包括利益と純利益は何が違うの?計算式でチェック!
まずは、包括利益をざっくり理解!
最終的に企業の手元に残る利益と言えば…当期純利益ですね。
今回のテーマである包括利益とは、その当期純利益にちょっと手を加えた利益のことです。
どういうことかと言いますと…
包括利益の計算方法
包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益
このように、当期純利益にその他の包括利益を足し合わせた金額を指すんですね。
その他の包括利益ってなに?
その他の包括利益とは、為替レートや株価等による資産価値の増減額のことです。
たとえば、業務上のお付き合いで保有している株式の株価が上がると、この株式の価値も上がりますよね。ここでの含み益はその他の包括利益に含まれます。
一方、この含み益が実際に利益として確定し、当期純利益に反映されるのは、株式が売却され対価を得た時です。
このように、その他の包括利益は、まだ当期純利益には反映されていないものの、将来的に当期純利益に反映されるであろう資産(負債)の含み益・含み損を表しています。
その他の包括利益に該当するものを並べてみます。
● その他有価証券評価差額金
● 繰延ヘッジ損益
● 土地再評価差額金
● 為替換算調整勘定
● 退職給付に係る調整額
● 持分法適用会社に対する持分相当額
その他の包括利益の詳しい解説はこちらをご覧ください(↓)
包括利益は連結財務諸表でのみ開示
包括利益は、企業の決算書の1つである包括利益計算書で見ることができます。
当期純利益は、単体財務諸表と連結財務諸表のいずれにおいても開示されるのに対し、包括利益は連結財務諸表でのみ開示されています。
そのため、企業グループベースの金額でのみ包括利益を知ることができるのです。
山崎製パンの包括利益を見てみよう
ここで、山崎製パンの事例を見てみましょう😊
2017年度 山崎製パンの包括利益
① | 当期純利益 | 306億円 |
② | その他の包括利益 | 159億円 |
①+② | 包括利益 | 465億円 |
その他包括利益159億円のうち、最も大きいのはその他有価証券評価差額金84億円です。
保有するその他有価証券の株価が上がったことで、含み益が膨らんだと思われます。
その他の包括利益が加わることで、包括利益は当期純利益の1.5倍ほどの金額になっていますね。
反対に、前年の2016年度の包括利益は、その他の包括利益がマイナスになったことにより、当期純利益の金額から4割以上も減っています。
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包括利益が意味することとは?
企業の実力?
包括利益は、商売などの事業活動を通して稼いだ利益に加えて、時価が変わることで生ずる資産の含み益や含み損も織り込まれています。
つまり、企業が変えることのできない為替レートや株価の動きの影響を大いに受けてしまうんですね。
そのため、企業の稼ぐ実力をそのまま表しているとは言いがたいかもしれません。
企業の決算発表や新聞などでも、業績を表す指標には、包括利益ではなく当期純利益が取り上げられていますよね。
時価の変動が損益に与えるリスクが分かる
その一方で、為替レートや株価によって企業が保有する資産の時価がどのように変動しているかということを知ることができます。
現在は含み益・含み損であっても、やがては資産の売却などを通じて利益・損失に変わり、当期純利益にも織り込まれます。企業のキャッシュフローにも影響してきます。
このように、時価変動という側面を通して、資産価値がどの程度影響を受けているかを把握できるメリットがあります。
純資産との関係とは?
当期純利益が純資産の利益剰余金に蓄積されていくように、その他の包括利益は純資産のその他の包括利益累計額に蓄積されていきます。
つまり、当期純利益とその他の包括利益を合わせた包括利益は純資産の増減と密接な関係があるのです。
基本的には、株主からの出資や株主への配当を除いた1年間の純資産の増減額は、1年間の包括利益の金額と同じになります。
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まとめ
1.包括利益とは、その他の包括利益(為替レートや株価等の変動によって生じた資産の含み益・含み損)を当期純利益に足し合わせたものである。
2.包括利益は、企業の手の及ばない為替レートや株価の変動を受けることから企業の稼ぐ実力をそのまま表しているとは言い難い一方で、企業が保有する資産の時価がどのように変動しているかを知ることができる。