商品の売れ残りのイメージが強い在庫(棚卸資産)。実は、利益を計算する上で重要なポジションにいるのです✍✨
今回のテーマは、そんな「在庫と利益の関係」です😊
バーバリーとライセンスが終了した三陽商会の事例も見ながら解説していきます!
在庫と利益の関係を探ってみよう
まずは、仕入・売上原価・在庫の3つの関係を知ろう
同じように仕入れた商品でも、販売されたかどうかで決算書での扱いが変わります!
🔸 販売された商品の仕入額 = その年の売上原価
🔸 売れ残った商品の仕入額 = その年度末の在庫(棚卸資産)
売上原価とは、販売された個々の商品に紐づけられる費用のことです✨
この「個々の商品に紐づけられる費用」の中に、商品の仕入額も含まれます。
商品が販売され、売上高が計上されると、同じタイミングでその商品の仕入額も売上原価として計上されます(★)。
(★)売上高と売上原価を同時に計上するのは、「費用は、その対応関係にある収益と同じ期間に計上する」という会計ルールがあるためです😊
一方、売れ残った商品にかかった仕入額は、棚卸資産として資産に含まれます。
翌年以降に販売されることで、将来のキャッシュを増やすと考えられるためですね。
売上原価は損益計算書(PL)に、在庫は貸借対照表(BS)に表示されます✍
仕入と売上原価の違いについては、こちらで詳しく解説していますよ😊(↓)
いつ、在庫が利益に影響してくるの?
売上原価は費用の1つであるため、その年の利益の計算(★)に関わってきます✍
(★)利益の計算式
利益 = 収益(売上高など) - 費用(売上原価、販管費など)
一方、販売されなかった商品は在庫として、翌期に繰り越されます。その後、販売され売上高が計上された時点ではじめて、在庫の金額が売上原価に変わるのです。
つまり、販売されるまでは、在庫は利益計算の表舞台には出てこないんですね🗝
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在庫でいる限り利益に貢献できない!
ここまで見てきたように、仕入れた商品が在庫にとどまっている限りは(=販売されない限りは)、その仕入額が費用として計上されることはありません💦
つまり、売れ残り続けている限り、利益を計算する基礎にはなりえないのです。
実は、商品が売れ残っているかどうかは、利益を計算する損益計算書を見ても把握することができません💡
そのため、損益計算書では黒字でも、その裏では過剰な仕入によりたくさんのお金が流れ出ていることもありえます。企業側の予想に反して、売れ行きが不調なケースなどが当てはまりますね😥
販売状況が好転すればよいのですが、今後売れる見込みのない商品にお金を使ってしまった可能性もあります👛
このように商品が売れ残り続けると、その商品にかかった仕入額が売上原価とは違う形で利益計算に関わることがあります😲
次のパートで、詳しく解説していきますね。
売れ残り続けると…在庫は損失に変わる!
”売れない在庫”が意味することとは?
商品の流行が過ぎてしまったり、仕入れから時間が経って商品自体が傷んでくると、想定していた販売価格で売ることが難しくなってきます。
そうなると、仕入価格を下回るまで値下げしないと買い手がつかないかもしれません。もしくは、そもそも売ること自体が難しいかもしれません😢
このような時、その商品の「資産としての価値」が下がっていると言えます💦
貸借対照表(BS)において在庫は資産に含まれますが、仕入れた以上の価格で売れなければ「将来のキャッシュを増やす」という資産の役目を果たせなくなってしまうからです。
在庫が”売れない”と判断されると…?
「仕入れ価格を下回る価格でないと売れない」と判断されると、その在庫には特別な処理が行われることになります。
🔸 貸借対照表
→「想定される販売価格」が在庫の価格(仕入れ価格)を下回った分だけ、棚卸資産の残高を減らす
🔸 損益計算書
→ 棚卸資産の残高を減らした金額だけ、損失を計上する(在庫評価損)
このようにして、在庫がキャッシュを獲得する力を弱めたこと(=棚卸資産の「資産としての価値」が減った)、仕入れに使ったお金がムダになったこと(=損失が発生した)を決算書に表すんですね💡
この特別な処理を行うと、まだ販売されていない在庫が損失(在庫評価損)を生み出し、利益計算に関わることになります。
つまり、利益を減らすのです。
会計のルール上、毎期の決算のたびに在庫の収益性が低下していないかチェックし、この処理を行う必要があるかを判断します✍
こちらでは、事例を付けてさらに詳しく在庫評価損を解説しています😊(↓)
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【事例:三陽商会】販売苦戦で在庫が損失に…
バーバリーとのライセンス終了がもたらした業績変化
ここで、三陽商会の事例を見てみましょう😊
三陽商会は主力ブランドで合ったバーバリーとのライセンス契約が切れたことで、売上高が大きく減ってしまいました。代わりとなるブランドの育成に励んでいるものの、百貨店不況の真っただ中で苦戦をしいられている状況なのです😢
そんな状況下で、売れ残った商品もかさんできました💦
売れ残り商品がさらなる業績悪化要因に
そこで、2016年度において売れ残り商品の処分による損失(在庫処分損)、及び商品の収益性低下による損失(在庫評価損)を認識することになったのです。
いずれの損失も、売れ残った在庫が将来のキャッシュ増大に貢献できない…つまり資産としての価値が無い(又は下がった)と判断されたために計上されたものです。
これらの損失は、売上原価に含められました✍
2016年度の売上原価393億円のうち、これら在庫の損失が占める割合は7%にものぼったのです!この年の利益率悪化の一因にもなりました😨
売上原価と一口に言っても、販売されてキャッシュの獲得に貢献した費用もあれば、販売が見込めず損失となったものもあったのですね。
「まだ在庫に価値がある?」注視し続けなくてはならない理由
在庫の価値を減らさないためには…努力が必要
このように、貸借対照表(BS)に資産として表示されているものの中には、すでに資産としての価値(=将来のキャッシュ増大に貢献する)が無いものが隠れていることがあります🔑
これを未然に防ぐために、企業の経営者は、資産がキャッシュの獲得につながるように工夫・努力を続けていく必要があるのです💡
(たとえば、商品が完全に流行遅れとなる前に少しずつ値引きをして売り切る、商品が傷まないように適切に管理するなど)
在庫の価値が減ったら気を付けること
それでも、販売が見込めなくなったのであれば、その事実を適切に決算書に表さなくてはなりません⚡
つまり、在庫の価値を減らし、そこから生み出された損失を公表しなければならないのです。
ここの表示がきちんとできていなかったばかりに、後々会計不正として大きく取り沙汰されてしまうこともあるのです…。
販売が見込めない在庫が過剰にあると、売上高や売上原価の規模に照らして在庫残高が膨張する傾向にあります。
こうした傾向を捉える1つの手段として、在庫回転期間(在庫回転率)を使うんですね😊
こちらでは、在庫回転期間について解説しています(↓)
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まとめ
1.基本的に、販売されるまで在庫は利益の算定基礎にはならない(損益計算書には出てこない)。
2.損益計算書を見ても、仕入れにいくら支払ったかは分からない。
3.売れない(又は想定価格を大きく下回る)と判断された在庫は、資産価値の低下を表すため損失に変わる。経営者は、資産としての在庫の価値に常に目を配らなくてはならない。