大手企業が軒並み最終赤字という結果になりました。

 

 

有機ELパネルへのトレンド転換で在庫評価損~ジャパンディスプレイの例~

ジャパンディスプレイに吹いた逆風とは?

日立製作所、東芝、ソニー…日本の名だたる電機企業の液晶事業を統合させ、出来あがったジャパンディスプレイ

ジャパンディスプレイは、主にスマホディスプレイ用のパネルを製造しています。

最近は、iPhoneをはじめとしたスマホ上位モデルで有機ELパネルが採用され始めていますね。これが、液晶パネルを主力商品とするジャパンディスプレイにとって逆風になっているのです。

このトレンドをジャパンディスプレイの業績は見事に映し取り、2014年度からは3年連続で赤字に陥いりました。現在の液晶パネルへの需要量に対して、ジャパンディスプレイの生産量が過剰になっていたのです。

 

巨額の在庫評価損が生まれたワケ

そして2017年度、ジャパンディスプレイは業績悪化をもたらした液晶パネル事業の改革に着手しました。この中で、2017年9月末(第2四半期)の決算において116億円もの在庫評価損が計上されたのです

在庫評価損の対象となった棚卸資産は、おそらく液晶パネル事業のものでしょう。

需要が縮んだことで、液晶パネルに関連する在庫が過剰になってしまいました。そこで、過剰な在庫を転売するなどして資金化を図ることにしたのです。

当然、そこで得られる資金は商品として販売するよりも安くなります。この戦略転換によって想定される販売価格が仕入れ価格を下回った結果、在庫評価損が生まれたと考えられます。

この在庫評価損は金額も大きく、事業の構造改革という特別なイベントの中で生じたものであったために、売上原価ではなく特別損失として損益計算書に表れています。

 

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まとめ

1.在庫評価損とは、在庫の「資産としての価値」が減ったこと、つまり在庫が獲得できる売上が減ったことを表す

2.在庫評価損は、通常は売上原価に含められ、臨時な事象かつ大きな金額で生じたときは特別損失として計上される。

3.流行を反映しやすい商品を扱う企業や市場価格が変動しやすい材料や商品を持つ企業は、在庫評価損が生じやすい。

 

【超理解】在庫と利益の深い関係とは?黒字でもお金が足りない理由がそこにある

2017年11月27日

 

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