【コーセーのBSに見る】積極投資で増える資産、好調でも増える負債とは?

 

絶賛業績拡大中のコーセー

2012年からを「V字回復期」、2015年からを「グローバルブランド育成期」と名付けている通り、落ち込んだ収益を攻めの改革で盛り返した後はグングンと成長を続けています。

これまでコーセーが積極的に投資を行い業績を向上させたことで、貸借対照表はどのように変化したのでしょうか?

資産と負債、それぞれに着目して見ていきます😊

 

積極投資が反映された資産とは?

近年のコーセーは、工場を建てたり、アメリカの企業を買収したりするなど大型投資にも積極的です。

その投資姿勢によって、コーセーの資産内容はどのように変わったのでしょうか?

 

設備投資で増えた資産

貸借対照表の中で、コーセーの投資が反映された項目としては、まず建物や機械装置といった有形固定資産があります。

2017年3月期の貸借対照表を見てみると、たとえば4年前と比べて「建物及び構築物」は1.5倍、「機械装置及び運搬具」は2倍に増えています。

 

この間、コーセーは60億円を投じて群馬に新しい生産棟を建設しました。生産棟の建物は「建物及び構築物」に、建物内で使う機械類は「機械装置及び運搬具」として、貸借対照表に表示されているのです。

新しい生産棟ができたことで、化粧品の生産量が1.3倍になりました。拡大を続ける販売に対応できるようになったのです。

 

また、現在も新しい基礎研究所の建設を進めており、さらに有形固定資産が増えていく見込みです。

 

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企業買収で増えた資産

投資先は設備だけではありません。コーセーは、海外展開やノウハウの吸収のために、企業への投資も行いました。

その行動を表しているのが、無形固定資産の増加です。

 

コーセーが買収した企業とは?

2014年、コーセーはアメリカの化粧品メーカー・タルトを子会社にしました。

当時のコーセーの海外事業は、他の化粧品メーカーと比べても伸び悩みがちだったのです。この課題を解決しようと、タルトに海外事業の活路を見出そうとしたんですね。

買収後もタルトの業績はどんどん成長し、コーセーの収益を引っ張る力強い存在になってくれています。

 

企業買収によって増える資産とは?

このタルト買収によって登場した資産が、のれんです。

のれんとは、買収先企業の信用力やブランドといった、目には見えない価値に充てられた買収価格のことをいいます。企業の収益獲得についてプラスに働くと考えられ、かつ、目には見えないものであることから、のれんは無形固定資産に含まれるのです。

 

タルトを買収するまで、コーセーの貸借対照表にはのれんが存在しませんでした。そのため、タルトを買収した2014年度末の無形固定資産は、前年の5倍近くにまで増えたのです。

M&Aを繰り返している企業は、このような理由からのれんが膨らんでいく傾向にありますね。

 

 

業績好調でも増えた負債とは?

業績が向上していくと、借金が返済され負債が減るイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、その一方で、事業が拡大しているからこそ増える負債もあります。

今回は、コーセーの貸借対照表の中でも、際立って膨らんでいる負債を見てみましょう。

 

成長しているからこそ増えた負債

生産が拡大すると…

商品の売れ行きが右肩上がりなら、その商品を作るための仕入も多くしていかなくてはなりません

そのためコーセーでは、買掛金や支払手形といった仕入債務が増加しているのです。

2017年3月期の仕入債務は、4年前と比べて2倍近くにまで膨らんでいます。(※この間、売上高は1.6倍に伸長)

 

利益が伸びると…

また、利益が増えると、それに連動するように支払う税金も増えていきます。(※税金支払い額 = 利益 × 税率)

そのため、未払消費税や未払法人税といった税金の未払い額は、コーセーの負債の中でも際立って増えています。

 

 投資によって増えた負債

前のパートでご紹介した通り、コーセーは設備への投資を積極化しています。

材料や商品を仕入れる際の未払い額は買掛金などに含まれますが、建物や機械を購入した時の未払い額は未払金に含まれます

2017年3月期の未払金は、4年前と比べて2倍に膨らんでいます。昨今、新しい生産棟や基礎研究所の建設を進めている影響を受けたものと考えられます。

 

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負債が増えても安全性はゆるがず

前のパートでご紹介した通り、事業拡大に伴って、コーセーの貸借対照表では流動負債が増えています

同時に、好調な販売を受けて流動資産(現金、売掛金、棚卸資産など)も膨らんでいます。特に、現預金の伸びが目立っていますね。

 

そのため、近い未来の支払い能力を表す流動比率(※)は、2017年3月期においても300%を上回っているほどの高水準なのです。

※ 流動比率とは…

 流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債

流動比率が低くなるほど、近い将来において、支払いに充てるキャッシュが尽きるリスクが高まります(理想は200%)。

スルッと理解!「流動比率とは?」計算式・目安・意味をわかりやすく解説【JALの事例付き】

2017年11月4日

 

このように、事業拡大によって資産・負債ともに成長しているコーセーの場合は、「将来の支払い」を表す負債が増えても財務基盤の安全性が揺らいでいるわけではないのですね😊

 

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まとめ

1.近年のコーセーは、大型投資を積極的に行っている。工場建設によって有形固定資産(建物、機械装置など)が、企業買収によって無形固定資産(のれん)が増加した。

2.商品の売れ行きが良く、業績が拡大しているために、仕入債務未払税金といった負債が増えている。また、活発な設備投資を受けて、未払金も膨らんだ。

3.コーセーの貸借対照表では流動負債だけではなく、好調な販売によって流動資産も増えている。そのため、流動比率は300%を超える高水準を保っている

 

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