製造原価って何?売上原価との違いを見てみよう
売上原価を計算するための、基本的な考え方・計算式はこちら(↓)で解説しています。
この記事(↑)で登場する計算式は、実は小売業(商品を仕入れて販売する)向けのものです。
売上原価 = 前期の売れ残り商品の仕入額 + 当期の仕入額 - 当期の売れ残り商品の仕入額
なぜなら、製造業の会社は、商品を「仕入れる」のではなく「製造する」からです。
製造業の売上原価の計算式を見てみよう
この計算式を製造業向けに書き換えるとこうなります😊
売上原価
= 前期の売れ残り製品の製造額 + 当期完成した製品の製造額 - 当期の売れ残り製品の製造額
(※)製造業の場合、作った商品のことを製品と言います。
この式のポイントは、2つあります。
● 売上原価は、「仕入額」ではなく「製造額」ベースで計算されること。
● 「当期の仕入額」に代わって、「当期完成した製品の製造額」を計算式に組み込むこと。
売上原価とは、商品(製品)に直接かかったコストのことです。製造業の場合、商品(製品)かかるコストとは仕入コストではなく製造コストを指します。そのため、1つ目のポイントにあるように、「製造額」ベースで売上原価を計算するのです。
また、2つ目のポイントにあるように、計算式では「当期の仕入額」ではなく「当期完成した製品の製造額」を使います(下線部分)。
製造原価ってなに?売上原価との違いとは?
計算式に出てくる「当期完成した製品の製造額」のことを、当期製品製造原価と言います。いわゆる「製造原価」です。
製造原価は、製造業の売上原価を求める上での計算要素の1つなのです。
売上原価と製造原価の違いは、当期に販売された製品の製造額か、それとも当期に完成した製品の製造額か、と言えますね。
一般的な公式に書き換えると…
先ほどの製造業向けの計算式を、一般的によく使われる公式に書き換えるとこうなります。
売上原価
= 期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 - 期末製品棚卸高
「棚卸高」とは、売れ残り製品の金額(つまり在庫の金額)のことです。
では、次のパートで製造原価の求め方を見ていきましょう!
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製造原価を求める方法とは?
当期製品製造原価とは、当期に完成した製品の製造額のことです。つまり、完成した製品にかかったコストを求めればよいのです。
製造原価を求める計算式
製造原価を求める計算式は、売上原価の計算式と構造は同じです。
さっそく、製造原価の計算式を見てみましょう😊
当期に完成した製品の製造額(当期製品製造原価)
= ① 前期末時点で作りかけとなった製品に対してかかった費用
+ ② 当期において製品を作るのにかけた費用(製品の完成・未完成問わず)
- ③ 当期末時点で作りかけとなった製品に対してかかった費用
「作りかけとなった製品」のことを、仕掛品と呼びます。
また、「②当期において製品を作るのにかけた費用」とは、その製品が完成したかどうかに関わらず、当期に製品を作るためにかけた全ての材料費、労務費(製品の製造に携わる従業員へのお給料など)、経費(製品を製造する工場の水道光熱費、減価償却費など)を含みます。
計算式のポイント!
この計算式では、当期に完成した製品と作りかけの製品に対して今までかかった費用合計(①・②)から、作りかけの製品にかかった費用を差し引くことで(③)、当期に完成した製品にかかった費用(当期製品製造原価)を求めているのです。
ポイントは、求めるのは当期に完成した製品に今までかかった費用であって、当期に費やした費用(②のこと)ではない、というところです。
当期に費やした費用には、当期末時点では未完となっている製品の製造額も含まれてしまいますからね。
一般的な公式に書き換えると…
この式を、一般的に使われている公式に書き換えるとこうなります。
当期製品製造原価
=期首仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末仕掛品棚卸高
期末仕掛品棚卸高は、貸借対照表の棚卸資産(在庫)に含まれます。
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製造業の売上原価を求めるための2ステップ
ここまでお話したように、製造業の売上原価を求めるには2ステップあります。
ここで、製造業の売上原価を求める方法をまとめてみましょう😊
STEP1 製造原価を求める
当期製品製造原価
= 期首仕掛品棚卸高 + 当期総製造費用 - 期末仕掛品棚卸高
まず、当期に完成した製品にかかったコストを求めます。
STEP2 売上原価を求める
売上原価
= 期首製品棚卸高 + 当期製品製造原価 - 期末製品棚卸高
STEP1で計算した当期製品製造原価を使います。
当期に完成した製品(店頭に並べられる状態の製品)の製造額に、前期末と当期末に売れ残った製品の製造額を足し引きすることで、当期に販売された製品の製造額を求めています。
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まとめ
1.製造業の売上原価を求めるには、2ステップの計算が必要である。まず、当期に完成した製品の製造額(当期製品製造原価)を求め、次に当期製品製造原価をもとに売上原価を求める。
2.当期製品製造原価とは、当期にかけた費用のことではなく、当期に完成した製品に今までかかった費用のことである。
3.売上原価と製造原価の違いは、当期に販売された製品の製造額か、それとも当期に完成した製品の製造額か、ということである。