まず、自己資本とは?
資本には2種類ある
会社を興し、商売を続けていくためには、お金が必要です。このお金のことを、資本と呼びます。
資本には2種類あります。自己資本と他人資本です。
自己資本はその名の通り、株主(会社のオーナー)が出資したお金や会社自身で稼いだお金が含まれます。誰かに返済する必要のないお金です。
一方、他人資本は、銀行や他社といった「他人」から借り入れたお金を含みます。そのため、ゆくゆくは返済しなくてはなりません。
自己資本はどんな指標に使われる?
自己資本は返済期限を気にせずに使うことができるため、投資の際にはたのもしい資金源となります。
有価証券報告書にも必ず表記される自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合を算出することで財務面の安定性を測定しています。
また、自己資本は株主からの出資金を含んでおり、株主の持分と考えられます。
そのため、株主が投資の効率性を測る際に使うROE(自己資本利益率)では、自己資本を基準に収益性を測定しています。
簡単!自己資本の計算方法をチェック
自己資本は、貸借対照表さえあれば誰でも簡単に計算できます!
具体的には、貸借対照表の純資産(※)の内訳から、必要な数字を拾って計算していくことになります。
(※)IFRS(国際会計基準)で作成された貸借対照表の場合は、「資本」を使います。
純資産の内訳はこの通りです。
● 株主資本 …資本金(株主からの出資金)や利益剰余金(今までの利益の蓄積)など
● その他の包括利益累計額 …有価証券やデリバティブの含み益など
● 新株予約権 …その会社の株式を購入できる権利を付与したもの
● 非支配株主持分 …純資産のうち少数株主に属する部分
自己資本とは、上記のうち株主資本とその他の包括利益累計額を合わせた金額です!
自己資本
= 株主資本 + その他の包括利益累計額
= 純資産合計 - 新株予約権 - 非支配株主持分
なぜなら、純資産のうち、会社のオーナーである現時点の株主に属するのはこの2つだからです。
新株予約権は、将来株主になる予定の人からの払込金です。非支配株主持分は、連結子会社の利益の蓄積等のうち親会社以外の株主(少数株主)に属する分のことです。
つまり、新株予約権も非支配株主持分も、現時点の株主に属するものではないため、会社が自由に使える資金とは言えません。
ちなみに、IFRSで作られた貸借対照表の場合は、初めから現時点の株主に属する金額が明記されています(「親会社の所有者に帰属する持分」と記載されています)。そのため、計算せずとも、一目で自己資本を把握することができます😊
スポンサーリンク
三越伊勢丹の自己資本を計算してみよう
三越伊勢丹の自己資本はいくら?
では、三越伊勢丹ホールディングスの貸借対照表を使って自己資本を計算してみましょう!
2017年度第3四半期の三越伊勢丹ホールディングスの貸借対照表では、純資産はこのようになっています。
三越伊勢丹ホールディングス 純資産の部(2017年12月31日) 単位:億円
純資産の部の項目 | 各項目の内訳 | 2017年12月31日残高 |
---|---|---|
株主資本 | 資本金 | 503 |
資本剰余金 | 3227 | |
利益剰余金 | 1988 | |
自己株式 | △92 | |
株主資本合計 | 5627 | |
その他の包括利益累計額 | ||
その他有価証券評価差額金 | 109 | |
繰延ヘッジ損益 | 0 | |
為替換算調整勘定 | 79 | |
退職給付に係る調整累計額 | △15 | |
その他の包括利益累計額合計 | 173 | |
新株予約権 | 21 | |
非支配株主持分 | 96 | |
純資産合計 | 5917 |
この時の三越伊勢丹の自己資本は…
株主資本 5627億円 + その他の包括利益累計額 173億円
= 純資産の部合計 5917億円 - 新株予約権 21億円 - 非支配株主持分 96億円
= 5800億円
と、計算できます。
利益を積み増したことや、有価証券の含み益が膨らんだことで、前期末(2017年3月末)よりも100億円超増えています。
2018年3月期のROEを予想してみよう
ここで、三越伊勢丹ホールディングスの2018年3月期(2017年度決算)のROEを予想してみましょう!
ROE(株主資本利益率)= 当期純利益 ÷ 自己資本
自己資本は直近で発表されている数字(つまり、先ほど計算した2017年12月31日の自己資本5800億円)を使います。また、三越伊勢丹の発表によると、2018年3月期の当期純利益は80億円と予想されていますので、この数字を計算式に組み込みます。
すると…
三越伊勢丹ホールディングスのROE予想(2018年3月期)
80億円 ÷ 5800億円 = 1.4%
と、計算できます。
これだけ見ると、ROEの値は良好とは言えませんね…以前は5%前後をウロウロしていた三越伊勢丹のROEは、2017年3月期に2.6%へと急降下、そして今回の2018年3月期においてさらに低下することが見込まれているのです。
この原因は、ROEの分子である当期純利益が急速に縮んでいることです。
三越伊勢丹は主力の百貨店事業の不振が続いており、早急な事業の立て直しに迫られています。そこで、採算の悪い店舗の閉鎖を進めたり、人件費を削減するために早期退職制度の退職金を積み増したりしているのです。
つまり、最近の三越伊勢丹の業績は、本業の利益が低水準であることに加え、構造改革の費用がのしかかっている状態なんですね。利益が急降下しているのはこのためです。
スポンサーリンク
まとめ
1.自己資本とは、会社が事業に使うお金のうち、返済する必要のないものを言う。自己資本比率やROEを求める際に、計算要素の1つとして自己資本を使う。
2.自己資本は、純資産の内訳である株主資本とその他の包括利益累計額を足し合わせることで計算できる(もしくは、純資産合計から新株予約権と非支配株主持分を差し引いて計算する)。