企業の資金繰りを見る上でなくてはならないツール、それは売上債権回転期間です🗝
今回は、売上債権回転期間が教えてくれること、計算式、目安など、基本事項をマスターしちゃいましょう!
さらには、売上債権回転期間の短縮に見事成功した日本電産の実例もご紹介します。
売上債権回転期間が教えてくれること
売上債権回転期間とは何の期間?
売上債権とは、売掛金や受取手形のことです。
販売から代金が入金されるまで時間があくために生ずる資産ですね。「販売代金を受け取る権利」と言うこともできます。
売掛金の詳しい解説はこちら(↓)
そして売上債権回転期間とは、「商品やサービスの販売時点から代金を受け取るまでにかかる時間」を表します。
企業の資金繰りを考える上では、販売から代金の回収までの時間が短い方が望ましいですね。
どんなリスクを教えてくれるの?
商品を販売した後は、すぐにその代金を回収して次の仕入れや投資に回すのが効率的なキャッシュの使い方です。
しかし、売上債権回転期間が長いと、販売代金がいつまでも手元に入ってこず、事業に使うことができません。キャッシュを使う上で効率が悪い状態です。
また、売上債権回転期間が長くなっている場合は、販売先からの入金が遅れている可能性があります。これは、せっかく販売した商品の代金が入ってこなくなる、つまり貸倒れの兆候を示していることがあります。
貸し倒れの金額が大きいと、企業の事業運営にも支障をきたす恐れがあります。
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売上債権回転期間を求め方と目安
売上債権回転期間の計算式
売上高と売上債権の金額が分かれば、売上債権回転期間を求めることができます✨
1.売上債権回転期間(日) = 売上債権 ÷ 売上高 × 365
2.売上債権回転期間(月) = 売上債権 ÷ 売上高 × 12
計算式が2パターンありますが、どちらも示すことは同じです。1.は日単位での期間を、2.は月単位での期間を求めています。
売上債権回転率との関係
売上債権回転期間と似た名前で、売上債権回転率というものがあります。
売上債権回転率とは「売上債権がどの位素早く入金されているか?」を表し、この数値が高いほど売上債権を素早く回収できていると言えます😊
計算式をご紹介しますね✨
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権
計算式は微妙に違いますが、本質は売上債権回転期間と同じです。
売上債権回転期間は売上債権を回収するまでの時間、売上債権回転率はその裏返しで売上債権を回収する早さを表しているんですね。
目安はあるの?
共通の目安はない
企業と企業が販売取引をするときは、販売時又はその前に「販売から何か月後に入金するか」という条件を取り決めています。
つまり、企業によって売上債権を回収する期間は異なるのです。
そのため、一概に売上債権回転期間の目安は決められないんですね。たとえ、標準よりも回収期間が長くても、きちんと期限までに入金されていれば、事業を続けていくことはできます。
資金繰りのよしあしの見極め方
大切なのは、1つの企業の売上債権回転期間の推移を見ることです。これは、売上債権回転率にも言えることですね。
「売上債権回転期間が長くなっていないか?」という点に注意して見てみましょう✨
次のパートで、「売上債権回転期間が長期化したときに考えられること」をご紹介します。
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売上債権回転期間が長くなったら…?
売上債権回転期間の長期化を引き起こすものとは?
売上債権回転期間が長くなってきたら、企業の中でどのようなことが起こっているのでしょうか?
・売上債権の入金が遅れ、売上債権が膨れ上がっている。
・取引先と入金条件を変更し、入金までの期間が長くなった。
・年度末付近に売上が集中した。
3番目の項目は、平均値よりも年度末の売上債権が大きくなったために売上債権回転期間が長期化したものです。数字の見え方の問題であるため、資金繰りには影響ありません。
2番目の項目は、その企業の資金繰りにとっては不利な変更になります。しかし、取引先と交渉の上での変更ですので、すぐさま経営の危機に直面することは考えられないでしょう。
問題は1番目の項目です。取引先との合意なく入金が遅れている場合は、その売上債権の回収そのものが危なくなっているからです。
売上債権の入金遅れが示すこと
売上債権の入金が遅れると、どんなリスクが予想されるでしょうか?
今現在の損失とは?
取引先の単なる事務処理もれであれば、いずれは何とか入金してもらえるでしょう。
しかし、取引先の経営状態が悪くなっているために、期限通りに入金できないこともあります。もしかすると、このまま入金されず貸し倒れてしまうかもしれません😭
貸し倒れた金額が大きいほど、企業にとってのダメージは大きいです。入ってくるはずのお金が無くなってしまうので、次の投資や仕入にも支障をきたすかもしれません。
実際、貸し倒れが起こった際には、損益計算書に「貸倒損失」が計上されますね。
今後予想される損失とは?
また、その取引先が倒産などした場合は、今後その取引先に商品を販売することができなくなります。
その取引先に販売を依存しているほど、今後の売上高が押し下げられる可能性が高いのです。
【実例・日本電産】売上債権回転期間の短縮に成功!
ここで、売上債権回転期間を経営に生かした日本電産の例をご紹介します!
より多くの資金を手にするための方法とは?
多くの資金を必要としている日本電産
日本電産と言えば、矢継ぎ早にM&Aを仕掛けている企業ですね。
日本電産は増収増益と好調な業績を誇っていますが、利益とキャッシュは別物。たとえ、利益が出ていても、同じだけのキャッシュが入ってきているわけではありません。
M&Aにはまとまった資金が必要です。そのため、日本電産は利益だけでなく、キャッシュにも重点を置いた経営を行っているのです。
売上債権回転期間に目をつける
商品を販売してから代金を受け取るまでの時間を短くするほど、より早くキャッシュを手にすることができます。
日本電産は売上債権回転期間に目をつけ、販売から代金回収までの日数を縮める努力をしたのです。おそらく顧客と交渉するなどして、入金条件を変えたのでしょう。
ここで、売上債権回転期間を短くすることで、手にする資金の量にどの位変化があるのかを見てみましょう😊
毎月100万円ずつ売上をあげている企業の例(4月から営業を開始)
◆販売から入金まで3か月かかる場合
→6月末の時点で、売上高は300万円、手にした資金は0円
◆販売から入金まで1か月かかる場合
→6月末の時点で、売上高は300万円、手にした資金は200万円
販売から入金までの時間が短いほど、販売で得た資金を素早く次の投資に使えますね✨
日本電産の努力の結果は…
売上債権回転期間はどの位短くなったのか?
ここで、日本電産の売上債権回転期間の変化を見てみましょう!
2015年3月期 → 2.8ヵ月(84日)
2016年3月期 → 2.4ヵ月(73日)
1年間で11日間短縮することに成功しました😊
短縮した翌年の2017年3月期にも、次々と買収を仕掛けています。(※2017年3月期は、第4四半期に2社を買収したことで、売上債権回転期間の数字上は悪化しています)
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まとめ
1.売上債権回転期間とは、「商品やサービスの販売時点から代金を受け取るまでにかかる時間」を表す。
2.売上債権回転期間に各企業共通の目安はない。売上債権回転期間の推移を見ることが大切。
3.売上債権回転期間の長期化は、売上債権の貸し倒れの兆候を示すことがあるので要注意。