その他の包括利益累計額とは?
その他の包括利益が積み重なったもの
貸借対照表の純資産の部には大きく分けて4つの項目があります。その他の包括利益累計額はそのうちの1つです。
純資産の部
● 株主資本
● その他の包括利益累計額
● 新株予約権
● 非支配株主持分
その他の包括利益累計額とは、その他の包括利益が積み重ねられた残高を指します。
その他の包括利益は、為替レートや株価などによって生じた資産(負債)の含み益・含み損のことです。
その他の包括利益の詳しい解説はこちら(↓)
その他の包括利益との違い
その他の包括利益は1年間の包括利益を計算する包括利益計算書に、その他の包括利益累計額は貸借対照表の純資産の部に表示されます。
また、その他の包括利益は、1年間に生じた含み益(含み損)を表すのに対し、その他の包括利益累計額は今まで生じた含み益(含み損)をすべて足し合わせたもの(売却等されたものは除く)を表します。
両者とも資産(負債)の含み益・含み損を表す項目ではありますが、そこには、1年の間に生じた金額なのか、それとも今まで生じた金額を累積させたものなのか、という大きな違いがあります。
たとえば、70万円で取得したその他有価証券を持っているケースを考えてみましょう。(※税効果は考慮せず)
この1年間に株価が上がったことで、その他有価証券の時価が前期末の100万円から当期末に150万円に上がったとします。
この場合、その他の包括利益は150-100=50万円です。前期末と当期末の時価の差額ですね。
一方、その他の包括利益累計額は今までのその他の包括利益を積み重ねた結果ですので、150-70=80万円です。取得価格と当期末の時価の差額になります。
個別財務諸表にはない
実は、その他の包括利益累計額という名称は連結財務諸表だけで使われています。
個別財務諸表では、代わりに「評価・換算差額等」という名称で表します(内容はその他の包括利益累計額と同じ)。
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内訳を見てみよう!
その他の包括利益累計額には、以下のような項目があります。
● その他有価証券評価差額金
● 繰延ヘッジ損益
● 土地再評価差額金
● 為替換算調整勘定
● 退職給付に係る調整累計額
それぞれ、対応する名称のその他の包括利益が累積した残高になっています。
各項目の詳しい意味は、その他の包括利益の記事で解説しています(↓)
山崎製パンのその他包括利益累計額の中身とは?
ここで、山崎製パンのその他の包括利益累計額を参考に、さらに理解を深めていきましょう!
山崎製パンのその他の包括利益累計額(2017年12月期)
その他有価証券評価差額金 | 339億円 |
土地再評価差額金 | 0.9億円 |
為替換算調整勘定 | △0.4億円 |
退職給付に係る調整累計額 | △145億円 |
その他包括利益累計額 合計 | 194億円 |
山崎製パンのその他の包括利益累計額の中では、その他有価証券評価差額金が大きな割合を占めていることが分かります。
保有している株式の株価が上がったことで、時価と取得価格の開きが大きくなっているようです。
一方で、退職給付に係る調整累計額がマイナスに大きく引っ張られています。
これは、将来の退職金の支払い額の見積もりと実績について不利な方向(見積もりよりも実績値の方が大きい)に差が生じているものの、まだ費用に織り込まれていない分です。
企業側の予測からこれだけの将来の退職金支払額が漏れていたとも受け取れますが、前年度と比べると大きく減っていますね。
自己資本との関係は?
自己資本比率やROEの計算に使う自己資本は、純資産の4つの項目のうちの2つを足し合わせたものです。
自己資本 = 株主資本 + その他の包括利益累計額
その他の包括利益累計額は、自己資本の構成要素の1つなのです。
純資産の中でも、株主資本とその他の包括利益累計額こそが、現時点での株主に属すると考えられているのですね。
自己資本のさらに詳しい解説はこちら(↓)
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まとめ
1.その他の包括利益累計額とは、その他の包括利益が積み重なった残高のことであり、純資産の項目の1つである。
2.その他の包括利益累計額の内訳には、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額がある。
3.その他包括利益累計額は、株主資本と共に自己資本を構成している。