2011年の震災が起こってから、原子力発電の運転を止めていた東京電力。
2017年9月、そんな東京電力に新たな動きが出ました。
東京電力が管轄している柏崎刈羽原子力発電所が、再稼働に向けて一歩踏み出したのです。再稼働の前提となる安全審査に事実上合格したということでした。
再稼働をするためにはこれから耐震工事を行ったり、地元の方の理解を得る必要があります。まだまだ再稼働まで道のりがありますが、東京電力は何とか再稼働にこぎつけようとしていますね。
世界を巻き込んで原発への議論を呼んだ事故を経ても、東京電力がひたむきに原発再稼働を目指す理由は何でしょうか?
原発の稼働停止が東電にもたらした変化とは?
原発を使用できないとなると、必然的に火力発電によって発電をまかなうことになります。再生可能エネルギーを利用する発電方法もありますが、原発や火力発電に比べると発電量が小さく、すぐに原発の穴を埋めることはできません。
原発と火力発電は、蒸気の力でタービンを動かして発電するという仕組みは同じであるものの、使用する燃料に大きな違いがあります。火力発電の燃料は石炭、石油、天然ガス、一方で原発の燃料はウランです。火力発電と比べて、原発は使用する燃料が少なくて済むのが特徴です。電力会社のお財布的には、原発はありがたい存在なのです。
つまり、原発の代わりを火力発電が担うとなると、使用する燃料が一気に増えることになるのです。
福島の原発事故によって、東京電力は想像もできないくらい多額の賠償金を支払わなくてはならなくなりました。さらに福島原発の廃炉に向けてもたくさんのお金が必要です。
ただでさえ、事故後は苦しい経営状況に陥ったのに加え、火力発電の燃料コストが「どしん!」と東京電力にのしかかったのです。
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原発に頼らないと燃料コストがどれだけ増えるか?
では、実際に、原発の稼働停止前と後では、東京電力の燃料コストはどの位増えたのでしょうか?ほぼ1年間原発を稼働していた2010年度と、震災によって原発を停止した2011年度で比較してみましょう。
2010年度の燃料コスト→1兆4821億円
2011年度の燃料コスト→2兆2869億円
(東京電力ホームページより)
単純に計算しても、原発停止後は燃料に1.5倍以上のコストがかかっています。
人件費を削減するなどの経営合理化もしていますが、それ以上に燃料コストの増えが著しく、従来よりも発電にお金がかかってしまっています。
そして、その後も燃料コストは増え続けました。それは、燃料コストが経済環境の変化に影響を受けやすいという性質を持つからなんです。
燃料コストは経済環境に左右されやすい
火力発電に使用する燃料は、基本的に海外から輸入されたものです。そのため、その時々の為替レートが燃料コストを左右するカギとなるのです。
たとえば、2013年度は為替レートが大きく円安に進んだ年でした。その結果、2013年度の燃料コストは、2011年度の1.3倍近くまで膨れ上がったのです。
また、その時々の生産量に左右されやすい原油価格も、大いに変動可能性を秘めています。原油安が進んだ2015年度では、東京電力の燃料コストは前年度よりも4割近く減りました。
このように燃料コストは、東京電力側でその金額をコントロールしにくい存在なのです。将来の燃料コストを予測した上で、資金計画などを立てることも難しくなりますね。
火力発電に依存するようになり、燃料コストの占める割合が増えれば増えるほど、こうした負担は東京電力にのしかかってきます。
今でも震災による金銭的負担を抱える東京電力にとって、お財布から透かした先に見える原発は未来の経営状況を明るくする存在なのかもしれませんね。